NE555ってLチカ専用のICだと思っていました? その1 キットの組み立て

タイマ・キットで遊ぶ

 秋月電子通商から入手した「AE-555TIMERキット(タイマーキット)」を組み立てます。1,3,6分、可変のタイマです。NE555のオリジナルはシグネティクスですが、そのC-MOS版であるLMC555(ナショナル セミコンダクター;現在テキサス・インスツルメンツ)を応用したキットです。電源電圧が1.5Vから使えるので、キットには3Vで利用を前提にリレーは3Vタイプが付属しています。

部品を確認

 データシートに書かれている部品表と現物をチェックします。

 プリント基板の部品面(左)とはんだ面(右)です。ガラス・エポキシFR4という材質です。部品目の白色の文字はシルク印刷です。はんだ面の緑色は、はんだをはじくレジストが塗布されています。銅箔のパターンがあるはんだ面が1面だけなので、片面基板と呼ばれます。はんだ付けする部分は、ハンダ・レベラという処理がされて、長期にわたってはんだ付けしやすい状態が保たれます。

組み立て

 まず、抵抗値をテスタかDMMで測って、用紙の上にメンディング・テープで貼り付けます。

 テスタを抵抗レンジにして、リード線で抵抗の両端に接触させます。その時、片方は指で触ってもよいですが、両端を人の体で触れると、抵抗値が変わります。

 金属皮膜抵抗は誤差が±1%ですが、テスタで測ると最後の桁の値がずれていることが多いですが、気にしないようにします。

 はんだ付けの順番は、背の低いパーツからです。抵抗をはんだ付けします。抵抗名の順番にするのが間違いないですね。R1のはんだ付けが終わったら、マーカ・ペンで回路図にチェックを入れます。

 すべての抵抗のはんだ付けが終わりました。R2、R3、R4、R5は、縦に立てて挿し込みます。

 青色の積層セラミック・コンデンサをはんだ付けします。コンデンサの表面には同じ値104が書かれています。10×10^4pF=100000pF=0.1uFです。ひとつはリード線の幅が狭く、もう一つは幅を広げたフォーミング済みです。プリント基板の穴の合うほうに挿し込んではんだ付けします。逆でもかまいませんが、入れにくいです。積層セラミック・コンデンサに極性はないので、挿しこむ方向は気にしませんが、プリント基板の外側に104の文字が見えるようにしたほうが、あとで確認するときに便利です。

 ICソケットをプリント基板に挿しこみ、裏返すとすぐに抜けるのでメンディング・テープで押さえます。

 ソケットは、プリント基板のシルク印刷の絵柄に合わせます。

 まず、1か所だけ、はんだ付けをして、ソケットが浮いていたりしないかを確認します。

 8か所はんだ付けが終わり、メンディング・テープをはがしたときに、方向が逆だったことに気が付くことがあります。ソケットをはずすのは大変困難です。もしチャレンジしてはずし終えたときには、プリント基板はボロボロになっていることでしょう。はずすのはあきらめて、ICソケットは左右対称なので、そのままにし、1ピン側に白色のマーカ・ペンで目印をつけておきます。

 2017年11月現在、回路図の表記が間違っているDIPスイッチSW2をはんだ付けします。回路図ではSW1-xになっています。左右対称なので、挿しこむ向きがわかりにくいです。キットの写真を参考に向きを決めます。リード線は広がり気味なので、テープで止めなくても裏返したときにICソケットのように抜けません。はんだ付けは、まず1か所だけ行い、ゆがみや浮きがないかを確認して、8か所のはんだ付けを終えます。

 ダイオード、トランジスタ、LEDを取り付けます。いずれも方向の確認をしながら、リード線を挿しこみます。ダイオードのシルクは片方が白い帯になっています。物は黒い帯なので合わせます。トランジスタは、文字が印刷されている平らな面が目印です。LEDも切り欠けがあるところをシルク印刷に合わせます。もし、切り欠けがないLEDだったら、足の長いほうがアノードなので、トランジスタ側に挿し込みます。

 それぞれ確認してから、はんだ付けします。

 写真は付属していたトランジスタではありません。2SC1815もしくは互換品が入っているはずです。

 電解コンデンサは、マイナス側が白で表されていることが多いです。リード線も長さが異なり、短いほうがマイナスです。

 可変抵抗VR1、タクト・スイッチSW1、リレーRY1はプリント基板の穴に合わせるとすんなり入るので、傾かないようにはんだ付けをします。

 二つあるターミナルは連結します。横側に凹凸があるので、うまく擦り合わせてつなげます。

 ケーブルの差し込み口がプリント基板の外側になるように挿し込んではんだ付けします。

 以上ではんだ付けは終了です。

動作確認

 LMC555はICソケットには挿しこまないで、1ピンと8ピンをテスタの抵抗レンジで測ります。アナログ・テスタなら、右(低い抵抗値)に針が触れて、左に戻ります(無限抵抗値)。0Ωであれば部品の取り付けのどこかが間違っています。

 LMC555をICソケットにリードが曲がらないように挿しこみ、電池をつなぎ、可変抵抗を左に回し切り、タクト・スイッチを押すと、

  • カチッとリレーの動作音
  • LEDが光る

 1秒後に、動作音がし、LEDが消えます。

タイマは単安定マルチバイブレータ回路

 LMC555はいろいろな回路に使えますが、代表的な応用回路が一つだけパルスを出す単安定マルチバイブレータ回路です。

 タイマ時間はCRで決めます。キットではコンデンサC3は470uFが入っていて、抵抗は、切り替えれるように組んであります。

 タイマ時間 = 1.1 * 470uF * R

抵抗R[Ω] 時間 DIPスイッチSW2(回路図ではSW1と間違って書かれている)
1M+2k 約1秒から9分 SW1-1
576k 約6分 SW1-2
330k 約3分 SW1-3
115k 約1分 SW1-4

 計算例;R=115kΩ

   1.1 * 115*10^3 * 470*10^-6 = 59.5[秒]

 もし全体に短い時間が必要ならば、C3=47uFを選べば、1/10の時間を利用できます。

 555自体の時間精度は最大で3%です。一般的な電解コンデンサの誤差は±20%なので、上記のほうのように、約何分という表現になっています。きっちりとした時間が必要ならば、コンデンサの値を測定器で測るとよいでしょう。また、温度によっても容量が変化するので、高い精度を求めるのは困難かもしれません。

 555では、2us~1200secは設定可能だが良好な精度は20us~1secだと参考文献には書かれています。

 実測しました。時間はSW2の設定できるので、可変抵抗のつながっているDIPスイッチSW2(SW1-1)をONにし、左に回し切ります。SW1を押すとタイマがスタートします。ほぼ1秒です。

 可変抵抗をほんの少し右に回し、SW1を押します。約27秒です。


 SW1-4を単独でONにします。データシートに書かれているように約1分間ONになりました。

出力回路

 動作確認用にLEDがつながっています。ONの間光ります。555の出力に小信号用トランジスタが入っていて、オープン・コレクタでLEDとリレーがつながっています。

 付属するリレー946H-1C-3Dで開閉できる容量は、交流は125V/1A、直流は30V/2Aです。 

 

 

※参考文献 久保大二郎、宮崎仁;タイマIC 555応用回路集、トランジスタ技術2011年1月号別冊付録。

※精度という言葉は日本では一般に使われていますが、英語ではaccuracy(確度)が使われます。

※2SC1815など小信号用トランジスタの電極の並びは、日本の旧EIAJに登録されたデバイスではほぼ同じです。アメリカやヨーロッパのトランジスタとは異なることが多いです。

※トランジスタ技術555号記念、555の設計者Hans Camenzind氏へのインタビュがYoutubeにあります。