Raspberry Pi とVolumioで最先端オーディオを楽しむ その7 より良い音を求めてリクロッカKALI(Rev.B)

クロックを作り直してD-Aコンバータにジッタの少ないクロックを配給

 ディジタル音源は、PCMと呼ばれるデータをD-Aコンバータに送ってアナログ信号に変換します。もともとアナログ信号をA-DコンバータでPCMデータにするのですが、電圧方向のデータが記録されています。

 再生するときは、PCMデータの条件、たとえばCDだとサンプリング周波数は44.1kHzであるという前提で一定の時間ごとにD-Aコンバータはアナログ信号に変換します。サンプリングの定理から、ローパス・フィルタを通すことで連続した信号になります。このクロックが不正確だと、データは正しく再生されません。

 PCでUSB経由でD-Aコンバータへデータを送るアイソクロナス転送は、次の三つの実現手段があります。

  • PCが出力するタイミング基準信号をもとにクロックを生成する「シンクロナス方式」
  • PCが出力するオーディオ・データをもとに基準クロックを生成する「アダプティブ方式」
  • 再生デバイス側からPCに必要なデータを都度要求する「アシンクロナス方式」

 現在は、24ビットPCMデータをアシンクロナス方式で確実にD-Aコンバータまで送り届けることで音質が向上しています。送り届けた後は、D-Aコンバータが正確なクロックでPCMデータをアナログ信号に変換します。

 USB経由、Toslink経由などで送られたデータはI2S方式の各信号に変換され、D-Aコンバータに入ります。

 正確なクロックは水晶発振モジュールを使うと実現できますが、このクロックにはジッタと呼ばれるわずかな誤差が含まれています。

 I2S信号では、クロックとPCMデータを別々にD-Aコンバータに送ります。とくにPCM512xのD-Aコンバータは、このクロックをもとに内部処理で必要なMCLKクロックを作ります。したがって、ラズパイからD-Aコンバータへ入れるクロックは大変重要です。

 ここでは、そのクロックを一度作り直して、ジッタの少ないクロックにしてくれるボードを利用します。ここで紹介する三つの部品は、いずれもVolumio-Shopで購入できます。製造元のAlloでも購入できます。数量割引があります。

リクロッカKALIボードはジッタを少なくする目的で利用

 Raspberry Pi B+の上に「Allo Kali I2S Reclocker」を重ねました。サンプリング周波数は最大192kHzまで対応しています。メインの処理はFPGAが行っています。中央の大きなデバイスは、バッファに使われるFIFO用メモリです。

 このボードに5Vを供給すると、下のラズパイにも5Vが供給されます。左上のジャンパを外すと、2枚のボードの電源を分離できます。分離したとき、ラズパイは単独で動作させるときと同様にマイクロUSBコネクタに電源をつなぎます。DCジャックの隣に電源用ピンヘッダがありますが、テスト用なので使いません。

 基本的な仕様は次のとおりです。

  • I2S入力:44.1、48、88.2、96、176.4、192kHz - 16、24または32ビット
  • I2S出力:44.1、48、88.2、96、176.4、192kHz - 16、24または32ビット
  • FIFOメモリ:4MバイトのSRAM

PIANO Hi-Fi DACボードはオーディオ用のパーツを多用

 I2S入力のD-Aコンバータ・ボードです。D-AコンバータにはPCM5122が使われているので、I2Cインターフェースから電子ボリュームが利用できます。

 基本的な仕様は次のとおりです。

  • I2S入力:サンプリング周波数8~384kHz
  • ヘッドホン・アンプ:TPA6133A2。φ3.5mm標準ジャック

 このボード単独の電源配給はできず、GPIOから配給されます。

 Volumio2では、リクロッカKALIボードと組み合わせるI2S-DACボードは、このpianoとCOLLYBIA – MAMBOBERRY LS DAC+(D-AコンバータはES9023)の2種類だけが動作確認されています。

 都合、3枚のボードを重ねて使うことになります。信号と電源はGPIOピンでつながります。

電源ALLO – POWER SUPPLY 5V 3A

 3枚のボード合計の消費電流はそこそこ大きいようです。3Aの電源を利用します。スイッチング電源です。

Volumioのセットアップ

 通常のVolumioのインストールと同じくマイクロSDメモリにダウンロードしたVolumioのimgファイルをコピーし、電源を入れます。5分近くかかりましたが、立ち上がり、IQ-AudIo PI-DAC+として認識されました。Volumio2ではD-Aコンバータが自動認識されませんでした。なので、IQ-AudIo PI-DAC+を選択しました。

 データの種類にもよりますが、演奏途中で中断するときに最後の部分が短く繰り返されます。Volumio 2が完全に対応していないようですが、キューに入れたものを連続再生するときには不都合はありません。

 Volumio2では、一覧表示の項目が増えています。

 一覧表示が従来のリスト方法に加えてGrid Viewという方法が追加されました。

 音質は、弦楽器の胴の響き、ピアノの打鍵の音数が豊かになりました。投資した額以上の効果が得られます。

(Rev.B) 2016/10/15 10月13日付け2.000、正式バージョン2リリースによる本文全体の修正。

バックグラウンド

FPGA;Field-Programmable Gate Arrayの頭文字をとったもので、ロジック回路の主流デバイスです。名称のように、フィールドでプログラミングすることはなく、ロジック同士をつなぐ内部配線情報はEEPROM(FPGAに内蔵されている場合もある)に書き込んでおき、電源を入れるたびにFPGAにロードされます。現在、CPUコアを含んだ製品もたくさんあります。プログラムはCによく似たVHDLなどの言語を用いて回路を記述します。

FIFO;First In, First Outの頭文字をとったもので、一時的にデータをためるバッファです。入出力が一定しない通信回路で使われます。