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Arduinoで肉を美味しく調理する(1)温度センサは熱電対

肉をおいしく焼くには60℃が最適

 ステーキの焼き方については、公益財団法人日本食肉消費センターのWebページに焼き方についてのいろいろな情報が用意されていて、肉料理の際の参考になります。加熱温度と肉を構成する各タンパク質の変性の進行具合を示すデータが、次のページに示されています。タンパク質の変性を考慮して肉を柔らかく焼く方法がよくわかります。
 全たんぱく質の60%を占める繊維状たんぱく質が凝集を始める60℃くらいが一番柔らかくなりそうです。また肉の部位によっても、内部の温度上昇に違いがありそうです。
  http://www.jmi.or.jp/recipe/cooking/yaku_main5.html
 次のページでは、ステーキのレア、ミディアム、ウェルダンに仕上げるための内部の温度が示されています。柔らく仕上げるには、内部の温度を60℃くらいにコントロールすることが必要なようです。
  http://www.jmi.or.jp/recipe/cooking/yaku_main6.html

表面は雑菌を除去するためにもこんがり焼く必要がある
 肉の表面は、雑菌または病原菌に汚染されている可能性があります。また香ばしい香りを得るためにも、高熱で熱する必要があります。そのため、肉の表面は180℃以上に熱したフライパンに油をひいてそれぞれの面を数十秒間しっかり焼きます。表面を殺菌し、またドリップが流れ出さないようになります。
 その後、オーブンで中心部の温度が60℃くらいになるように加熱します。内部の温度が60℃になるのをArduinoの温度センサで、オーブンの設定温度を120℃くらいで少し時間をかけて焼きます。オーブンの温度を上げれば焼く時間は短縮できますが、表面近くの60℃以上加熱される部分が増加し固くなります。ローストビーフなどはそのため、表面をフライパンなどで焼きその後ジップロックなどに入れて60℃のお湯につけて加熱する方法もとられています。この場合も、60℃のお湯を長時間制御する必要があります。この場合でもArduinoで湯煎するお湯の温度のコントロールにArduinoを活用することができます。豚肉の塩ゆでも、この方法で柔らかくおいしいゆで豚を作ることができます。まずオーブンで焼く方法から試します。

温度センサは熱電対(ねつでんつい)
SPIインターフェースのArduino用のK型熱電対温度センサ・モジュール・キット
 測定温度の範囲は、フライパンの表面が250℃以上になるので半導体センサは利用できません。今回は、Arduinoで利用できて、フライパンの表面やオーブンの中、肉の塊の中心の温度も測定できるものとして熱電対の温度センサを検討します。
① K型熱電対温度センサ・モジュール・キット(SPI接続)MAX6675使用 (146:SSCI-MAX6675-ModuleKit)
 Arduinoのディジタル・ピンの8から13ピンに差し込んで使用する設計になっています。発売当初(2009年ころ)の写真で、Arduinoのマイコン・ボードはArduino Duemilanoveとなっています。現在の最新の5V駆動のArduinoであるなら、問題なく利用できます。

 発売当初は、次に示すようにピン間1.27mmのMAX6675とチップ・コンデンサが実装されていなく、はんだ付けが必要でした。

 気合を入れてはんだ付けしました。ピン間0.5mmくらいまでは、はんだゴテとルーペを駆使して何とか手作業で行っています。
 現在販売しているキットは小さい部品は実装されていて、ピンヘッダとコネクタの端子のはんだ付けで完成します。はんだ付け初心者でもまったく問題ありません。
 現在(2017年2月)では、次に示すMAX31855のチップを搭載したモジュールも販売されています。しかし、このモジュールは電源が3.3Vですので、5V電源のArduinoでは信号のレベル変換が必要になります。
② K型熱電対温度センサ・モジュール・キット(SPI接続)MAX31855使用 3.3V版 (864:SSCI-008648)
 MAX6675は氷点下の温度の測定はできませんが、MAX31855搭載のモジュールは-200℃まで測定範囲が広がります。電源が3.3Vですので、5V電源のArduinoにはそのままで接続することはできません。

T&D社製データロガーMCR-4TC
 手元にはT&D社のデータロガーがあります。1台税別で37,000円と高価ですが、4チャネルの熱電対センサの温度を同時に測定し記録できます。

 Arduinoのセンサ・モジュールはしまったはずの場所に見つからず行方不明ですので、最初にこのT&D社製の熱電対用のデータロガーMCR-4TCを利用して肉のおいしい焼き方の検証を行います。その後、何とかArduino用のセンサ・モジュールを見つけ出し、Arduinoのセンサで肉の焼き加減の確認を行う予定です。

(2017/2/15 V1.0)

<神崎康宏>

Arduinoで肉を美味しく調理する

(1) 温度センサは熱電対

(2) データ・ロガーMCR-4TC

(3) 熱電対センサ・モジュール

(4) ArduinoのSPI通信のピン配置がボードによって異なる

(5) テスト・プログラム

(6) 卵で実機テスト