約1万円の測定器OpenScope MZ (3) オシロスコープを使う

据え置き型オシロスコープよりはるかに見やすい

 OpenScope MZのオシロスコープ画面には、縦軸が電圧、横軸が時間で、スケールが数字が表示されています。当たり前だと思うかもしれませんが、据え置き型オシロスコープでは、マス目があるだけです。ブラウン管時代にディジタル・オシロスコープが発売されてからも、ずっと据え置き型ではマス目だけです(ローデンシュワルツなどの例外はある)。

 ですから、電圧や時間は、2V/divや2us/divという表現が使われてきました。縦軸の表示が2V/divであればひとつのマス目が2Vですという意味です。見えている波形の高さがマス目三つ半分ならば5Vだなと暗算するわけです。下の写真はKeysightのDSOX3012Tです。最新モデルの1000シリーズでも縦軸と横軸に数値は表示されません。

 下の写真はOpenScope MZです。同じローパス・フィルタを接続しています。この色味は親会社のナショナルインスツルメンツのデザインに合わせていますが、数字が読みずらいですね。しかし、縦軸と横軸のスケールに数値と単位が表示されているので、直感的に情報が読み取れます。

測定事例;DUTはローパス・フィルタを使う

 LTspiceでCRによるローパス・フィルタをシミュレーションします。電圧源の発振器で方形波を発生させます。周期は3msですから333Hzです。

 発振器の出力にローパス・フィルタを通すと、出力は三角波(青色)になります。カットオフ周波数などの計算は、こちらの記事を参照ください。

 OpenScope MZで実際の信号を見ます。

 次のように接続します。

  • オシロスコープのCh1とWavegeneの出力W1を抵抗R1の入力側に
  • オシロスコープのCh2をR1とコンデンサC1の接合点、つまり出力側に
  • GNDはCh1のグラウンド側に

 観測は次のように行います。

  • Wavegeneの周波数を333Hzに
  •  電圧を1Vp-pに変更して電源アイコンをクリック
  • Osc Ch2の電源アイコンをクリック
  • 右上のSINGLEをクリック

 中央の緑色がトリガ・ポイントです。デフォルトでは、波形の立ち上がりでトリガがかかります、500mV地点でトリガされています。緑の線は、マウスで移動できます。500mVも変更できます。

マウスで操作

 波形表示エリアの中でマウスのホイールを回すと、周波数軸の値が変更できます。

 二つの波形が重なっているので見やすくするには、オフセット(offset)を0からを変更します。画面の電圧スケールの中央にあるオレンジの三角マークをマウスで上下に動かすとCh1の波形も移動し、オフセットが変更されます。青色の三角マークはCh2用です。

 レスポンスもよく、慣れると据え置き型のオシロスコープより操作しやすいです。

 ここで、波形表示エリアの右端にあるFFTをクリックします。スペクトラムが見れますが、見えるだけです。窓関数の種類や軸のリニア/Logの変更などは、現時点でサポートされていません。

 FFTからオシロスコープの表示へ戻すには、もう一度FFTをクリックします。

 FFTの下にある波型のアイコンは、周波数特性を描画するボーデ線図を測定できるはずですが、筆者は正しく動きませんでした。バージョンアップを待ちましょう。

 筆者は4Kディスプレイで操作しています。画面上下いっぱいに拡大します。オフセットを付けると左の電圧スケールは中途半端な数値になります。波形の電圧が読み取りにくいのですが、マウスを持っていくと電圧や周波数軸の値を表示します。

カーソルでしっかり測る

 画面底の中央にCURSORSがあります。

 メニューの中からTimeを選びます。

 方形波は333Hzで発振しています。1周期分を二つのカーソルではさむと、右下に333.4Hzと周波数が表示されています。

 CURSORSのメニューからTrackを選び、チャネルをOsc2に変更します。三角波のトップとボトムにカーソルを持っていくと、右下に321.2mVと電位差が表示されます。

コラム トリガとサンプリング・レート

 オシロスコープは、回路のデバッグに使われます。めったに起きない問題となる事象を的確に捕まえることのできるオシロスコープは重宝がられました。そのために、アナログ・オシロスコープの時代から、トリガが確実にかかることは必須の機能でした。ブラウン管では、残像として、数百、数千回の繰り返し波形が一瞬崩れたりする様子をとらえられます。確実にその場所を特定するために、周波数軸をずらす遅延機能が入りました。OpenScope MZでは、波形はメモリに保存されているので、画面の上に出ているように、過去の時間にさかのぼって波形を見れます。

 めったに起こらないことは、大変周波数の高く、短いパルスであることが大半です。そのパルスを確実に残すためにサンプリング回数を上げる必要があります。オシロスコープの性能を表すために帯域がいくらあるかはカタログに書かれています。最近の入門用機種では70MHzが多いです。OpenScope MZは2MHzです。そして帯域のなかで波形を正しく残すためにサンプリング・レートが重要で、OpenScope MZは6.25メガ・サンプリング/秒です。最初の登場したDSOX3012Tは5ギガ・サンプリング/秒です。

 電子工作では、めったに起こらないノイズなどの原因を見つけることはほとんどありません。ラズパイなどのGPIOの信号を的確に観測できれば十分なことがほとんどです。