最新ラズパイ・ゼロと真空管アンプでハイエンド・オーディオを その8 Volumioのインストール準備

ハードとソフトの選択肢

 USB規格を満たしていれば、PCのキーボード接続からハードディスクまであらゆる周辺機器がつながります。最新のUSB規格ではディスプレイもサポートされています。小型のマイコン・ボードもUSBがサポートされています。ドライバがあれば、USB-DACがつなげられ、オーディオ用に使えます。

 「DAC=D-Aコンバータ」の入力インターフェースはI2Sという規格が一般的で、ディジタル・データとしてポピュラなPCM信号を入力します。DSD用の入力端子をもつD-Aコンバータもあります。通常は、CDやDVDプレーヤの中で使われ、光ピックアップから読み取られたデータが、信号処理デバイスをとおしてこのD-Aコンバータに入力されます。

 このD-AコンバータはUSB-DACでも使われます。USBケーブルを通して送られるアイソクロナス方式の信号は、USB処理用のデバイスが受け取り、D-AコンバータにI2S信号で受け渡します。アイソクロナスは音のデータを送る専用の方式で、エラーがあっても再送しません。

 ラズパイにもUSBインターフェースがあり、USB-DACをつなぐと、ほとんどの機器で自動認識され、オーディオ出力に使えます。しかし、ノイズが載ることがあったので、I2S信号がGPIOピンを通じて出力できるようになりました。いろいろなデバイスやケーブルを信号を通ることないのが理由の一つで、I2Sへ直接オーディオ用信号を伝達するGPIOは、高音質のオーディオ出力ができるといわれました。

 ラズパイでI2S経由で音楽を聴くには、次のソフトウェアが利用できます。

 Volumioでは、つぎのハードウェアがサポートされています。

  • ラズパイ
  • 普通の PC/AT
  • シングル・マイコン・ボードOdroid 
  • シングル・マイコン・ボードSparky
  • シングル・マイコン・ボードBeagleBone Black
  • シングル・マイコン・ボードPine64
  • シングル・マイコン・ボードUDOO
  • 小型マイコンCubox-i

 今回は、最小のマイコン・ボードであるラズパイ・ゼロに、実績のあるVolumioをインストールします。ラズパイ・ゼロで能力的に無理だと判断すれば、そのままラズパイ3(Raspberry Pi 3 Model B)に変更します。

インストールするための準備

 ラズパイ・ゼロには3種類ありますが、2017年に入るまで日本国内では販売されていませんでした。最初、2015年に販売が開始された5ドル Raspberry pi Zero Ver1.2は、イギリスやアメリカの販売店からでしか購入できず、国内販売は、次の2種類から始まりました。ゼロWはWi-Fiを搭載していますが、2017年4月現在、技適の番号の公示はありません。

  • 5ドル Raspberry Pi Zero Ver1.3
  • 10ドル Raspberry Pi Zero W Ver1.1

 したがって、今現在だったら5ドル Raspberry Pi Zero Ver1.3を使うことになります。

 入手性の良いラズパイ3は、現在製造国によって3種類ありますが、まったく同じだと思われるので、どれを購入しても問題ないでしょう。この連載はラズパイ・ゼロを使いますが、ラズパイ3も同時に購入しておくと安心です。

必要なのはネットワーク・インターフェースとマイクロSDメモリ

 Volumioは、音楽専用のサーバOSなので、それ自体で再生させたい曲を選ぶなどはしません。通常、ほかのコンピュータやスマホのWebブラウザを使います。

 再生する曲のデータは、次のいずれかの場所に用意します。ハイレゾ・データは大きいので、テスト時はNASなどに数曲用意しておきます。ファイルのフォーマットはwav以外にもflacなどもサポートしています。USBメモリはFATもしくはFAT32の一般的なフォーマットです。

  • NAS(ファイル・サーバ)
  • USBメモリ、USB-SSD
  • インストールしたSDメモリ内(Volumio自体がファイル・サーバになるので)
  • インターネット・ラジオ

 どの場所に置いておけば、いちばん音がよいかはやってみないとわかりません。有線LANであればハイレゾの192kHz/24ビットまでNAS経由でも音切れはありません。ラズパイ3のWi-Fiでは96kHz/24ビットまではNAS経由でも音切れはありません。192kHzではときどき雑音が入ります。

 ラズパイで使えるWi-Fiは利用できるドングルが限られており、111.acなどの高速転送の規格に対応した製品で使えるのはなさそうです。

 ラズパイ・ゼロ用有線LANでは、PLANEX のUSB-LAN100RもしくはUSB-LAN1000Rはつなぐだけで、ドライバのインストールは不要です。USB-LAN1000Rはラズパイ3の内蔵LANより転送速度は高いです。

 マイクロSDメモリはClass10以上の高速版が必要です。現時点で、低速なclass4はほとんど市販されていません。Class10にはより高速なバージョン(速度指標UHS)がいくつもありますが、ラズパイはそれらの高速読み書きに対応していません。なので、Class10の8GBもしくは16GBが最初に試すときにはお勧めです。アマゾンなどではにせものが多いので、レビューを読んで正常な製品を入手してください。とくに、正規品と偽物を混在している業者は避けます。

インストール直前 ダウンロード

 Volumioをここからダウンロードします。特にVolumio2という表現はしないのですが、前のバージョン1.55から大きく変更されたのが現行バージョンです。ハードのサポートが増えるにしたがって細かなバージョンがどんどん上がっています。それに伴いバグも増えるので、トラブルは少なくありません。自分の環境にとって安定なバージョンがあれば、それを使い続けるようにします。

 また、動作中のVolumioの中からバージョンアップする機能がありますが、正常にアップデートできないこともあるので、ダウンロードしたファイルは3世代ぐらいPCに残しておくようにします。

 ラズパイのRASPBIAN JESSIE WITH PIXELでは、利用者がapt-get updateとupgradeを使ってOSを最新状態にします。Volumioでもsshでログインして可能ですが、それはしません。Volumioではライブラリ類の更新はVolumio側に任せます。VolumioはRASPBIANと同じく、Linuxの中のDebian系のOSです。

 ダウンロードしたimgファイルは、

  • WindowsではWin32 Disk Imager
  • Macではetcher

を使ってマイクロSDメモリに書き込みます。こちらの記事も参照してください。

 http://volumio.org/ へ行き、上部にあるDOWNLOADをクリックします。

 ダウンロードしたファイルはzipファイルなので、クリックすると解凍画面が出ます。

 imgファイルをデスクトップにドラッグします。

 マイクロSDメモリをリーダ・ライタに挿し込みます。

 Win32 Disk Imagerを立ち上げ、ドライブがマイクロSDメモリであることを確認し、書き込むimgファイルを開きます。Writeをクリックすして書き込みます。

 書き込みが終了したら、Exitをクリックしたのち、マイクロSDメモリをリーダ・ライタから取り出し、ラズパイ・ゼロのSDメモリ・スロットに挿し込みます。

I2S-DACボードを用意

 最初、Volumioをインストールして音出しをするために、I2S-DACを用意します。大きく分けてテスト用にお勧めなのは次の2種類のボードです。

  • ES9023搭載
  • PCM5102搭載

 ebayであれば二千円前後です。ラズパイのGPIOに直接挿し込むタイプは、配線が不要です。

 ebayで買い物をするときは、paypalという支払方法を選びます。paypalという業者にはクレジット・カードで支払いをするので、何かトラブルがあっても、支払いをストップする手続きができます。ebay自体で保証制度がありますが、英語なのでよくわかりません。問い合わせは電話だったりするのでハードルは高そうです。

 paypalの住所登録は英語にします。

 最初の完成形ではリクロッカKALIを併用するので、同時に購入しておくとよいでしょう。KALIのDCジャックは、日本国内で流通している内径2.1mmΦではなく2.5mmΦと太いです。変換プラグも市販されていますが、心配だったら、KALI用のAC-DCアダプタも購入します。

   https://volumio.org/shop/

※PCM5122で水晶発振モジュールを搭載したモデルBOSSなどはKALIと併用できません。

※上記の写真では別途必要なMCLKの配線を行っていません。

 完成形の2番目のモデルは、旭化成エレクトロニクスのAKシリーズ、ESS社のES9038PROなどを利用できるように実験をしています。これらのハイエンドのD-Aコンバータでは、電源を注意深く用意しなくてはなりません。

コラム LinuxのOSにも方言がある

 利用時に費用のかからないLinuxでもサポートが付く場合は有料です。たとえばCentOSは有料のRedHatとほぼ内容は同じものです。CentOSは大きめのシステムの構築向いています。ソフトのアップデートなどではyumというユーティリティを利用します。

 ソフト開発関連ではUbuntuがよく使われます。

 組み込みではDebianが使われます。

 とても小さなリソースで動くのにOpenWrtがあります。Arduino YUNなどでも使われています。