OPアンプで実験(1) 40dBの電圧増幅①

 OPアンプで電圧増幅回路を組んで、特性を測ります。

  • 反転増幅回路
  • 非反転増幅回路

 実現する回路には上記の2種類があり、それぞれ特徴がありますが、ここでは反転増幅回路を使います。

反転増幅回路で40dB

 OPアンプは、安価なオーディオ用NJM4580DDを利用します。DIPの形状をしているので、そのままブレッドボード上で実際の回路を組み立てられます。
 信号は、入力に対して出力が反転します。
 増幅率は40dBと、高く取ります。電圧増幅なので、

   増幅率[dB] = 20 log増幅率 = 20 log (出力電圧/入力電圧) = 20 log(R2/R1)

 logは常用対数(10を底とする)です。
 回路図です。

 抵抗の値を10kと1MΩにして、増幅度を計算します。

   R2/R1 =  1M / 10k = 100
   log(100) = log(100) = 2
   増幅率[dB] = 20 * 2 = 40dB

NJM4580DDの主なスペック

  • 動作電源電圧 ±2~±18V
  • 低雑音 0.8µVrms typ. (RIAA)
  • 広利得帯域 15MHz typ.
  • 歪率 0.0005% typ.
  • スルーレート 5V/µs typ.
  • バイポーラ構造

 このOPアンプは、動作するには、通常プラスとマイナスの電源が必要です。最近のOPアンプは、プラスマイナス5Vで動作する製品が増えてきています。古いこのアンプは、±12Vや15Vで利用することが多かった時代の製品です。

 RIAAというのは、LPレコードの低域、高域補正曲線をさし、60dBぐらいの高い増幅をするので、雑音が低いことが望まれます。

 typ.はtypと略されることもありますが、typical=典型的なもsくは標準値を訳されます。通常、min.(minimum)=最小値、max.(maximum)=最大値とともに使われます。

 広利得帯域は、通常GBW=利得帯域幅と表現され、単位はMHzです。数値が大きいほど、高い周波数まで信号が扱えます。

 歪率(ひずみりつ)は、THDなどと表現され、真空管アンプでは0.1%程度ですから、OPアンプは大変ひずみが少ないです。

 スルーレート(SR)は、GBWとともにOPアンプの性能を示す指標の一つです。多く場合単位はV/μsです。CMOSなどでは3桁ほど低い値になります。

 バイポーラ構造は、すべての素子がBJTで構成されているOPアンプです。先頭の差動増幅回路部分がFET、もしくはすべての素子がFETでできたOPアンプもあります。

組んでみた

 8ピンDIPのICは実験に使いやすいです。最近のOPアンプに限らずはSmallサイズのパッケージに入っていたり、リード線のない製品が増えてきました。パッケージの横に接点があれば手はんだできますが、底面にしかはんだ付けができないのは、専用のブレークアウト・ボードがないと実験ができません。

 このNJM4580DDに限らず、2個入りの製品が流通しています。1個使ったら、製品化するときなどではもう1個は、入出力端子の処理をしなければいけませんが、ここでは何もしません。

測定 その1

 電源電圧は±5.0V、発振器50mVp-p、1kHz、正弦波を入力端子10kに入れました。

 50mV*20dBなので、5Vの出力が観測できるはずでしたが、オシロスコープの青色が出力で、4Vp-p付近でクリップしています。

  クリップした理由は、古いOPアンプは、電源電圧と同じまで出力をスイングできないからです。電源電圧の95%以上の出力電圧が欲しい場合は、レール・ツー・レールと書かれたOPアンプを使います。

測定 その2

 電源電圧のプラス側を上げて8V、マイナス側はそのままで-5Vにしました。
 プラス側の出力波形(青色)はクリップしなくなりました。

測定 その3

 電源電圧のプラス側は8V、マイナス側を上げて-8Vにしました。
 出力はクリップしなくなりました。

測定 その4

 電源電圧を±15Vにしました。
 波形に何も変化はありません。

測定系

  • オシロスコープ Digilent ADP3450、Waveform3.16.3
  • 発振器 Agilent 33120A
  • 電源 Agilent E3631A