逆接続保護回路 ① ダイオード

 いろいろな電子回路に電源をつなぐとき、

  • プラス・マイナスを逆につなぐ
  • 指定の電圧より高い電圧をつなぐ

ような失敗はよくあります。

 ここでは、プラス・マイナスを逆につないだ時に、内部の回路が壊れないように保護する回路の実験をします。最初は、ダイオードを1個を電源ラインに挿入します。

実験回路

  左が入力で、右が出力です。入力には実験用可変電圧電源をつなぎます。出力には電子負荷装置をつないだら、ショットキー・バリア・ダイオードでは測定がうまくいきませんでした。なので、抵抗負荷で測定しました。

実験① 順方向に電圧をかける

 正常に入力にプラスの電圧をかけます。測定するのは、入力と出力の電圧、流れる電流です。ダイオードの電圧降下が測れます。

(a) 整流用ダイオードIN4007

  • 逆電圧:1000V
  • 平均順電流:1.0A
  • 順電圧:1.1V

負荷抵抗50Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
4.07 0.063 3.30 0.77
5.79 0.096 5.00 0.79
10.82 0.193 10.00 0.82
15.83 0.289 15.00 0.83

負荷抵抗20Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
4.11 0.161 3.30 0.81
5.82 0.244 5.00 0.82
10.85 0.487 10.00 0.85
15.87 0.728 15.00 0.87

(b) ショットキー・バリア・ダイオード20SQ045

  • 逆電圧:45V
  • 平均順電流:20A
  • 順電圧:0.55V

負荷抵抗50Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
3.58 0.063 3.30 0.28
5.29 0.096 5.00 0.29
10.30 0.192 10.00 0.30
15.32 0.289 15.00 0.32

負荷抵抗20Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
3.61 0.161 3.30 0.31
5.32 0.245 5.00 0.32
10.33 0.488 10.00 0.33
15.32 0.727 15.00 0.32

(c) SiCショットキー・バリア・ダイオードSCS106AGC

  • 逆電圧:650V
  • 平均順電流:6.0A
  • 順電圧:1.5V

負荷抵抗50Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
4.31 0.063 3.30 1.01
6.02 0.097 5.00 1.02
11.02 0.193 10.00 1.02
16.05 0.289 15.00 1.05

負荷抵抗20Ω

入力電圧[V] 電流[A] 出力電圧[V] 低下電圧[V]
4.34 0.161 3.30 1.04
6.07 0.244 5.00 1.07
11.08 0.489 10.00 1.08
16.08 0.726 15.00 1.08

実験② 逆方向に電圧をかける

 入力にマイナスの電圧をかけます。測定するのは、入力と出力の電圧、流れる電流です。負荷抵抗は20Ωです。

(a) 整流用ダイオードIN4007

入力電圧[V] 電流[μA] 出力電圧[V]
~-9.4 0 0
-12.1 -1.219 0
-14.7 -2.062 0
-30.5 -3.057 0

(b) ショットキー・バリア・ダイオード20SQ045

入力電圧[V] 電流[mA] 出力電圧[V]
-1.33 -1.656 -0.038
-9.72 -4.098 -0.0447
-21.7 -51 -0.93
-27.6 -125 -2.6

(c) SiCショットキー・バリア・ダイオードSCS106AGC

入力電圧[V] 電流[μA] 出力電圧[V]
-13.9 -1.4 0
-20,0 -2 +0.001
-30.0 -3 +0.0028

実験結果

 ショットキー・バリア・ダイオードの電圧降下が少ないので、保護用にいれるには、ショットキー・バリア・ダイオードの中から選ぶのがよさそうです。

 ショットキー・バリア・ダイオードは、マイナスの電位がかかったとき、少し電流が流れます。スイッチング電源に2次側の整流用などに使われるときは、熱暴走に注意するようにという文献が見つかります。今回のような逆接続の用途では長時間逆接することはないと思うので、問題にならないでしょう。