フォノ・イコライザの組み立て (1) 世の中アナログ・レコードがはやっているそうだ 

日本ではLPレコードと呼ぶ

 1990年前後のオーディオ全盛の時代を経て、市販のオーディオ・アンプからPhone入力端子がなくなりました。CDが普及したので、信号レベルの低いカートリッジ出力を扱わなくてもよくなったからです。

 日本ではアナログ・レコードのことをLPレコードというのは、小さい形状のEPレコードも普通に存在するので、変な言い方です。世界を見るとVinyl record(ビニール・レコード)という名称が一般的なようです。EPレコードは日本ではシングルといいます。CDの時代にも使われていた言葉です。

 今現在、高速ディジタル信号の伝送でもエンハンスト技術は使われていますが、低域を落とし、高域のレベルを上げた状態でレコードに音楽信号が記録されています。したがって、LPレコードを再生するには、その時定数を規定したRIAA対応のフォノ・イコライザ・アンプが必要です。

オーディオ全盛の時代、高いものは音がよいという都市伝説が作られた

 バブルの時代だったこともあり、高級オーディオ機器を売りたいがゆえに、高価で重たいほど音がよいというのが一般的に広まりました。そのことは置いておいて、LPレコードを聴くためにはRIAAアンプもしくはフォノ・イコライザ・アンプが必要です。マルツエレックから、

  【LV2-PE-MK2-PCB】LV2-PE Mark2 フォノイコライザーアンプ<半完成基板キット>

という1万円を切る価格のキットが出ています。マーク2というのは、初代の改良版だというので期待しましたが、どういう製品であるかが、Webからまるっきりわかりません。製品の組み立てマニュアルでもあれば、推定できるのですが。いさぎよい商品です。

MMとMCとは

 オーディオの世界は、よりよい音質で音楽が聴きたいというユーザの要望を満足させるために、工夫された製品がつぎつぎと出てきました。LPレコードは歴史を振り返れば、テープを除けばアナログの最終形態です。

 エジソンのろうかん(円筒形)->平らな円盤(SP、片面約3分の再生、回転数は約80rpm)->大きさは直径10インチのLPレコード(回転数を33rpmに下げ、約20分の再生)ー>より大きな12インチ(回転数を33rpm、約30分の再生)、オートチェンジャ対応のEP(回転数は45rpm)

 レコードから音を取り出すカートリッジは、クリスタルからMMタイプが発明され普及し、より繊細な音の再生ができるMCが発明され、日本人はそれをとくに好みました。しかし、出力信号のレベルが低く、アンプのノイズを気にならないレベルで増幅するのは大変でした。

 MCカートリッジの出力電圧はmVと大変低いので、RIAAカーブに併せて増幅回路を作るのは経験が必要です。とくに、電源電圧は高いものが必要です。

 MMのRIAAアンプの前に1:10のトランスを置くか、J-FETの増幅回路を入れるかという対応がメジャです。十分に低雑音のOPアンプは現在入手可能ですが、実装を含めて経験が必要なので、製品化は少ないようです。

 J-FETを使ったディスクリート増幅回路では、2次高調波のレベルが大きく、ひずみ率は高いです。さらに、利用できるJ-FETも限定されるので、絶滅危惧種といえますが人気があるようです。

 ハイエンドのMCカートリッジは数十万円と高価ですが、一番知られているDL103は35000円で購入できます。4,5年前に1万円値上げされましたが、50年以上継続して作られています。

レッツ チャレンジ!

 スペックがわからないのですが、初代製品のマニュアル類はWebで探せます。

 届きました。初代とはMC用のFETが異なり、2SK170から2SK3320に変更され、はんだ付けされています。2SK3320はデュアルFETで、パラレルで使われているので、1個のときよりノイズが少なくなる可能性があります。

 回路の中心はOPアンプが1個で、+12Vを外部から入れると、内部で-12Vを作り、±12Vの電源で動きます。

コラム LPプレーヤ

 新品として販売されているLPプレーヤには2系統あります。

  • 従来からのオーディオ専用
  • USBでPCに取り込める廉価版

 LPプレーヤは、業務用としてAC同期モータを利用し、ギアで回転数を33/45/78rpmに制御する製品が出た後、ゴムの円盤(アイドラ)でプラッタ(レコードを載せる金属製の円盤)を回す方式になりました。アメリカのラジオ局ではこの時代のモデルが主流でした。

 一般家庭用では、ぜんまいを使った製品、モータからプーリーとベルトでプラッタに回転を伝える製品が主流となりました。その後、日本では、ダイレクト・ドライブというプラッタの回転軸がモータの軸そのもののになった製品が主流となりました。いわゆる回転ムラ(ワウフラッタ)の性能がとてもよくなりましたが、今現在、ハイエンドの製品では使われていません。

 LPプレーヤは、ヤフオクで入手できます。軸受けやモータ制御回路に不具合のあるジャンクもたくさん出回っていますが安価です。ベルト・ドライブのベルトは、同等品を入手できます。

 また、メカ部分を購入して、ケースを作ることもよく行われています。