測りたいものの最後は L 測定器はDE-5000
■テスタで測れないものはインダクタンス
最近のテスタはコンデンサの容量を測れます。受動素子のLCRのなかで測れないのはコイルのインダクタンスです。
従来、コイルやトランス(トランスフォーマ)のインダクタンスを測るには、高価なLCRメータが必要でしたが、今は、安価な製品が入手できます。秋月電子通商で購入したDE-5000です。2016年2月現在の価格は7800円です。筆者の購入時にはなかったのですが、現在は日本語マニュアルが用意されています。
●測定手順
マニュアルに従って、220uHのマイクロインダクタを測定します。
(1) 測定端子にマイクロインダクタを取り付けます。
(2) Powerスイッチを押し、電源が入ったらLCR AUTOキーを押すと、インダクタンスのパラレル測定モードLpの値が表示されるとマニュアルには書かれていますが、Lsが表示されています。
(3) もう一度LCR AUTOキーを押すと、キャパシタンスのパラレル測定モードCpが表示されるとマニュアルには書かれていますが、Csが表示されました。
(4) もう一度LCR AUTOキーを押すと、交流抵抗のパラレル測定モードRpが表示されるはずですが、Rsが表示されました。
(5) もう一度LCR AUTOキーを押すと、直流抵抗測定モードDCRが表示されます。
(6) もう一度LCR AUTOキーを押すと、元に戻るはずですが、またRsが表示されました。
マニュアルには、被測定物(ここではマイクロインダクタのこと)のインピーダンスのよって自動的に判断されて測定されると書かれています。液晶画面の左上にあるようにデフォルトでは1kHzで測定されます。LとCは周波数によって測定値が異なります。このDE-5000は100/120Hz、1kHz、10kHz、100kHzが設定できます。
ここで、コイルの等価回路を見ます。2種類あります。
(a) 直列モード
- Ls;コイル自身のインダクタンス
- Rs;等価直列抵抗=ESR
- Cp;並列寄生容量
(b) 並列モード
- Lp;コイル自身のインダクタンス
- Rp;並列等価回路の抵抗
- Cp;並列寄生容量
抵抗値Rsの表示のところで、SER/PALキーを押します。
Cpが測れていません。Csが表示されたところでSER/PALキーを押します。
寄生容量の値は単位がuFなので、正しく測れているかどうかわかりません。英語のマニュアルのほうは、原理的な説明があります。内部で計測した電圧/電流/位相角を用いて計算した結果がおかしいことがありそうです。どこかで、計算方法を丁寧に説明してあればよいのですが、まだ見つかっていません。
シミュレータLTspiceでも、Lのパラメータのところで、インダクタンス以外に上記の項目を入力する部分があります。電子工作では、次の理由から取り上げません。
- 低い周波数しか扱わないため影響がないので無視する
●いろいろなコイルのインダクタンスの値
トランス類は、正常な値でないかもしれません。DCRは直流抵抗です。
インダクタの種類 | インダクタンス[H] | DCR[Ω] | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
100Hz | 1kHz | 10kHz | 100kHz | |||
写真1 | マイクロインダクタ1mH | 1059u | 1069u | 1006u | 850u | 10.9 |
写真1 | マイクロインダクタ100uH | 107u | 103u | 96.9u | 91.6u | 1.25 |
写真2 | コアタイプ100uH | 108u | 107u | 106u | 103u | 0.1 |
写真2 | コアタイプ1mH | 981u | 972u | 955u | 947u | 0.92 |
写真3 | 12V-100Vトランス 0-100V端子間 |
2.1H | 912.1m | - | 7.5m | 14.25 |
- | 0-12V端子間 | 34.8m | 22.6m | - | 66.8u | 2.2 |
写真4 | 真空管出力トランス 1次0-5kΩ端子間 |
0.4H | 96.3H | 262m | 7.9m | 313 |
- | 2次0-8Ω端子間 | 35.1m | 155m | 401u | 9.0u | 2.34 |
写真3 電源トランス写真4 真空管シングル・アンプ用出力トランス
参考文献
(2) 戸川 治朗;スイッチング電源のコイル/トランス設計―磁気回路‐コア選択‐巻き線の難題を解く (POWER ELECTRONICS)、CQ出版社。