TL431で電源の実験  (1)  LTspiceでシミュレーション

LTspice にはTL431がないので作る

 安定した基準電源圧デバイスでポピュラなのがTL431です。基本回路ではTL431自体へ流す電流を適切に設定しないと、安定した電圧は発生しません。実際に計算するよりシミュレーションで確かめたほうが、便利です。しかし、リニアテクノロジーの用意したデータはありません。

 LTspiceのデバイス・データとPSpiceのデータ・フォーマットはほとんど同じなので、流用することが多いです。

 PSpiceのデータをテキサス・インスツルメンツのWebからダウンロードします。zipファイルなので解凍します。その中に、tl431.libがあるので、

C:\Users\yoshidawin\Documents\LTspiceXVII\lib\sub

の中にコピーします。subというフォルダには、SPICEのシミュレーションに必要なパラメータが記述されたファイルを収録するところです。

C:\Users\yoshidawin\Documents\LTspiceXVII\lib\sym\References

は、外形情報が入っているフォルダです。TL431と同じ外形はLT1009.asyですから、これをコピーし複製してファイル名をTL431.asyで保存します。

 こちらのページにある記述を参考に3か所(14行、17行、19行)を修正します。

Version 4
SymbolType BLOCK
LINE Normal 16 -16 -16 -16
LINE Normal 27 -26 16 -16
LINE Normal -16 -16 -27 -6
LINE Normal -21 16 0 -16
LINE Normal 21 16 -21 16
LINE Normal 0 -16 21 16
LINE Normal 0 -32 0 -16
LINE Normal 0 16 0 32
LINE Normal 32 0 11 0
WINDOW 3 16 32 Left 0
WINDOW 0 30 -32 Left 0
SYMATTR Value TL431
*LT1009
SYMATTR Prefix X
SYMATTR SpiceModel TL431.lib
*LTC3.lib
SYMATTR Value2 TL431
*LT1009
SYMATTR Description 2.5V Adjustable Reference
PIN 0 -32 NONE 8
PINATTR PinName VCC
PINATTR SpiceOrder 1
PIN 0 32 NONE 8
PINATTR PinName VEE
PINATTR SpiceOrder 2
PIN 32 0 NONE 8
PINATTR PinName ADJ
PINATTR SpiceOrder 3

●電源回路の作成

 TL431自体は最大100mAの出力電流を取り出せます。マイコンのA-D変換時の基準電圧などに使われます。電子回路の多くは数百mAから1Aほど電流が必要なことが多いです。

 最初に、TL431単独で電源を作ります。そのあと、電流を増やす回路を作ります。

 負荷抵抗R4に5V時約50mA流すようにR2を設定しました。入力電圧は8Vで、TL431のオーソドックスな応用回路です。出力は基準電圧の倍が出ます。tl431.libはテキスト・ファイルなので、中を読むと2.495という数値があります。なので、2倍では4.99Vが出ると思われます。

 最初に温度を可変させます。-55~125℃の範囲では、ほんの少ししか電圧が変わりません。

 室温に近い範囲で温度を変化させます。-10~45℃の範囲では電圧が変わりません。半導体は温度係数をもっていて、温度が変わればデバイス内の電流などが変化するのが一般的です。TL431は外気温度が変化しても出力電圧がほぼ一定なので、急速に普及しました。

●TL431に適切な電流を流すことが条件

 R2は負荷に流す電流によって適切な値にします。TL431には1mA以上供給しなければ、正しい出力が得られません。R2の抵抗のアイコンの上で右クリックし、50 から {Rs} へ変更し、.stepコマンドで10Ω、50Ω、100Ωの3種類で出力電圧をみます。

 R2が50Ωのとき、R2には約60mA、負荷R4には約50mA流れているので、TL431は10mAと適正な電流が流れます。 R2が10ΩではTL431に過大な電流が流れ、R2が100Ωでは、負荷に対して十分な電流を流せません。

 40~70Ωの範囲でシミュレートすると、45~60Ωが適正と思えます。

 R2は50Ωとし、負荷R4を変更します。50Ω(負荷電流100mA)から1kΩ(負荷電流100mA)変化させると、90Ω、負荷電流55mA以下では安定した出力が得られることがわかります。

 R2を45Ωとした場合、80Ω、つまり約63mAまでは適正な電圧が得られるとこがわかりました。

 負荷電流が変化するときは、安定な電圧が得られる限りR2は小さな抵抗値にするのがよいことがわかります。