周波数特性を手軽に測れるAnalog Discovery (1)
■アンプの周波数特性をワンクリックで測れる
電子工作の測定器にテスタは必須です。オーディオ・アンプの周波数特性を測るときは、次の手順で行います。
(1) PCにフリー・ソフトウェアの発振器ソフトたとえばWaveGeneをインストールする。 (2) アンプの出力端子に20W 8Ωのセメント抵抗をつなぐ。 (3) PCのLINE出力もしくはヘッドホン出力をアンプの入力につなぐ。 (4) PCの発振器の周波数を20Hzにする。8Ωの両端の電圧をテスタで測る。 (5) 周波数を50Hzにする。8Ωの両端の電圧をテスタで測る。 |
これを繰り返して、周波数を50kHzまで繰り返します。
相当の時間がかかります。テスタにも条件があります。スピーカ出力を交流電圧のモードで測ります。ほとんどのテスタでは100Hz以下の正弦波は正確に測れますが、周波数が高くてもOKというモデルは少し高価です。
●Analog Discoveryという万能測定器
このアンプの周波数特性を、ボタンのワンクリックで簡単に測定してボード線図まで書いてくれる装置があります。アンプに限らず、フィルタやトランスの特性も測れます。
Digilent社のAnalog Discoveryです。現在2種類が販売されています。写真左が2という改良型です。いずれも現在秋月電子通商など国内で購入ができます。
●主な機能と特徴
Analog Discovery | Analog Discover2 | |
---|---|---|
オシロスコープ (2チャネル) |
14ビット 100Mサンプル/秒 5MHz | 14ビット 100Mサンプル/秒 30MHz |
ファンクション・ジェネレータ |
±5V 14ビット 5MHz | ±5V 14ビット 20MHz |
電圧計 | ||
ネットワーク・アナライザ | 1Hz~10MHz | 1Hz~10MHz |
スペクトル・アナライザ | ||
対応OS | Windows | Windows Mac OS X |
PCとの接続 | USB2.0 | USB2.0 |
このほかにも16チャネルのディジタルI/Oがあり、I2CやSPIのプロトコルも解釈できます。
オリジナルのAnalog Discoveryは、アメリカの学生のために作られ、アメリカでは約1万円で購入できました。2013年に同社はNI社に買収されました。NI社は、学生ではなく、電子機器製造の会社に勤めているでもない個人向けに、電子工作のユーザ支援を行っています。NI社の代表的なビジュアル・インターフェースの測定ツールのLabVIEWを49.99ドルで提供しています。
日本法人ではそういう支援はなく、Analog Discovery2は学生向けに提供されているだけです。
オシロスコープの14ビットに注目してください。市販のオシロスコープは垂直軸の分解能は8ビットです。もちろん、14ビット・クラスもありますが、とても手の出る価格ではありません。波形がきれいです。
オシロスコープの性能を見るとき、測定したい周波数の5倍の周波数帯域が必要だといわれます。5MHzありますから、オーディオ用のプリアンプが1MHzの帯域であれば、測定には十分なスペックです。
プローブは付属していないので、別途購入します。50MHz程度なら1本1500円以下で購入できます。
●実測の風景
実際にアンプの特性を測ります。アンプは6V6相当の真空管アンプです。2万円前後で流通しています。なかにディジタル・アンプが入っていて真空管を抜いても音の出る一見真空管アンプではありません。
測定は、ダウンロードして無償で使えるWAVEFORMSのネットワーク・アナライザを使います。runをクリックするだけです。アンプの入力に入っているボリュームは最大の約8割の位置です。