Raspberry Piのアナログ電源をキットで作る (2) キットの組み立て

大容量出力可変安定化電源キットの内容

 レギュレータLM338Tは単体でも購入できますが、このキットはプリント基板がついているので、ユニバーサル基板を使って製作するより、はるかに短時間でできあがります。また、いろいろな注意書きが書かれているので、勉強になります。

背の低いパーツからはんだ付けする

 最初に大きなパーツを取り付けると、小さなパーツの取り付けやはんだ付けがしにくくなります。

 最初は、抵抗をはんだ付けします。

 RVという抵抗は電圧可変範囲を決めるために使われています。5V時は0Ωと書かれているので、750Ω、1.5kΩ、2kΩは使いません。

 R1は200Ωです。最初にこの抵抗をはんだ付けします。テスタの抵抗レンジで200Ωを確認します。5本の色の中央3本が黒色なのですぐに見つかります。

 抵抗の両端を90度ぐらいに手で曲げて、プリント基板に挿し込みます。

 裏返します。抵抗のリード線を根元から広げます。

 はんだ付けします。

 余分なリード線をニッパでカットします。根元にニッパの刃を当てると、はんだの部分からカットされます。そうしてはいけません。リード線だけをカットします。その理由は、はんだにストレスを与えると、時間がたったらはんだクラック(ひび割れて接触不良)を起こすといわれているからです。もし、はんだもカットしてしまったら、はんだゴテの先を短時間あてます。

 リード線をニッパでカットするときは、手のひらで覆うなどして、飛び散らないようにします。そして、プリンの空き缶などに保存します。

 早速再利用しましょう。

 回路図にRVと書かれた抵抗は、5V出力時には0Ωを使います。したがってショートします。

 表です。

 裏です。

 次に、小さなパーツは積層セラミック・コンデンサです。2個ありますが、同じ容量の0.1uFです。極性もないので、コンデンサの記号のところに、向きを考えないで挿し込んみ、はんだ付けします。リード線の挿し込む幅が広いので、事前に広げておきます。このプリント基板が最初に作られたころは、円盤のセラミック・コンデンサだったと思われます。その寸法に合わせて広かったのでしょう。このような場所の用途は、現在、すべて積層セラミック・コンデンサに置き換わっています。

 次は保護用ダイオードです。小さなパーツなのに最後にはんだ付けするのには理由があります。ダイオードは熱に弱いので、最初にはんだ付けしていると、ほかのパーツをはんだ付けするときの熱が伝わってします、と言われていました。たぶん、4,50年ぐらい前の言い伝えだと思います。

 取り付け方向は、帯が目印です。

 入っていたのは、整流用ダイオードIN4007でした。大変古くからあるダイオードです。電源をOFFにしたとき、2次側の電圧が電解コンデンサに残っていて、1次側の電圧のほうが低くなったときなどにLM338Tの耐圧を超えないように保護します。通常動作しているときは、回路的には何も役立っていません。

 ここまでのプリント基板の様子です。

 どんどん作業を進めていきたいところですが、人は、絶対にミスをします。そのミスを少なくするために、チェック・リストなどを使う方法が知られています。

 回路図が付属しています。

 部品を取り付けたら、蛍光マーカ・ペンで印をつけます。

 半固定抵抗(トリマ)をはんだ付けします。1kΩですが、形状はいろいろあるので、足の挿し込む穴が複数あります。回路図では、足が2本しかありません。

 回路図的には、このような書き方にしてほしいところです。VR1の表面に書かれている「102」は1kΩの表現方法です。

10 * 10^2 = 10 * 100 = 1000 =1k

大きめのパーツのはんだ付け

 電解コンデンサを取り付けます。10uFが2個、2200uFが1個入っていました。電解コンデンサは、名前のとおり、中に電解液が入っていて、底のリード線が出ている部分をゴムで封入しています。寿命の短いパーツです。電源回路には欠かせないパーツでもあります。

 プラスとマイナスの極性があるパーツです。2種類の判別方法で、どちらのリード線がプラスかマイナスかがわかります。

 プリント基板の上に白色で記号などが印刷されています。シルク印刷といいます。目の粗いシルクの布にインクを含ませて印刷していた名残です(昭和の中期まで学校にあった謄写版と同じ原理)。今は、インクジェットで印刷することが多くなっているようです。

 10uFをはんだ付けしました。

 大きな2200uFをはんだ付けしました。この大きい電解コンデンサは、2200uFと異なる容量が入っていることもあるようです。

整流用ダイオードの取り付け

 最初の方針では両波整流の予定だったので、ダイオードを2個取り付けました。プリント基板には規格やフラット・タイプのブリッジ・ダイオードが取り付けられる穴が用意されています。

※この両波整流用ダイオードは、その後ブリッジにして使うために4個をはんだ付けしました。しかし、Vfの電圧が高く、5Vのような低電圧回路に向かないことがわかったので、Vfが低いブリッジ・ダイオードに変更しました。次回に説明します。

  ショットキーバリアダイオードブリッジ 60V15A D15XBS6

LM338Tと放熱器の取り付け

 付属の放熱器にLM338Tを取り付けてから、プリント基板にはんだ付けします。放熱器がもっと大型のときは、LM338Tのリード線を延長しないといけません。

 #240から#600の紙やすりで、放熱器の取り付け面とLM338Tの金属面を軽くこすって平らにします。

 LM338Tにシリコン・グリスを薄く塗ります。放熱器とICの微小な隙間に空気が入っていると、放熱効果が大変低下します。

 付属のナイロンねじで取り付けます。LM338Tの放熱フィンは出力につながっているので、絶縁しないと、グランウンドにつながることがあり、出力が出ません。放熱器をケースに入れるときなど、接触させないようにします。確実に絶縁するには、シリコン・グリスではなく、絶縁用のシートを挟んでナイロンねじで留めます。絶縁シートは、SiCのダイオードに付属していました。単独でも購入できます。

 LM338Tのリードをプリント基板にはんだ付けします。放熱器についている2本のピンをプリント基板に留める場所がないので、1mmほど、放熱器がプリント基板に引っ掛かるように位置決めをしました。

 このままでは放熱器が重いためLM338Tのリード線だけで支えることになり物理的に強度がないので、ホット・メルトで固定します。

入出力部分の工夫

 入出力部分を基板の裏から配線材を直接はんだ付けすると、強度がとれないので、何度か実験で動かしているとパターンがはがれます。

 余ったリードを活用します。U字に曲げて二つの穴に挿し込みます。

 プリント基板の裏でリードを折り曲げ、はんだ付けします。プリント基板の上側で、ねじります。