手探り トランジスタの増幅回路 ② 固定バイアス

 入力信号は通常0Vを中心にプラスとマイナスに振れます。前回の実験のように、これを600mVほどにシフトさせると、トランジスタが増幅してくれるようです。

 この発振器側ではオフセットとかシフトと呼ぶことを、回路ではバイアスをかけると表現します。

 そして、トランジスタ回路では、次の3種類があります。

  • 固定バイアス
  • 自己バイアス
  • 電流帰還バイアス

  実際に使われるのは、電流帰還バイアス回路です。ここでは、最初に欠点がある固定バイアス回路を組み立てて、波形を観測します。

 電源電圧Vccは5Vを使います。利用するトランジスタは小信号用の2SC1815で、hFEランクは200~400のGRです。

固定バイアス回路①

 決めるのはR2の抵抗の値です。

  どの書籍にも、

  コレクタ電流をhFEで割った値だけ

と書かれています。

 hFEを仮に200とします。コレクタ電流を80mAとすれば、ベースの電流は、

  ib = 80 / 200 = 400[uA]

 Vbe=0.6Vなので、R2の両端にかかる電圧は4.4Vです。

  R2 = 4.4[V] / 400[uA] = 11[kΩ]

 R2を10kΩにします。

 入力は200mVp-p、オフセット0の波形です。上の黄色が入力で、下の青色が出力電流です。入力は10uFのVin部分を、出力は負荷抵抗VR1(RL)の両端の電圧を測っています。

  電源を切ってRLを測るとVR1=69Ωでした。振幅は約800mVなので、I=E/Rから0.8/69=11.6mA振れています。

  入力を300mVp-pにしました。振幅は約1200mVなので、I=E/Rから1.2/69=17.4mA振れています。

 FFTの波形を見ます。2倍の2kHzがはっきり見えていますが、ほかに高調波はあまりないので、ほとんど歪んでいないようです。

 出力波形は、時間とともに上下して、安定ではありません。

固定バイアス回路②

 R2=100kΩにします。

 入力は200mVp-p、オフセット0の波形です。上の黄色が入力で、下の青色が出力電流です。

  電源を切ってRLを測るとVR1=96Ωでした。振幅は約17.5Vなので、I=E/Rから17.5/96=182mA振れています。

 入力を300mVp-pにしました。

 入力を400mVp-pにしました。

 入力を500mVp-pにしました。

 入力を600mVp-pにしました。

 出力波形は安定で、①のようにふらふらしていません。

固定バイアス回路③

 RL=10kに固定しました。

 入力は200mVp-p、オフセット0の波形です。上の黄色が入力で、下の青色が出力電流です。

 入力を300mVp-pにしました。ひずみ始めました。

 入力を400mVp-pにしました。相当歪んでいます。

固定バイアス回路④

 RL=1kに固定しました。

 入力は200mVp-p、オフセット0の波形です。上の黄色が入力で、下の青色が出力電流です。

 入力を300mVp-pにしました。縦軸を1V/divに変更しました。大きな増幅度になっていますが、そうとう歪んでいます。

 入力を400mVp-pにしました。縦軸を5V/divに変更しました。大きな増幅度になっていますが、そうとう歪んでいます。