OPアンプの怪 その3 Cがあると何が変わるか(2)

コンデンサを追加すると(その2)

 前回の測定では、オシロスコープの各チャネルのプローブは測定前に入力をショートして、0レベルを調整しました。今回は、波形自体がずれているようなので、波形発振器の出力レベルを0にしても、0からずれていたので、オフセットを調整しました。

1kHzの波形

 べースになるのは100倍の非反転増幅回路です。前回は次の回路図のように、R2に並列に100pFを入れました。今度はR2に直列にコンデンサを入れます。

 C2のない元の入出力波形です。電源は前回と同じ±10Vです。入出力はほぼ同じ波形をしています。

1kHz C2は100pF

 おもいっきり予想していない波形がでました。赤色が出力の波形です。

 入力を正弦波に変更しました。100倍以上増幅されて、上下のレベルの高いところが電源電圧の制限でクリップしているように見えます。


 入力が50mVのところを9mVまで下げると、下側のクリップがなくなりました。

 さらに入力を5mVにすると、出力波形は、プラス側にシフトしているように見えます。

 入力を3mVマイナス側にシフトしたら、出力はマイナス側に移動し、クリップしてしまいました。

 第1回で、電源電圧はプラスとマイナスを同じにする必要はないという実験をしました。-10Vに対して、プラス側を20Vに上げ、発振器のオフセットを調整したら、きれいな正弦波が出ました。入力は1kHz、10mVです。

 周波数特性を測ります。レコードの補正曲線RIAAみたいですね。周波数によって利得が変化する複雑な曲線です。約20kHz付近が本来の増幅度100倍=40dBです。

 コンデンサはリアクタンスという抵抗をもっています。周波数依存です。例えば、1kHzでリアクタンスXcは、次のように求まります。

Xc = 1 / 2π f C
    = 1 / 2 * 3.14 * 1000 * 100 *10^-12
    = 1.59 MΩ

 R2とこの1.59MΩが合成されるので、増幅率Avは下記のように求まります。

Av = 100k + 1.59M /1k = 1700倍

 対数で表すと、

 20log(1700) = 64dB

ですが、グラフでは、平らな部分は54dBぐらいに読み取れます。

 LTspiceでシミュレートしました。そうすると、1kHzの増幅度は64dBで一致しています。(1)の領域のように周波数が低いほど利得が上がる部分、(2)の領域のように、実際に測ると急激に利得が下がっているというように、シミュレーションと大きく異なっています。

 (3)の付近は実測と一致しています。

 コンデンサのリアクタンスは周波数依存ですから、周波数が下がると抵抗値は上がり、その結果、利得も上がるはずです。しかし、OPアンプ自体がそこまで増幅できないので、7kHz付近から低い周波数の利得は平らになっていると推測できます。

 高域で急激に利得が下がっているのは、理由はわかりません。

10kHz C2は100pF

 高い周波数をみます。入力は正弦波、50mVのときの波形です。出力のレベルが1kHzのときに比べて下がっています。入力が9mVのときとほぼ同じ波形なので、増幅率が1kHz時と比べて1/10に下がっているようです。

 プラス側を20Vにし、発振器の出力をシフトしてクリップしないようにしたとき、出力波形は、全体に波打っていて上下するので、発振しているかもしれません。横軸を変更した波形です。

1kHz C2は0.1uF

 C2の容量を1000倍の0.1uFに変更しました。入力波形は1kHz、50mVの方形波です。全体にシフトしていますが、立ち上がりなどの波形はほとんど変化していません。

 方形波を正弦波に変更しました。増幅率は100倍ぐらいで、DCオフセットの発生で、この波形ではプラス側にシフトしているようです。

10kHz C2は0.1uF

 1kHzと同じような状況に見えます。増幅率は100倍ぐらい、DCオフセットの発生で、この波形ではプラス側にシフトしているようです。

8Hz C2は0.1uF

 低い周波数で、出力の増幅率は上がっているように見えます。

 周波数特性を測ります。ほとんどの帯域で40dBの増幅率です。低域で増幅率が上がっています。



 2種類の容量のコンデンサを使って、周波数特性をみました。特定の周波数領域の利得を上げるような働きがありました。コンデンサを連続して切り替えるのは実装的には大変です。しかし、R2はボリュームに置き換えれば、連続して、低域の周波数の増幅する周波数を可変できそうです。