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LTspiceでボリュームを作る(1)抵抗値比で分圧

LTspiceでボリュームを実現する方法を検討

 電子回路では、電圧を抵抗値比で分圧して信号レベルを制御することのできるボリュームが多く利用されています。このボリュームをLTspiceで実現する方法を検討します。

抵抗二つで固定出力のボリュームを実現
 ボリュームで設定した分圧比を二つの抵抗を用いることで、次に示すように固定出力のボリュームのシミュレーションができます。二つの抵抗値をボリュームの設定値に合わせて変更することで、任意の設定値にも対応したシミュレーションもできます。


 二つの抵抗は電圧の分圧比が1/10になるように設定してあります。

    分圧比 =R1/(R1+R2)= 1k/(1k+9k)=1k/10k=1/10


信号源は1kHzの周波数で、出力はプラス・マイナスのピーク値が1Vです。
 シミュレーション結果を次に示します。青が入力信号でレベルは±1V、赤が1/10に減衰した出力信号です。

 信号の様子を確認するためにグラフを拡大しました。出力は±0.1Vと1/10になっています。

 罫線の表示は、グラフ表示にしてメニュー・バーのPlot Settingsを選択し、表示するリストからGridをチェックすると表示されます。0.2Vピッチで表示されている場合は、変更する軸をマウスの右ボタンでクリックして、次に示す軸の編集のためのダイアログ・ボックスを表示しTickの値を100mVにします。

ボリュームの出力を変化させる
 次は、シミュレーション中にボリュームの設定値を変更する方法を検討します。ボリュームの設定をパラメータで行い、パラメータを .stepコマンドで変化させます。
 設定は次に示すように行いました。
 R1の抵抗値は{X1}、R2の抵抗値は{X2}とそれぞれ変数として定義します。
 X1の値は .stepコマンドで初期値1k、終了値 10k、ステップ・アップの刻み幅2kで設定します。

1回目のシミュレーション では X1=1k
2回目のシミュレーション では X1=3k
3回目のシミュレーション では X1=5k
4回目のシミュレーション では X1=7k
5回目のシミュレーション では X1=9k
6回目のシミュレーション では X1=10k

 6回目は指定された刻み幅では11kになりますが終了値が10kなので、終了値を超えているので終了値の10kとなります。

 X2の算出はボリュームの全体の抵抗10kからX1を減算した値になります。0.01が付加されているのはX1が10kのときX2が0になるのを防ぐためです。

シミュレーション結果
 シミュレーション結果を次に示します。青のラインがボリュームへの入力信号で、すべて±1Vなので、6回のシミュレーションの結果はすべて同じで重なって1本の青いラインになっています。
 赤のラインが出力ラインで、ピークが0.9V、0.7V、0.5V、0.3V、0.1V、ほぼ0.0Vの6種類の出力が表示されています。

各ステップの確認は
 特定のステップのみの表示、変数の値を確認することができます。グラフ画面を選択しメニュー・バーのPlot Settingsを選択しSelect Stepsを選択する方法と、次に示すグラフ画面をマウスの右ボタンでクリックする方法があります。
 グラフ画面をマウスの右ボタンでクリックすると、次に示すようにリストが表示されます。その中のViewを選択するとSelect Stepsの含まれたリストが表示されます。

 Select Stepsを選択すると、次に示すウィンドウが表示されます。このウィンドウで任意のステップを選択してOKボタンをクリックすると、選択されたステップのシミュレーション結果が表示されます。

 これで、ボリュームを複数の状態に設定してそれぞれシミュレーションすることができるようになります。
 次回、1回のシミュレーションの中でボリュームの設定値を連続して変化させる方法を検討します。

(2016/12/6 V1.0)

<神崎康宏>

LTspiceでボリュームを作る

(1) 抵抗値比で分圧

(2) 連続可変

(3) 特性Aカーブ

(4) つながる回路の影響

(5) OPアンプの入力インピーダンス