最新ラズパイ・ゼロと真空管アンプでハイエンド・オーディオを その1 準備

ハイエンド・オーディオとは

 直訳すると高級オーディオ装置のことです。年の初めにアメリカのラスベガスで開催されるCESという世界規模の電気・電子機器ショーがあります。2017年は自動運転がテーマの展示が多く自動車ショーみたいだったとニュースでは伝えられました。日本ではニュースになりませんが、近くのホテルでは、アンプやスピーカが1台300万円を超えるオーディオ機器を展示するプライベート・ショーが行われているそうです。このような機器をハイエンド・オーディオと呼びます。

 でも、生演奏をこれらの機器で聞いているわけではなく、2000円で購入したCDやLPレコードを聴きます。

 1990年のバブルがはじけた日本では、ハイエンド・オーディオは下火になりました。そのあとにブームになったのは、次のカテゴリです。

  • ハイエンド・ヘッドホンとポータブル・アンプ
  • アナログ・レコードと真空管アンプ
  • ハイレゾ音源

ラズパイ・ゼロでハイレゾを聴く

 ラズパイにはUSBがあるので、USB-DACという数千円からハイエンドの数百万円のD-Aコンバータがつながります。しかし、ハードウェアの問題で、ノイズが混じります。

 ラズパイには、GPIOというCPUの信号を外部に出すためのI/Oポートがあり、I2Sというディジタル音楽信号を出力できます。実は、これがとても、とてもよい音楽が聴けるのです。ハイエンド・オーディオの音に迫ると言われています。

 本連載では二つのステップで再生装置を作ります。最初のステップでは約1万円の費用がかかります。次のステップでは2万円ほどかかります。

真空管アンプが手ごろな価格で組み立てられる

 現在でも、ギター・アンプは真空管を使っている機器が主流です。真空管はブラウン管テレビの時代に全盛を迎え、その後大量の在庫を残したまま終焉を迎えました。ギター・アンプ用の真空管は、現在でも製造されています。

 キットなら、はんだ付けが初めてでも組み立てられます。キットでは定評のあるエレキットの最新モデルのTU-8150SVを入手します。そのほかにもキットを販売している会社はたくさんあります。下記は、その一部です。

 最近のスピーカは小さくすることが必須であるため、空気を揺らすコーン紙の動きは激しくなります。真空管が普通だった時代のスピーカは90dBを超える効率の良い製品が一般的でした。今は80dB台と低くなっているため、同じ音量を出すには10倍の出力が必要です。

 真空管アンプを聞いた人は、暖かい音とかアナログの音がするといいます。真空管しかなかった時代の真空管アンプは、しっかり普通の音が出ていました。今でもそうです。真空管アンプの時代に、スピーカが完成の域に達しました。一般にスピーカのインピーダンスは8Ωです。真空管にもよりますが、多くは数Ωの出力インピーダンスなので、アンプの出力は無駄なくスピーカに届けられます。

 ディジタル・アンプやトランジスタ・アンプの出力インピーダンスはすごく低いため、ミス・マッチングを起こします。したがって、ケーブルが長いと、反射が返ってきて特定な周波数が持ち上がったりするため、ケーブルの交換を頻繁にしているオーディオ・マニアがいるようです。

音を奏でるのはスピーカ

 最終的な音の良さを決めるのはスピーカだといわれています。しかし、ラズパイ音源で音を出すと、びっくりするほど、リアルに聞こえます。お試しください。

電子工作に通じる

 ラズパイでハイレゾを再生するとき、市販のハードウェアを組み合わせるだけで動作します。はんだ付けができると、長めのジャンパ線を短く作り替えるなど、いろいろな工夫が苦にならずこなせるようになります。

 真空管アンプ・キットTU-8150SVでは、たくさんの部品をはんだ付けをします。はんだ付けの練習にもなります。できあがって、どういう音が出ても、自分で作ったアンプはよい音がします。

 真空管アンプは部品の数量が多く、重たいので、現代のディジタル・アンプに比べて高価です。しかし、作りがいがあります。ラズパイ音源より費用がかかりますが、ぜひ、チャレンジしてみてください。

弘法も筆を選ぶ

 はんだゴテ、ニッパ、ラジオ・ペンチはよいものを用意します。とくにはんだゴテは、温度調節ができる日本製を使ってください。電子部品の多くは中国製ですが、工具類はまだ日本製のほうが品質が良いです。

 問題は、「はんだ」です。一つは材質です。団塊の世代は、はんだは何でできていますかと聞かれると、「スズ」と「鉛」と答えます。しかし現代は、「スズ」と「亜鉛」が正しいかもしれません。産業用はすべて「無鉛はんだ」になっています。

 もう一つ。団塊の世代の多くは、はんだ付けをするときにペーストを使っていました。これは電子部品を痛めます。はんだの中に同等の機能をもつフラックスが入っているので、ペーストは不要です。

 電子工作では無鉛はんだはあまり使いません。太さにはいろいろありますが、0.6もしくは0.8mmΦが細かな作業に適しています。真空管ソケットのように面積が広い部分には1.0mmもしくは1.2mmΦが適しています。

 さらに、オーディオ用はんだという製品がありますが、使いません。

 ホームセンタでは、温度調節(温調)はんだゴテはおいていないかもしれません。アマゾンなどで購入できます。ホームセンタでは、スズと鉛が60%:40%もしくは共晶はんだと書かれた製品を購入します。太さは1種類だけなら1.0mmもしくは0.8mmΦにします。さらに、はんだコテ台も必須です。やけどや火事を起こさないための出費です。

 紙やすり#240(少し荒い)から#400(細かい)を1枚購入します。百円ショップのほうが割安かもしれません。

 はんだ付けは、金属の何でもはつけられません。アルミニウムやジュラルミンはダメです。ステンレス・スチールもダメです。ホームセンタではそれら専用のはんだが売られています。普通の電子工作では、鉄、銅、金、銀、真鍮の間ではんだ付けします。

 電力容量によってはんだ付けが完了できないものがあります。30Wは電子工作にぴったりです。温調の50Wも最適です。しかし、0.5mm厚の銅板ははんだが流れません。熱がどんどん銅板に伝わり、はんだが溶けるほど温度が上がりません。プリント基板の銅板は0.03mm厚程度なので30WでもOKです。でも、50Wの温調はんだゴテのほうがうまく温度が適正に上がります。

 それでも、大きな部品をはんだ付けするときは、コテ先を寝かせ、広い面積から熱を伝える工夫が必要です。

 部品を挿入する穴は、多くはスルーホール加工がおこなわれています。穴の内側にメッキが施され、電気的に導通しています。スルーホールのプリント基板は、はんだ付けのやり直しがむずかしいです。部品をはんだ付けするプリント基板は、表と裏に銅箔の配線があります。両面基板と呼びます。数十年前は片方の面にしか銅箔があった片面基板が全盛でしたが、現在は、両面タイプしかありません。両面を重ねて、スマホでは8層とか10層のプリント基板が使われています。

 今回利用するキットではほとんどの部品取り付け部分がスルーホールになっていないので、もし、チェック時に挿入ミスがわかったときも、落ち着いて作業をするとリカバリできます。

 はんだゴテは、プラスチックの柄の部分を持ちます。よく女性がはんだゴテを持っている写真や漫画がありますが、多くはヒータの入っているやけどをしてしまう金属部分を握っています。

 はんだ付けする際には、ゴミが出ます。それらを散乱させると、足の裏に刺さったりするので、整理整頓します。プリンの空き缶やジャムのふたなどを用意して、ゴミが出るとその中に入れます。

 全体の構成を示します。