可変電源とスペクトル・アナライザの組み合わせが便利なAnalog Discovery (2)

出力電圧をDMMで測る

 Analog Discoveryの電源Suppliesが出力している電圧を測ります。設定画面です。

dc02.png
 Analog DiscoveryにはMeterという測定アプリケーションがあります。測定値は安定して表示されますが、筆者の環境ではグラフはよく暴走します。3.3.7ではLoggerという名称に変わっています。

Dc01.png

 Analog Discovery2はプラスとマイナスで0.5/0.6/0.7/0.8/0.9/1.0/2.0/3.0/4.0/5.0Vが選べます。MeterとDMMで読み取った値です。

設定値[V] Meter[V] DMM[V]
5 4.995 5.000
4 3.994 4.001
3 2.992 2.998
2 1.992 2.000
1 0.9915 1.000
0.9 0.8895 0.9001
0.8 0.7915 0.8007
0.7 0.6895 0.6999
0.6 0.591 0.5999
0.5 0.4915 0.49999
     
-5 -5.02 -4.999
-4 -4.02 -4.002
-3 -3.02 -3.004
-2 -2.016 -2.002
-1 -1.015 -1.001
-0.9 -0.9135 -9.011
-0.8 -0.814 -0.8012
-0.7 -0.714 -0.7018
-0.6 -0.614 -0.6021
-0.5 -0.5145 -0.5021

 1回だけの測定ですが、おおむね実験には十分な確度で出力が出ていて、Meterの読み取り値も問題ないと思います。

ノイズを見る

 絶対的なノイズの量を見るための技術を持っていないので、計測した結果の図を比較します。測定時間や測定レベルによってまったく異なる測定画面が出ます。適切だと思われる画面を出していますが、間違っている解釈をしているかもしれません。プローブは1×、AC結合です。

電源Suppliesの出力電圧+3V
 オシロスコープの波形です。比較のためにアナログ電源を用意しました。上(青色)の波形です。下の赤色の波形がAnalog Discoveryの電源Suppliesの出力です。周期的な波形が観測できます。

dc22.png
 わかりずらいので、残像モードで表示します。のこぎり波が見えます。高い周波数の鋭い波形は、測定環境のコモン・モード・ノイズなどが主体と思われます。

dc22a.png

 スぺクトラムを見ます。赤色がSuppliesの出力です。数十kHzのレベルが高いので、この付近にのこぎり波のノイズが集中しています。青色のアナログ電源は、低い周波数帯域ではノイズは少ないのがわかります。

dc22b.png

5V
 3Vのような特有な波形は見えません。

dc23.png

 残像モードを見ても、ランダムなノイズのようです。

dc23a.png

 スペクトルでも、低域のノイズは少なめなのがわかります。

dc23b.png

電源3VとOPアンプの出力波形を見る
 OPアンプを使った12倍アンプの電源にSuppliesの電源を使います。最初は+3Vと-5Vです。外部のオシレータで約1kHzを発振させて入力につなぎます。電源には0.01uFと22uFのデカップリング用コンデンサを入れてあります。

 青色がアンプの出力波形です。赤色が+3Vの電源ラインに乗っているノイズです。ひげのようなパルスは測定系に飛び込んでいるコモン・モード・ノイズなどと測定用ケーブルに乗っているディファレンシャル・ノイズが主体と思われます。

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 オシロスコープで見えているのこぎり波は、スペクトルの数十kHz付近に見えています。OPアンプの出力は青色ですが、出力にこの成分は出てきていません。OPアンプはPSRR(電源電圧変動除去比)という能力があって、低い周波数では電源の変動が影響を受けずらいです。

dc31aa.png

電源5VとOPアンプの出力波形を見る
 OPアンプに±5Vの電源を供給します。OPアンプの出力の高い周波数に大きめの出力が見えますが、多くは発振器から出力とケーブルに乗っているノイズです。


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 Analog Discoveryの実験用電源はスイッチング・タイプです。いくらかのノイズが観測できますが、OPアンプの回路であれば、PSRRにより、電源のノイズの影響は避けられます。

測定器

DMM;キーサイト。6 1/2桁デジタルマルチメータ34461A(購入は2016年1月)

オシロスコープ;Pico Technology。16ビット分解能(2チャネル使用時は15ビット)2チャネル60MHz USBオシロスコープ(AWG付き) PicoScope 5242B

アナログ電源;ヒューレット・パッカード。6227B 電源。定電圧モードのリプルとノイズ(20Hz~20MHz): 250uVrms、4mVp-p(発売時の仕様)。

バックグラウンド

デカップリング用コンデンサ;OPアンプやICの電源端子付近に積層セラミック・コンデンサを取り付けます。急激に変化するICへの電流を供給する役目とIC自体が発生するノイズを電源ラインを通してほかの回路へ出さないようにする役目を担っています。必須のパーツです。通常、電解コンデンサとペアで使います。