ラズパイ4用アナログ電源の製作①準備

 ラズパイ4は、製品が出たときに3Aの電流が必要だとアナウンスされました。その前のラズパイ3+は2.5Aでした。5Vなので、5 × 3 = 15Wという電力です。充電器などでも25Wクラスは普通に市販されているので、大きな電力でないかもしれません。

簡単な電源

 ラズパイに限らず、常に消費する電力は変化します。電源の元(ソース)は内部抵抗をもっているので、ラズパイの消費する電流によって、電圧が変わってしまいます。そこで、常に5Vを出力できる定電圧電源が必要になります。
 Liポリマなどの電池は内部抵抗が極端に低いので、負荷の電流が変わってもそれほど電圧は変化しません。しかし、電圧が3.6~3.7Vなので、そのままラズパイにつないで使えません。

 よく説明に出てくる安定化電源はツェナー・ダイオードD1を使った回路です。ツェナー・ダイオードにR1経由で数mAの電流を流すと、ラズパイの負荷に数mAの安定した電圧を供給できます。ラズパイは通常使用時400500mA流れるので、この回路では、十分な電流を供給できません。

(参考)ラズパイ4の消費電流を測る

 中型から大型のNPNトランジスタのエミッタ・フォロワをつけて、ラズパイへの電流供給を増やした回路です。

 半導体は温度係数をもちます。ツェナー・ダイオードでいえば、温度が変化すると、電圧が変化します。5V付近のツェナー・ダイオードは温度変化であまり電圧は変わりませんが、少しだけ変化します。変化することはよくありません。

安定な基準電源

 ツェナー・ダイオードは、変化しない基準電源に使われる代表的なデバイスです。この機能を向上させたのが、バンドギャップ・リファレンス回路を用いた基準電源ICです。最も低価格でたくさん使われているのがTL431です。3端子なので、小信号用のトランジスタと同じ外観をしています。

 次の回路では、2.5Vが安定に出力されますが、ツェナー・ダイオードと同様にあまり電流が取れません。

 次の回路では、R2=R3で5Vが安定に出力されますが、ツェナー・ダイオードと同様にあまり電流が取れません。

 ツェナー・ダイオードと同様にトランジスタのエミッタ・フォロワを取り付けて、大きめの電流を取り出せるようにします。実験すると、約0.7Aを超えると、5Vの電圧が低下し、安定化電源ではなくなりました。これは、トランジスタの電流増幅率hFEが足りず、電流を取り出せないからです。

 次の回路は、トランジスタをダーリントン接続にし、hFEを増加させます。それぞれのトランジスタのhFEが、

  • Tr1 200
  • Tr2 100

であれば、合成されたhFEは、

   200 * 100 =20000

ととても大きくなり、負荷にたくさんの電流を流せるようになります。ここから実験をスタートさせます。

 R1はTL431のカーソード電流を流す量を決めます。1~10mAが望ましいです。
 D1は、1次側の電源がOFFになったとき、2次側の電圧が残っていたときにトランジスタが壊れるのを防ぎます。
 Tr1は手持ちのパワー・トランジスタです。10Aぐらい電流が流せるのであれば、NPNトランジスタであれば何でもかまいません。
 Tr2は、日本では一般的な小信号用トランジスタです。オリジナルの東芝の製造は終わっています。
 Tr1+Tr2が一つのパッケージに入ったダーリントン・トランジスタを利用したほうが、組み立ては簡単になります。

(※)この回路は単純です。負荷の変動をフィードバックして出力電圧を一定に保つ回路はありません。