オーディオ帯域の波形を見る手軽なツール ADALM1000 (1)

オシロスコープがほしい

 電子工作にはテスタ(マルチメータ、DMM)はどうしても必要な測定器です。電圧や電流を目で見ることはできないからです。直流ならテスタで測れますが、交流信号を目で見るにはオシロスコープが適しています。

  アマゾン では1万円を切った価格のUSB接続のオシロスコープも販売されています。PCを立ち上げるのは面倒な人には、スタンドアロンのオシロスコープもあります。4千円しません。筆者は完成品をebayで購入しました。JYE TechのDSO0138です。赤い色をしているのがオリジナル品です。通常は、パーツ・キットとして秋月電子通商などで販売されています。

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 現在、オシロスコープは一部の教育向けを除けば、ディジタル・オシロスコープが全盛です。測定できる周波数帯域が広いほど高価ですが、電子工作では20MHz以下でも支障ありません。新品なら5万円前後で購入できます。

オシロスコープは何のために使う?

 目で電圧波形を見ることのできるのがオシロスコープですが、利用する目的は、電子回路などのトラブルの原因を見つけるためです。そのためにトリガという機能があります。めったにおこらないトラブルの原因を、トリガ機能を使って見つけ出します。アナログからディジタルに変わっても、その本質は変わりません。トリガ機能の優秀なメーカが生き残っています。

波形を見るだけならオシロスコープ以外にもある

 高価で触れるチャンスも少ないですが、テクトロニクス(Keithley)DMM7510には波形表示機能がついています。本体は7.5桁のマルチメータです。

 このサイトでも紹介しているいろいろな測定ができるDigilentのAnalog Discoveryは、アナログ・デバイセズが協力して製品を作っています。学生向け電子回路学習用のツールです。同様なツールに、ADALM1000があります。RSコンポーネンツDigi-keyなどで扱っていて、2016年5月現在5139円と入手しやすい価格です。16ビットの分解能のあるA-Dコンバータが使われており、オシロスコープのサンプル・レートは100kSPSと高くはありませんが、オーディオ用途に使えます。

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 通常のオシロスコープの分解能は8ビットです。なので、DMMの機能があっても、桁数はあまりとれません。

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 ADALM1000の特徴の一つは、電圧と電流を測れることです。測定は0~5Vの範囲です。マイナス側は測れません。波形発生の機能、4本のディジタルI/Oも用意されています。

 低価格で入手できるツールには、リニア・テクノロジーが出しているArduino互換LINDUINOがあります。これにQuikEval Systemをもつ評価ボード、24ビットA-DコンバータのLTC2498を搭載したDC2026Cを使えば、ゆっくりとした事象なら波形を見ることができます。評価ソフトにはトリガの機能はありませんが、Arduinoのスケッチを使って工夫ができます。

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ADALM1000を利用する

 ADALM1000には2種類のソフトウェアがあります。どちらもオープン・ソースです。

  • Windows、Linux、OS XをサポートしたPixelPulse 2
  • 電圧計、抵抗計、オシロスコープ、スペクトル・アナライザ、インピーダンス・アナライザなどの計測ソフト・スイーツALM1000 ALICE

  ALICEは、Windows10 64ビット版で動きました。MacとRaspberry Piではインストールできませんでした。

 ◆電圧、電流表示ソフトPixelPlus2の実行画面

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◆alice-oscilloscopeの実行画面

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◆alice-spectrumの実行画面

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バックグラウンド

20MHz;オシロスコープで波形を観測するには、見たい信号の約5倍の周波数帯域が必要といわれています。オーディオは1MHz程度までの信号が見れれば十分です。したがって、5MHz以上の帯域があればよいので、今市販されているオシロスコープはどれでもよいことになります。1980年代、日本でVHSなどビデオ機器の生産が盛んだった時期、製造現場の動作確認用に帯域20MHzのオシロスコープが大量に作られました。

 オーディオ機器で起こるトラブルの多くは発振です。アンプなのに発振してしまうことがあります。この現象を確認するには、帯域は50MHz以上必要と言われています。

周波数帯域;アナログ時代、オシロスコープのスペックはDCから測れる周波数の上限(-3dB)、周波数帯域が重要でした。ディジタル・オシロスコープでは、A-D変換するサンプリングの回数が波形を正しく表示するために重要な項目になります。1Gs/sは、イチ ギガ サンプリング パー セックと読むようです。キーサイトでは1GSa/sと表記しています。1秒間に1,000,000,000回ですね。