LDO LT3042の出力インピーダンスを測る

今までのLDOとは違う!

 LT3042の製品リリースが出たとき、高い周波数まで電源電圧変動除去比のPSRRの値が高いのに驚きました。古典的な3端子レギュレータや可変電圧のLM317では、50/60Hzのハムを除去することがメインのPSRR能力だったため、昨今のスイッチング電源などが発生する数百kHzから数MHzのノイズを抑制できませんでした。

 特に、入出力電圧差が少なくなるように設計されたLDOは、出力インピーダンスも高く、負荷の急変に対して出力変動が大きかったようです。

 電子工作で使われるOPアンプは、それ自体が高いPSRRを持っていますが、周波数が高くなるとその値は急激に低下します。

LT3042の主なスペック

 入力電圧範囲は1.8~20V、出力電流は200mA、出力電圧範囲は0~15V、入出力電圧差は360mV。

 ローノイズ;0.8Vrms(10Hz~100kHz)、PSRR;118dB(100Hz時)、79dB(1MHz時)

 1個で最大200mAの電流出力が取れますが、複数並列に動作させて電流を倍増できたり、パワー・トランジスタをつないで電流を増やせます。

LTspiceでシミュレーション

 こちらのページからデータをダウンロードします。LTspiceはXVIIの最新版を使います。

 ダウンロードしたLT3042_DC2246Aをダブルクリックすると、次の画面が立ち上がります。

 runさせて動作を確認します。入力は5Vで、3.3V出力の設定です。Rloadに流す負荷電流は200mAです。

 C1を4.7uFから0.47uFに、入力電圧を5Vから8Vに、Rloadを1kΩに変更します。出力電圧を設定するRparを49.9kΩにすると、出力は5Vになりました。C1は出力電圧を設定するRparの接続端子SETのインピーダンスを下げる目的で入っているようです。C1の容量が大きいと低い周波数のノイズが減ります。

 RparはC1のパラメータの一つとして設定します。C1を右クリックして出てくる容量を設定する画面です。現実には、別途抵抗を並列にSET端子に取り付けます。C1が動作上重要だという意味合いで、このようなデモ回路が用意されているのかもしれません。

 いっけんPGFB(Power Good FeedBack)端子につながっている抵抗の比率で出力電圧を変更できるように見えますが、そうではありません。この端子は、C1によって電源出力の立ち上がり時間が遅くなるところを、速くする目的で使われます。

 Rparと出力電圧は下記のとおりです。E96系列の抵抗が使われます。市販のキットでは、これらの抵抗が全部実装されていてジャンパで選択するものや、チップ抵抗は用意されているが自分ではんだ付けするものがあります。

出力電圧[V] Rpar [kΩ] チップ抵抗の表記
3.3 33.2 3322
5.0 49.9 4992
12.0 121 1213
15.0 150 1503

 チップ抵抗をピンセットでつまんだときにどこかに飛ばして見つからなかったり、3.3Vを注文したのに5V用が到着したときなど、E24系列から近い値を選んでも電源の多くは±5%の許容はあるので、十分対応できます。

出力インピーダンスを求める

 出力に電流源(current)を追加します。手順はTL431の実験を参照ください。

実際に計測(1) LT3042シングル

 各ボードはAC入力でブリッジ・ダイオードが入っていましたが、DC入力に変更しました。

 LT3042を1個使い200mA出力用で、出力にはセラミック・コンデンサが入っているだけです。入力電圧は出力プラス約1Vを実験用電源から供給しました。出力インピーダンス測定装置の制限で、200kHz以上は正しくありません。出力電圧にかかわらず、100mΩ弱の低い出力インピーダンスが観測できます。電源の出力からDUTまでは約15cmあります。

 ebayで購入しました。LT3042 DUAL power supply DAC preamplifier headphone amplifier

◆3.3V

◆5V

◆12V

◆12V。OS-CON 1000uFをDUT接続端子に取り付けた状態。10kHz付近はコンデンサによってインピーダンスが下がっています。

実際に計測(2) LT3042パラレル

 LT3042を2個使い400mA出力用で、出力にはセラミック・コンデンサが入っているだけです。入力側にはコモン・モード・コイルが入っています。3.3Vだけです。データシートには、シングルより出力インピーダンスは下がると記載されていますが、上がり気味です。

 ebayで購入しました。LT3042 400mA DAC power supply xmos

実際に計測(3) LT3042+パワー・トランジスタ

 LT3042を1個使い、パワー・トランジスタで電流をブースとした1A出力用で、出力にはセラミック・コンデンサが入っているだけです。出力は5Vです。

 ebayで購入しました。Low-Noise LT3042-Linear-Regulator-Power-Supply-Board-DC-Converter-Overvoltage

コラム 参考 LM317レギュレータの測定結果

 予想外に低い出力インピーダンスです。10kHz以上でインピーダンスは上昇していますが、OS-CONで対応できそうです。

 実際に1000uFをつなぎました。低い周波数で出力インピーダンスが上がってしまいました。