ヘッドホン・アンプ・キットで快適に (3) 特性を測る

2種類のOPアンプで特性が異なるか確認

 ヘッドホン・キットはNJM4580DDという汎用オーディオ用OPアンプが付属していました。秋月電子通商では、OPA1622という設計の新しいヘッドホン用OPアンプOPA16228ピンDIP化した製品があるので、挿し替えて特性をとりました。

 測定器はAnalog Discovery とFRAplus(Ver.1.30.0045)です。Analog Discoveryと純正の計測ソフトウェアWaveforms2015 (Version 3.6.8)で周波数特性をとれます。FRAplusは、オーディオ用に特化した計測ソフトェアで、加えて入出力、ひずみ率、クロストークなども測れます。

 電源は4.8Vの電池ですから、±2.4Vで動作しています。

 測定の様子です。

周波数特性

 ヘッドホン・アンプのボリュームは中央付近にしました。発振器の出力は1Vp-pです。どちらのOPアンプも50Hzから20kHzはフラットです。負荷抵抗は8Ωです。

 負荷抵抗を39Ωに変更して測定しました。負荷が軽くなった分、高域がきれいに減衰しています。

入出力特性

 OPA1622の出力はレール-ツー-レールではありませんが、電源電圧ぎりぎりまで増幅します。NJM4580DDは、こちらで計測したように、低い電源電圧では、出力の振幅が取れません。

 どちらのOPアンプも、スマホのオーディオ出力が0.9Vp-pだとすれば、音量の大きくなったところでひずみます。電源を±5V以上で使いたいところです。

 負荷を39Ωにした結果です。

高調波ひずみ率

 周波数は、100Hz、1kHz、10kHzで測定しました。負荷抵抗は8Ωです。

 負荷抵抗を39Ωにして測定しました。1kHzだけの測定です。

クロストーク

 Lチャネルに発振器の出力を入れ、Rチャネルにどのくらい音が漏れているかを調べます。

 -70dBは漏れていないとみなせます。-40~-50dBは漏れているのがわかるレベルです。漏れる量は、IC内部、回路構成の両方が影響します。ヘッドホンは、左右の信号グラウンドが共通のケーブルなので、クロストークが多くなる構造です。人の声の高域が3~4kHzですから、もう少し高域のクロストークは減らしたいところです。

 このヘッドホンは、電源のインピーダンスが高めと思われるので、影響しているかもしれません。

コラム FRAplusとバランス対応ハードウェア

 FRAplusの特徴が、被測定物=アンプがバランス入力に対応しているところです。RCA入力では伝送時に反射が起こり、正しく信号を伝送できません。とくにオーディオ信号は3オクターブにもおよぶ広帯域の信号を正確に伝送しなければなりません。プロ用機器に使われているXLRは耐ノイズ特性に優れていますが、長距離の伝送時にも信号を劣化させません。

 写真は、発振器出力を差動にするハードウェアを取り付けた状態です。初代Analog DiscoveryはAnalog Discovery2より特性は劣りますが、オーディオ用途では十分です。このハードウェアはすでに頒布が終了しています。Analog Discovery2用が用意されるようです。