教科書に出てこないLED

外形はLEDだが中身はLEDだけでないデバイス

 砲弾型と呼ばれる小信号用LEDは、「電流制限用抵抗」と共に使います。

 その理由は、LEDの両端に電圧をかけると、電圧を上げている途中から急激に電流が増加して電流が流れ過ぎて破壊に至るためです。次の実験回路で確かめます。

  測定結果を示します。実験用電源では、最大電流を100mAに設定してLEDに過大な電流が流れないようにしています。

 電流がLEDの規格以上に流れると、寿命が短くなったり破壊に至ります。それを避けるために、

  • 電流を制限する抵抗を直列に入れる
  • 適切な電流を常に流せる電源を用意する

という対応をします。

 最初から、その対策をしているLEDがあれば、部品点数を少なくできます。

外付け抵抗不要の抵抗内蔵LED

 次の図のように、アノード(Anode)側に抵抗が最初から入っています。

 5V用と12V用があります。5V用赤色LEDに様々な電圧を加え、電流を測りました。規格では12mAになっています。

電圧[V] 電流[mA] 備考
2 0.27 うっすら光る
3 3.6 普通に光る
4 6.7  
5 11.6  
9 20.3  
12 23.6  
15 25.0  

 厳密な明るさを要求しないのであれば、5Vを中心として広い電圧範囲で明るく光るので使いやすいデバイスです。

外付け抵抗不要の定電流素子内蔵LED

 LEDのカソード側に定電流ダイオードが内蔵されています。利用できる電源範囲は5.5~20Vと書かれてます。電流は16mAです。実際に測ってみます。

電圧[V] 電流[mA] 備考
2 0.29 うっすら光る
3 7.2 普通に光る
5 13.6  
9 15.8  
12 15.1  
15 14.3  
18 13.6  
20 13.2  
24 12.6  

 電源電圧が大きく変わっても、このLEDに適切な電流が流れるデバイスです。

 抵抗内蔵と定電流素子内蔵LEDは、赤色の単価が12円と単独のLEDより少し高価です。電流制限抵抗を外部につなぐより配線がすっきりできるので有用です。欠点は、外観が普通のLEDと同じなので、しっかりと管理しないと、混ざってしまっても気が付かないことです。

1.2Vで発光する白色LED

 外観が、今までのLEDと異なります。白い袴をはいているので、この部分に何か入っていると想像できます。

 白色LEDは、一般には約3Vから光り始めます。乾電池を利用するときには2個必要です。1.2Vで光るなら、乾電池は1個でよいという便利なデバイスです。

 アノード端子をオシロスコープで見ました。発振波形が観測できます。周波数は約90kHzです。昇圧型のDC-DCコンバータを内蔵しているようです。

 絶対定格はVf=1.5Vです。実際に計測しました。

電圧[V] 電流[mA]
1.007 46.6
1.219 73.38
1.239 81.23
1.40 101.62
1.49 128

  1.2VはNi-水素電池のエネループの電圧です。乾電池の1.5Vでは消費電流が多くて電池がはやく消耗しそうです。

 1V時の電流変化を調べました。

経過時間[min] 電圧[V] 電流[mA]
start 1.0077 46.5228
1   46.5342
2 1.0083 46.597
3   46.616
5 1.0090 46.766
10 1.0090 46.795
20 1.0089 46.696
30 1.0090 46.676

 安定していると思われます。

無極性LEDは交流点灯できる

 逆耐圧5VのLEDが図のように内部で接続されています。利用電圧は2.1Vです。アノードもカソードもありません。ただし、リード線の長さに差はあります。実験用直流電源をつないで光らせました。

接続 電圧[V] 電流[mA]
1ピン・プラス 2.10 53.5
1ピン・マイナス 2.10 54.5

 極性がどちらでも光ることが確認できました。流れる電流は1個のときに約20mAですから、約倍の電流を消費していることがわかります。

 直列に470Ωを入れて電圧と電流を測りました。



電源電圧[V] 電流[mA] LED両端電圧[V]
3 2.2 1.79
5 6.86 1.87
9 14.99 1.94
12 21.13 1.97
15 27.98 2.01
18 34.05 2.03

 トランス(AC100V:6.3V)を使って交流で点灯しました。入力は6.71Vac、LEDの両端は1.81Vac、電流は0.011Aでした。

 交流点灯なので60Hz周期で点滅していますが、見た目には直流点灯と変わりませんでした。電流波形を次に示します。電流センサは1mV/10mAを使いました。画面右上に表示されている電圧は1.08mVrmsなので電流は10.8mAになり、DMMとほぼ同じ値です。

 交流なので60Hzではなくもっと高い周波数でも点灯するかもしれないと、発振器の出力をつないでみました。

 1kHzです。

 10kHz、100kHz、1MHzまで上げていきました。

 10MHzでも光っていました。