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キットの製作 USBを電源にした可変電源 1/5

■過電流保護回路内蔵でショートしたときも安心な電源
USBを電源にした可変電源
1.5~4.5V+5V 350mA/1.5A

1 電源電圧を変化させられると実験に便利

写真0 キットを組み立てて利用しているようす

USBアダプタを入力に使い、3.3Vに電圧を設定している。コンパクトなので、ブレッドボードの端においても使える。


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実験用の可変電圧電源にしたい
 パソコンなどのUSBのコネクタには信号線のほかに5Vが来ています。USB2.0の規格では、1ポート(一つ差し込むと)最大500mAの電流が得られます。
 電子工作では、3.3Vのようにもうちょっと低い電圧が必要なことがあります。ここでは、5Vから1.5~4.5Vの電圧が取り出せる「NJM2397使用 USB可変安定化電源モジュールキット [AE-NJM2397] 通販コード K-09017;秋月電子通商」を組み立てます。


 キットで使用しているNJM2397は、出力電流最大1.5Aが取れるアナログ・レギュレータICです。

  • 過電流保護回路内蔵
  • 過電圧保護回路内蔵
  • サーマル・シャットダウン回路内蔵

などの各種保護回路が入っているので、実験時に、配線を間違って電源端子をショートしたときなどに壊さずにすむはずです。
 キットを組み立てたようすを写真1に示します。

写真1 レギュレータIC  NJM2397を使用 したUSB可変安定化電源モジュールキットの部品

(a) キットの部品

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(b) 組み立てが完了した電源の表面 p33.jpg




(c) 組み立てが完了した電源の裏面
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(d) 別売りのディジタル電圧計をつないだところ p20.jpg

●仕様
 USBの一つのポートから取り出せる電流は500mAなのですが、キットは下記の仕様になっています。

  • 入力電圧:5.0V
  • 出力電圧:1.5~4.5V…可変できる
  • 出力電流:350mA(ポリスイッチ実装時)、1.5A(ポリスイッチをショート時)

 ポリスイッチというのは、出力をショートした時などに既定の電流以上が流れると電流を遮断をし、ショート状態でなくなって時間がたって冷えると元の状態に戻るというデバイスです。過電流が流れると切れるというとヒューズと同じ働きですが、取り換えずに何度も使えるという便利なデバイスです。

 このポリスイッチをつながないで使うときには、レギュレータIC最大出力電流1.5Aまで使えるという欲張ったキットです。ただ、放熱器が小さいので、連続して1.5A流せるかどうかは実験して確認します。1.5AはレギュレータICの過電流保護回路が働く電流の値です。
 500mA以上で利用するときは、5Vは1.5A以上電流流せる電源(たとえば出力がUSBコネクタのAC-DCアダプタ)が必要です。

●部品の確認
 キットを購入した直後は、入っている部品の確認をします。表1に部品表を示します。

    表1 USB可変安定化電源モジュール・キットの部品リスト

部品番号 名 称 規格
IC1 可変レギュレータ NJM2397
CN1 USBコネクタ Bタイプ・メス
CN2 , CN3 , CN4 細ピンヘッダ(カットして使用) PHA-1x8SG
SW1 トグル・スイッチ 2MS1-T1-B4-M2-Q-E
VR1 縦型多回転VR 5kΩ 3296W-1-502
C1 電解コンデンサ 100μF / 25V
C2 , C3 積層セラミック・コンデンサ 0.1μF / 50V
C4 電解コンデンサ 47μF / 35V
R1 カーボン抵抗 1/4W 2.2kΩ 赤赤赤金
R2 金属皮膜抵抗 11/4W 1.8kΩ 茶灰黒茶茶
LED1 発光ダイオード L-513LY4T
F1 ポリスイッチ RXEF025
H1 放熱器 16PB017-01025
  プラネジ M3 7mm

◆主な部品…IC1

 可変レギュレータICのNJM2397は、IC表面には2397JRCという印刷文字が読めます。JRCは新日本無線という半導体の会社のロゴです。印刷文字が見える方向が「TOP View(トップ・ビュー)」とか「おもて面」からみたら、という表現が使われていて、ピン番号をみるときの基準になります。逆に「Bottom View(ボトム・ビュー)」と書かれていると、印刷面を裏返してピン番号を読みます。データシートを読むときにどちらかが書かれているので、現物を見て確認します。

◆主な部品…CN1

 USBコネクタは、一番大型のBタイプ・メスです。

◆主な部品…CN2 , CN3 , CN4

 細ピンヘッダは8ピン分入っていて、ニッパでプチっと必要分カットして使います。

◆主な部品…SW1

 SW1のトグル・スイッチは1A/250V、3A/120Vと横側に書かれています。

◆主な部品…コンデンサC1、C2、C3、C4
 C1は100uF/25Vのアルミ電解コンデンサで、そのままの規格のが入っていました。容量が100uF(ヒャク・マイクロファラッド)で、耐圧が25Vです。
 C2,C3は積層セラミック・コンデンサで、104という数字が書かれた青色の米粒のデバイスです。104は容量を表していて、0.01uFという値です。耐圧は書かれていません。
 C4は47uF/35Vの電解コンデンサで、そのままの規格のが入っていました。

◆主な部品…抵抗R1、R2、VR1
 抵抗R1は2.2kΩ、R2は1.8kΩです。電力は1/4W(ヨンブンノ・イチワット)=250mWです。電力というのは流れる電流によって発熱する限界を表わしています。通常は、そのワット数の半分以下で使います。

 半固定抵抗のVR1は502と書かれています。VRはVariable Resistor の省略形です。値は50×(10×10)=5000=5kΩです。多回転型ですから電圧を細かく合わせれます。最小値から最大値まで約20回まわります。両端にストッパはないので、いつまでも回せます。とても不便です。普通の半固定抵抗は約300度で、1回転しません。

◆主な部品…LED
  LEDはφ5という直径5mmの砲弾型で、型番などは書かれていません。リード線は、2本あって、長さが異なります。長いほうをアノードと呼びます。光らせないときの色と電源をつないで光る時の色は異なることがあります。

◆主な部品…F1

 黄土色したポリスイッチのRXEF025の表面はX25と書かれているのが読めます。これは、耐圧は60Vで、250mA以上の電流が流れると急に高い抵抗値になり、結果的に電流をほとんど流さないという特性のデバイスです。

◆主な部品…H1

 小さな黒色の放熱器とICを止めるプラスチックねじが1本入っていますが、通常使うシリコン・グリス(もしくはシート)は入っていません。放熱器とICはそのままネジ止めしてもかまわないですが、表面がでこぼこしていると、熱を伝えにくい空気がはさまり熱が伝わりにくいので、シリコン・グリスを塗ります。シリコン・グリスは別途購入します。

◆その他

 キットには、専用のプリント基板が入っています。

 部品はなくさないように、袋から取り出したら、空き箱のふたもしくは浅いトレイに入れておきます。

●抵抗は色の帯なので、テスタで測っておく
 色の読み方を覚えている人はよいのですが、読みづらい人はテスタで値を確認して、写真2のようにメモしておきます。

写真2 テスタで測った値を書きとめておく

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コラム1 部品の外観

回路図が読めなくても作れるが
 回路図に書かれている部品と実物を一致させておくと、確実に作業ができます。もちろん、専用のプリント基板が用意されているので、その表面に印刷されたシルク文字や記号を見ながら部品を挿して、はんだ付けをしていけるので、回路図が読めなくてもOKです。

●プリント基板にはたくさんの情報がある
◆スルーホールという部品のリード線を挿しこむ「穴」
 プリント基板は、両面に薄い銅箔の配線パターンがあります。部品を載せる面を表面、反対側が裏面もしくははんだ面と呼びます。部品を挿す穴は、表面と裏面はスルーホールというメッキ加工で電気的につながっています。部品が挿さらない穴で両面が電気的につながっているところが数か所ありますが、これはビアと呼ばれます。
◆すずと鉛の合金がはんだ
 はんだ付けする穴の周辺をランドと呼びますが、このプリント基板でははんだ仕上げになっています。はんだ仕上げとは、ランドの部分にはんだでおおわれている状態を言います。電子工作用は通常鉛入りはんだが使われています。量産される産業用のプリント基板は通常RoHS対応はんだ(鉛フリーと呼ばれることが多い)が使われます。こちらは鉛を含みません。どちらもすずが主成分です。鉛フリーは、鉛入りはんだより溶ける温度が30度以上高いので、はんだ付けしずらい傾向があります。
 はんだ仕上げ以外には、

  • フラックス仕上げ…時間がたつと銅の面が露出するので、製造後は早めにはんだ付けするほうがよい
  • 金フラッシュ…金メッキより金の使用量が少ないが参加しない金で保護されている。見た目がきれい。

などがよく使われます。
◆緑色はレジスト
 はんだ付けする以外の部分はレジスト(ソルダーレジスト)で覆われています。レジストは、溶けたはんだが余計な部分に流れないように塗布された保護膜です。このプリント基板では緑色をしていますが、黒や赤色など256色ぐらいが使えます。白と黒色の場合、銅線の配線が透けて見えにくいので、電子工作では緑色が適しています。
◆情報満載のシルク印刷
 文字などが書かれているのはシルク印刷と呼ばれます。電解コンデンサなどのように極性(プラス・マイナス)がある場合、間違って差し込まないようにとか、コネクタの1番ピンをわかるように印がつけてあります。
◆ガラス・エポキシは高級素材
 このプリント基板の素材はガラス・エポキシ(ガラエポ、FR4とも呼ばれる)です。一番一般的ですが、高級素材です。ガラスの短い繊維もしくは粉をエポキシで固めたCEM3(セム・スリー)が電子工作ではリーズナブルで性能もよいです。数十年前まではベークライトという茶色の基板が一般的でしたが、最近では少なくなりました。電子工作には安価な素材でしたが、何年か経つとそる(変形)という欠点があります。
 これら板の両面にはもともと銅箔が張ってあって、不要なところをエッチングという工程で溶かします。

●個別の部品
 部品の写真と特徴を写真Aに示します。


写真A 個別の部品

(a) 抵抗

 電流を妨げるもので、電子工作にはカーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)と金属皮膜抵抗が使われる。本キットにも両方が使われている。

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(b) 半固定抵抗(縦型多回転)

 一般の半固定抵抗は300度ぐらい回転し、最小値から最大値に抵抗値が変化する。

 20回転ぐらいする多回転型は、精密に抵抗値を変化させられる。本キットでは、電圧を変えるときに使われる。

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(c) 積層セラミック・コンデンサ

 電子工作ではセラミック・コンデンサと電解コンデンサがよく使われる。積層セラミック・コンデンサはたいへん形状が小さいのが特徴。

 コンデンサの値は表面に印刷されている。これは104と書かれている。

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(c) コンデンサ

 アルミ電解コンデンサ。極性がある。白い帯はマイナス端子の目印。リード線(足ともいう)の長いほうがプラス。

 電解コンデンサには「タンタル」と呼ばれる種類があるが、電子工作ではほとんど使われない。

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(d) ヘッダ・ピン

(ピンヘッダ)

 なにかをつなぎたい部分、ショートしたり切り離したいときに使われる。一つとか二つずつ切り離して使うことが多い。1列タイプと2列タイプがよく使われる。

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(e) 発光ダイオード(LED。エル・イー・ディー。レッドとは呼ばない)

 Anode(アノード)が電圧の高い(プラス側)ほうにつながる。

 赤色が入っていたが、別の色が入っているかもしれない。赤色、緑色、だいだい色、青色、白色などがよく使われる。

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(f) ポリスイッチ(RXEF025 仕様は250mA)

 出力をショートしたときに電流が流れすぎてICなどが壊れるのを防ぐために使われる。通常はこのためにヒューズを使うが、一度電流が流れすぎると切れてしまうので、新品と交換しないといけない。

 このポリスイッチは電流が規定より流れるとデバイス内部の温度が上昇するので、抵抗値が増大して回路に流れる電流をほぼゼロにする。出力のショートが解除され電流が少なくなるか、電源スイッチをOFFにしてデバイスが冷えると、元の抵抗値に復帰するので、取り換える必要はない。

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(g) 可変レギュレータIC(NJM2397)

 入力電圧が変化しても、出力電圧の変化に対しても、一定の出力電圧を保つことができる機能をもったIC。ここで使われるNJM2397は出力電圧を可変できる。最大1.5Aとデータシートに書かれているが、これは、無限大(限りなく大きな)の放熱器を付けた場合。本キットに付属する放熱器は小さめなので、長時間1.5Aの電流を流すことは現実にはできない。

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(h) 放熱器

 ICから出る熱を空気中に効率よく逃すために使われる。効率を上げるには、面積が広いほうがよいので、ひだがたくさんついている。

 アルミニウム製。熱を伝えやすさを表わす熱伝導率は銅のほうが優れているが、アルミのほうが安いし、加工性がよいので、よく使われる。

 可変レギュレータICは入力と出力電圧の差に流れる電流分をかけ合わせた電力が熱になる。発熱によってICの温度が上がる。ICは150℃まで耐えられるが、それ以上になると破壊する。なので、この温度を効率よく空気中に伝えてICの温度が上昇するのを抑える目的で、アルミ製の放熱器が使われる。

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(i) トグル・スイッチ

 電源のON/OFFに使われる。二つの状態(ONとOFF)が交互に入れ替わる機構をトグルという。

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(j) USBコネクタ(B メス)

USBコネクタは+5V、GND(グラウンド)の電源と、D-とD+の信号の4本で構成されている。

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(k) プラネジ(φ3)

プラスチックのネジ。M3つまり直径3mmのネジが1本入っていて、放熱器とICを固定する。

力強く締めると、ネジ山が潰れる。適度にネジ止めするのは、何回か経験して慣れるのが一番。


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連載メニュー キットの製作 USBを電源にした可変電源

(1) 電源電圧を変化させられると実験に便利

(2) 回路図を読もう

(3) キットの組み立て

(4) 動作確認

(5) もし実験中にショートしたとき