逆接続保護回路 ② PチャネルMOSFET
ここでは、プラス・マイナスを逆につないだ時に、内部の回路が壊れないように保護する回路の実験をしています。前回ダイオードを用いました。
整流用ダイオードが約1Vの電圧低下だったのに比べ、ショットキー・バリア・ダイオードでは0.3V程度でした。入れただけで電圧低下が起こるので、特に電圧の低い回路では、ショットキー・バリア・ダイオードが望ましいです。
今回は、PチャネルMOSFETを使います。
●実験回路
左が入力で、右が出力です。入力ドレインには実験用可変電圧電源、出力ソースには抵抗負荷を入れて測定しました。
●実験 ①
(a) 2SJ681
- ドレイン-ソース間電圧:-60V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- ドレイン・ゲート間電圧:-60V
- Vth:-0.8V
- ドレイン電流(DC):5A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:0.12Ω
- 許容損失(25℃):20W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.54 | 0.163 | 3.30 | 0.24 |
5.36 | 0.247 | 5.00 | 0.36 |
10.69 | 0.495 | 10.00 | 0.69 |
15.95 | 0.738 | 15.00 | 0.95 |
(b) IRFU5505
- ドレイン-ソース間電圧:-55V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- Vgs :-2V
- ドレイン電流(DC):18A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:0.11Ω
- 許容損失(25℃):57W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.69 | 0.162 | 3.30 | 0.39 |
5.37 | 0.247 | 5.00 | 0.37 |
10.68 | 0.49 | 10.00 | 0.68 |
15.72 | 0.738 | 15.00 | 0.72 |
(c) TJ11A10M3
- ドレイン-ソース間電圧:-100V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- Vth :-2V
- ドレイン電流(DC):11A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:0.1Ω
- 許容損失(25℃):24W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.62 | 0.163 | 3.30 | 0.32 |
5.33 | 0.246 | 5.00 | 0.33 |
10.66 | 0.492 | 10.00 | 0.66 |
15.93 | 0.735 | 15.00 | 0.93 |
(d) 2SJ380
- ドレイン-ソース間電圧:-100V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- Vth :-0.8V
- ドレイン電流(DC):12A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:0.15Ω
- 許容損失(25℃):35W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.51 | 0.163 | 3.30 | 0.21 |
5.3 | 0.246 | 5.00 | 0.3 |
10.57 | 0.491 | 10.00 | 0.57 |
15.85 | 0.735 | 15.00 | 0.85 |
●実験② 逆方向に電圧をかける
入力にマイナスの電圧をかけます。測定するのは、入力と出力の電圧、流れる電流です。ソースにつないだ負荷抵抗は20Ωです。
(a) 2SJ681
入力電圧[V] | 電流[mA] | 出力電圧[V] |
---|---|---|
-10.5 | -0.1 | -0.005 |
-19.6 | -0.2 | -0.005 |
-29.6 | -0.3 | -0.006 |
(b) IRFU5505
入力電圧[V] | 電流[mA] | 出力電圧[V] |
---|---|---|
-10.1 | -0.1 | -0.004 |
-20.0 | -0.2 | -0.005 |
-29.7 | -0.3 | -0.006 |
(c) TJ11A10M3
入力電圧[V] | 電流[mA] | 出力電圧[V] |
---|---|---|
-10.1 | -0.1 | -0.003 |
-20.0 | -0.2 | -0.004 |
-29.6 | -0.3 | -0.005 |
(d) 2SJ380
入力電圧[V] | 電流[mA] | 出力電圧[V] |
---|---|---|
-10.1 | -0.1 | -0.002 |
-20.0 | -0.2 | -0.002 |
-30.0 | -0.3 | -0.003 |
●実験結果<1>
MOSFETがONしたときの電圧降下は、オン抵抗に電流を掛けた値です。したがって、測定値も、入力電圧を上げて流れる電流が増えると電圧降下が大きな値になっています。これは、3.3Vを除いて、前回のショットキー・バリア・ダイオードよりも大きい電圧です。
ここまでの実験に使ってMOSFETは中、小型なので、オン抵抗が100mΩほどあります。MOSFETは内部で数多くのFETを並列に接続しているので、大型のMOSFETほどオン抵抗が一桁低く、20~10mΩなります。
●実験 ③
(e) 2SJ673
- ドレイン-ソース間電圧:-60V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- Vgs:-1.5V
- ドレイン電流(DC):36A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:17mΩ
- 許容損失(25℃):32W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.60 | 0.162 | 3.30 | 0.3 |
5.49 | 0.246 | 5.00 | 0.49 |
10.71 | 0.492 | 10.00 | 0.71 |
15.89 | 0.737 | 15.00 | 0.89 |
(f) 2SJ555
- ドレイン-ソース間電圧:-60V
- ゲート-ソース間電圧:±20V
- Vgs:-1.0V
- ドレイン電流(DC):60A
- ドレイン-ソース間オン抵抗:17mΩ
- 許容損失(25℃):125W
ソースにつないだ負荷抵抗=20Ω
入力電圧[V] | 電流[A] | 出力電圧[V] | 低下電圧[V] |
---|---|---|---|
3.48 | 0.163 | 3.30 | 0.28 |
5.27 | 0.246 | 5.00 | 0.27 |
10.50 | 0.492 | 10.00 | 0.5 |
15.56 | 0.734 | 15.00 | 0.56 |
●実験結果<2>
劇的には、低下電圧は下がりませんでした。実験した中で一番パワーの大きな2SJ555では、3.3/5Vの低下電圧は、前回のショットキー・バリア・ダイオード20SQ045を下回りました。
ダイオードのほうがMOSFETより安価です。MOSFETはゲートのON/OFFなど、スイッチとして使ったりできるので、回路の工夫次第ではメリットは大きいでしょう。