最新ラズパイ・ゼロと真空管アンプでハイエンド・オーディオを その3 はんだ付け完了

■プリント基板のはんだ付けを全部終える

 前回、抵抗のはんだ付けを1本残して終わりました。4ページの「2」から始めます。

 その前に、抵抗が正しい場所にはんだ付けされているかを回路図と見比べてチェックします。Rxxxと抵抗の値が確認できたら、回路図にマーカ・ペンでチェックをします。このとき、抵抗の右側が金色で添えられていると、読み取りやすいです。ここまでしつこくチェックしていると、赤色が2、黒色は0、茶色は1ということを覚えてしまいます。

 覚えると、自分は絶対に間違っていないと思って適当にチェックしているとき、あれっ、と、正しくない抵抗値がはんだ付けされているのに気が付いたりします。



「2」ツェナ・ダイオード

 フェアチャイルドの12V、500 mWの定電圧ダイオードBZX79C12です。通常は基準電圧源として利用しますが、ここでは電圧シフトに用いているようです。AはAnode(アノード)、KはCathode(カソード)の頭文字です。Kの方向に印がついています。型番は出荷時期によって同等品が入っているかもしれません。

「3」ダイオード

 HY Electronicの2A、1000Vのファースト・リカバリ整流ダイオードHER208です。高圧、低圧のどちらの整流回路にも同じものが使われています。整流以外に、回路保護用などにも利用されています。AはAnode(アノード)、KはCathode(カソード)の頭文字です。Kの方向に印がついています。

「4」ICソケット

 板バネ・タイプのソケットです。丸ピン・タイプも市販されています。丸ピン・タイプは、プリント基板に挿し込んでもするっと抜けますが、付属のソケットは、きっちりと挿し込めます。端の一つのピン(写真では8番)をはんだ付けしたら、ソケットがプリント基板から浮いていないかを確認したのち、8ピン全部をはんだ付けします。

 表側には、1番ピンを示す印があります。

 裏面のパターンも、1番ピンのランドの形状は四角形をしているので判断できます。

「5」IC 4580D

 2個入り汎用OPアンプです。4580Dはオーディオ用として販売されていますが、ノイズが少なく精度が高いOPアンプは、ほかにもたくさんあります。2個入りの8ピン・パッケージはよく使われるので、差し替えができます。

 ヘッドホン・アンプではOPアンプの差し替えはよく行われます。そして、音が変わったというレポートがたくさんあります。大半のOPアンプは、負荷に600Ωもしくはそれ以上がつながったときに、データシートに書かれた正常な性能が出ます。30Ωぐらいのヘッドホンを駆動するには負荷インピーダンスが低すぎてスペック外なので、ひずみ率などがどんなに悪くなるかわかりません。

 この真空管アンプでは、初段に使われ、それも増幅率も低いので、差し替えても音の差はほとんどわからないかもしれません。信号レベルが約1Vrmsと高い部分の増幅なので、ノイズの性能差も出ません。

 けれど、OPアンプは数百円と安価なので、挿し替えて音の変化を聴くのも楽しいです。

「6」4極ミニジャック

 信号入力用です。スマホなどのオーディオ出力は0.9Vrms程度で、CDプレーヤの3Vrmsに比べて低いです。この真空管アンプでは、このミニジャックから信号を入れるとき、増幅率が高くなります。

 はんだ付けは、まず、写真のように一つのピンをはんだ付けし、ゆがみがないかを確認したのち、残り全部をはんだ付けします。

「7」FET 10N60Z

 電源のリプル・フィルタ用のNチャネル・パワーMOS FETです。耐圧600V、10Aです。真空管の高圧回路では直流が必要です。電源トランスを整流用ダイオードでプラス側だけの電圧を取り出します。コンデンサをつなぐと脈流になります。50(60)Hzの充放電に合わせて電圧が変動します。変動する部分をリプルと呼びます。この真空管アンプのようにシングルでは、この電圧の動きはハムと呼ばれるノイズを出します。スピーカに耳を近づけるとブーンという音が聞こえます。

 通常脈流は、フィルタ回路でリプル部分を減少させますが、周波数が低いので、コンデンサは大容量が必要です。フィルタの回路に抵抗を用いる場合では発熱するので、大きなW数タイプが必要です。ホーロー抵抗とかセメント抵抗を使います。抵抗を入れると、電圧が下がります。チョーク・コイルを入れると、電圧はさほど下がりませんが、高価です。

 スマホの充電装置はさいころのように小さくなりました。AC100Vを直接ブリッジ・ダイオードで整流します。そのあとMOSFETでスイッチングするためには、耐圧が600Vは必要です。このような用途が増えたので、高耐圧FETは安価になりました。

 FETを用いたリプル・フィルタのリプル除去能力は大変高性能です。



 タッピングねじで留めるので、裏側にはねじ先が飛び出ています。

「8」PCBターミナル

 PCBはPoly Chlorinated Biphenyl{ポリ塩化ビフェニル)ではありません。Printed Circuit Boardの省略形で、FR4というガラス繊維混入のプリント基板です。FR4は、強度や高周波特性などに優れた素材で、電子機器の主流です。

 フロントに使われるUNIT-5の強度を得るためのねじ止め端子です。フロント面と平行になるようにはんだ付けします。

「9」ピンソケット(8ピン)

 青色でした。真空管のユニットを受ける部分です。ここまでと同じく、最初は一つのピンだけをはんだ付けし、傾いていないかを確認したのち、残りのピンもはんだ付けします。

「10」コネクタ

 電源トランスのリード線をつなぐ2ピンと3ピンのコネクタです。取り付ける向きがありますが、裏面に突起があるので、間違えないです。

「11」ボリューム(2連)

 音量を可変するために、アンプのトップに入る減衰器です。アンプは増幅をするためにたくさんのパーツを使って増幅回路を組みますが、減衰は、このボリューム一つで行います。したがって、音質に大きくかかわるパーツです。

 2連というのは、ステレオなので左右を同じ軸で減衰量を変えられるという意味です。特に回し初めで、二つの抵抗値がずれることがあります。ギャング・エラーといいます。最近の製品は減少しています。

「12」3極標準ジャック

 ヘッドホンを接続する端子の最も一般的なコネクタです。グランドが共通で、右と左の信号で3極の接点があります。ジャックを挿し込むと、スピーカへの接続が切れる構造です。

 ポータブル・アンプの分野では左右のグラウンドを別々にヘッドホンの振動ユニットまで配線できるように4極タイプが出ていますが、標準化はされていません。

「13」ピンジャック(RCAジャック)

 RCAというのはアメリカの会社名で、Radio Corporation of Americaの省略形です。テレビも作っていました。液晶の表示器を発明した会社でもあります。非バランス信号の接続では一般的なコネクタです。習慣的に、右(R)入力は赤色、左(L)入力は白色が使われます。

「14」フィルム・コンデンサ

 電源回路では電解コンデンサが使われます。オーディオ信号が直接通る場所では、フィルム・コンデンサが使われます。フィルムの種類によって細かな分類があります。

 フィルムは、容量が大きくなるものほど長いものを巻き取るので、形状が大きくなります。大きくなると、振動の影響を受けやすくなります。隙間にオイルをしみこませたオイル・コンデンサを使うと、固有の振動を受けにくくなるなどの効果があります。また耐圧が高いほど、音がクリアになるといわれています。プリント基板では、C103とC203の0.1uF(写真の緑色)を実装する場所は、大型のコンデンサを実装できるようにスペースがとってあります。

 ここまでこだわるのは、音質に影響があるのかもしれません。コンデンサを交換しても、何も変わらないかもしれません。

 0.1uFを取り換えてもよいですし、0.047uFや0.1uFなどのオイル・コンデンサを追加してもよいでしょう。追加して容量が増えると、R110、R210のグリッド・リーク抵抗との組み合わせで形成するローパス・フィルタのカットオフ周波数が下がるので、低音が通過しやすくなります。聴感上、低音が増強されるかどうかは、聞いて確かめてください。

「15」PTC

 FETを使ったリプル・フィルタは、出力をショートすると大きな電流が流れます。それを防ぐのがPTCで、Positive Temperature Coefficientの省略形です。通常数Ωの抵抗をもちますが、電流が規定以上、ここで120mAを超えると、抵抗値が急に増え、電流を抑制します。出力のショート状態が解除されると、PTCは普通の抵抗値に戻ります。リセッタブル・ヒューズとも呼ばれます。

 PTCは、AC100Vの1次側にももう一つ使っています(写真右)。

「16」電解コンデンサ

 容量が必要なところ、例えば、電源回路に使われるのが電解コンデンサです。電子部品の中では寿命が短いのが最大の欠点です。代わるものが、今のところありません。

 極性があります。プラスは、リード線が長いほうということで判別できます。マイナスは短いほうですが、切ってしまうとわからなくなります。本体に、半月状もしくは帯の表示で、マイナス側がわかるように作られています。

 プリント基板も、半月状のマークが描かれていますが、取り付けてしまうと、自分自身に隠れて確認ができないときがあります。プリント基板の上では、電解コンデンサのマイナス側がすべて同じ向きになっているわけではありません。なので、挿し込むときにマイナス側を確認し、はんだ付けが終わった後も、マイナスのリード線が回路のマイナス側に正しく挿し込まれたかを確認します。

 そのために、白色のマーカで、マイナス側に印をつけました。突起のように見えるのが追加したマーキングです。

 はんだ付け後の様子です。確認が容易です。

「17」出力トランス

 真空管の内部抵抗は5kΩぐらいです。スピーカは8Ωぐらいです。このインピーダンスの違いを変換し電力をスピーカに送り込むのが出力トランスの役目です。6AQ5は5極管のときと3極管結合時には、インピーダンスが異なります。スピーカも、現代の標準は4Ωです。したがって、変換比は目安にすぎません。

 真空管アンプでは、このキットのようにシングルと、出力を大きく取りたいときに使われるプッシュ・プル回路があります。シングルでは、出力トランスに直流が流れます。トランスは、交流を流すものです。したがって、直流を流すために、EIコアにギャップ(隙間)を設けます。すると、インダクタンスは減り、低域まで通せなくなります。

 真空管アンプでは、出力トランスが音のすべてを決めるという人もいます。トランス・メーカは、低い周波数(数Hz)から高い周波数(20kHz以上)までをフラットに変換できるよう、いろいろな工夫をして製作しています。

「18」スピーカ・ターミナル

 大型のターミナルなので、太いスピーカ・ケーブルも取り付けやすいです。ただし、ねじは時間がたつと緩むので、半年に1回は緩んでいないかを確かめましょう。

 はんだ付けする端子は大きいので、はんだゴテは寝かして、熱をしっかり伝えるようにし、時間は5秒くらいまで伸ばしたほうが、はんだが流れやすいでしょう。


「19」抵抗

 最後の1本です。UNIT-1のMT-9ピンのボードに取り付けます。


「20」連結ピンヘッダ
「21」真空管ソケット(MT管9ピン)
「22」真空管ソケット(MT管7ピン)
「23」真空管ソケット(GT管8ピン)
「24」LED(発光ダイオード)

 写真のように、ソケットはA面に取り付けます。取扱説明書にどちらの面に取り付けるかは書かれていません。A面に取り付けた様子は、13ページの右下の図に載っていました。

 


「25」コネクタ(ボックス型VHコネクタ7ピン)

 AC100Vのセレクト用のコネクタです。UNIT-9のB面に取り付けます。


「26」スパーク・キラー

 インダクタ(電源トランス)に急に電流を流したとき大きなエネルギーの逆起電力が発生します。ACスイッチをONにした時、接点間でアークが飛びます。これらを抑制する目的で入れます。UNIT-9のB面に取り付けます。


「27」PTC 240L055(角形)

 AC100Vの1次側に入れるリセッタブル・ヒューズです。UNIT-9のB面に取り付けます。ガラス管のヒューズは使いません。


「28」ACインレット

 小さな電力を扱うときに使うメガネ型をしたACケーブルのソケットです。UNIT-9のA面に取り付けます。




「29」トグル・スイッチ

 電源スイッチです。UNIT-9のA面に取り付けます。

 ここまでのはんだ付けが終わったUNIT-1のMAIN UNITです。