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初心者のためのLTspice入門の入門(8)(Ver.2) 増幅回路のシミュレート

はじめての増幅回路シミュレート

 増幅回路の基本となるOPアンプについて検討します。LTspiceには実際のOPアンプのモデルも多く用意されていますが、次に示すようにOpampのフォルダの一番後ろに表示されているUniversalOpamp2を選択します。このデバイスはLTspiceが提供する汎用のOPampのモデルです。lebel1、lebel2、lebel3a、lebel3bと特性を設定することができます。これらの特性の確認は別に行います。今回はデフォルトのlebel2のモードでテストを行います。そのためにデバイスを回路図に貼り付けるだけでlebelの設定は行いません。

 このOPアンプのモデルを使用して、次に示すような回路を作成します。V1が信号源のVoltageでV2は+15Vの電源、V3が-15V電源です。プラス・マイナスの電源とOPアンプの電源端子の接続は同じ名称のラベルをセットしています。このOPアンプに付加回路をつけず裸の状態でテストします。この回路は、次のシミュレーション内の回路のように、まだOPアンプのマイナス端子をGNDに落としていない状態です。

 メニューバーのSimulation>Edit Simulation Cmdを選択しEdit Simulation CommandのウィンドウでAC Analysisのタブを選択します。シミュレーションの条件は次のように設定しました。

項目 設定内容
Type of Sweep Octave
Number of points per octave 20
Start Frequency 0.1
Stop Frequency 100meg

 実行します。
 シミュレーションの完了後OUTPUTのラベルをマウスでクリックすると、次に示すように周波数特性がグラフ表示されます。



 このOPアンプの周波数特性は、周波数の低いほうでは120dBの平坦な増幅率を示していますが、ある周波数から増加するに伴い増幅率が減少します。10Hzの周波数で-3dBの減衰があり、その後-6dB/Octaveで減衰しています。
 10Hzの周波数の近辺のグラフを拡大すると、次に示すようになります。10Hzの周波数と特性曲線の交点の増幅率は117dBとなっていて120dB-117dB=3dBと増幅率が3dB減少しています。

 次に100Hzから200Hzの範囲を中心にして特性曲線の部分を拡大すると、次に示すようになります。
 100Hzで100dBとなり1オクターブ増加した周波数は2倍の200Hzです。周波数200Hz時の増幅率は94dBとなり、6dB減衰となります。

2点間の差を求めるには
 グラフ上でドラッグすると、2点間のX軸、Y軸のそれぞれの差を求めることができます。次に示すように差を求めたい2点間をドラッグすると、左下のステータス・バーにX軸の周波数の差とY軸の増幅率の差が表示されます。



 ここまでのテストでは、信号をOPアンプの+端子に加えています。そのため入力信号と出力信号は同じ位相の正弦波で、入力がプラスの場合は出力もプラスですし、増幅度の減衰がない周波数の低い範囲では出力波形の位相も0度となっています。


回路図ファイルの保存
 新規に作成した回路図ファイルはLTspiceが付けた名前になっています。

  File > Save As

 
を選択し、次に示すように任意のファイル名で任意のフォルダに回路図ファイルを保存できます。サーバの電子クラブのフォルダの下にLTspice\testのフォルダを作り、optest010の名で保存しました。エクステントのascはLTspiceが保存時に付加してくれます。

 

反転増幅器
 信号をOPアンプのマイナス端子に接続すると、入力信号がプラスの場合は出力はマイナスになり、入力がマイナスの場合出力はプラスになります。この反転増幅器の場合、増幅率は先にシミュレーションした非反転増幅器と同じ結果になっています。しかし、反転増幅器では入力信号が反転しているので、右側の目盛りにあるように位相は180度です。

 裸のOPアンプの周波数特性を調べました。入力1Vのサイン波の信号の出力は120dBとすると1,000,000Vの出力となります。実機でのテストは困難ですが、シミュレーションなら結果を得ることができます。引き続き、次回はOPアンプの回路の検討を行います。実際に実験でも確かめられる回路となる予定です。

(2016/3/8 V1.0)

(2017/12/23 V2.0)OSがWindows 7->Windows 10、バージョンがLTspice IV -> LTspice XVIIへの変更に伴い、加筆修正した。

<神崎康宏>

バックグラウンド

2電源の作り方;図(a)は1電源を抵抗で分圧し、中点を仮想グラウンドとしました。

図(b)はV3は+5Vを設定し、V4は上下をひっくり返し-5Vを設定しました。あまり見やすくありません。

ls10a.png

ls11a.png

連載 LTspice入門の入門

(1) LTspiceの入手とインストール
(2) LTspiceXVIIの起動
(3) LTspiceXVIIのシミュレーション手順
(4) 初めての回路入力 コンデンサと抵抗で回路図を作成する
(5) 初めてのシミュレーション AC解析
(6) グラフ表示を見やすくする方法
(7) 特性の変化を目視できる過渡特性のシミュレーション
(8) はじめての増幅回路シミュレート
(9) はじめての反転増幅器
(10) もうひとつの基本回路‥非反転増幅器
(11) オーディオ用に設計されたOPアンプOPA1622を利用する (1) SPICEモデルの入手
(12) オーディオ用に設計されたOPアンプOPA1622を利用する (2) .stepコマンドで負荷抵抗を変化

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初心者のためのLTspice入門 ◆オームの法則を確認する

(1) 抵抗の設定
(2) .measコマンド E/I=R
(3) .step .praramコマンド IR=E
(4) 電流源currentで過渡解析 I=E/R

◆オームの法則で回路に任意の電圧を作る

(1) 抵抗分割
(2) 抵抗分割で得た電圧に対する前後の回路の影響
(3) 抵抗分割で得た電圧に対する後回路の影響
(4) 電池の内部抵抗をシミュレーション

◆LTspiceXVIIはUNICODEに対応して日本語表示もできる

(1) LTspiceXVIIで日本語を表示
(2) 日本語表示をいろいろ試す
(3) グラフ画面にも日本語表示

◆シミュレーション結果を保存しその結果を利用する

(1) WAVEファイルにする
(2) LTspiceで出力されるwaveファイルの保存先
(3) BVコンポーネントでいろいろな信号を作る
(4) waveファイルを電圧源として読み込む
(5) waveファイルを有効利用

◆AC電源から直流電源を作る

(1) ダイオードによる整流回路
(2) ダイオードによる半波整流回路に平滑回路を追加する
(3) ダイオードによる全波整流回路
(4) 全波整流回路のリプル
(5) レギュレータICを利用して±の安定化電源を作る

◆ダイオードの動作確認

(1) ダイオードのモデル

◆コイルを利用した電源回路

(1) チョーク・インプット型全波整流回路
(2) 電圧制御スイッチで負荷をON/OFFする
(3) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(1)
(4) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(2)
(5) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(3)