ラズパイ4用アナログ電源の製作⑦1次側の電源を用意

 今まで、実験用電源HP 6632Aを使って1次側の入力電圧を8V(無負荷時8.15V、3A時7.8V。ケーブル長40cm)にして5Vの安定化出力を得ていました。最初に、この入力電圧はもっと下げられるかを実験します。入力電圧が8Vのときは、保護回路が約3Aで働くまで出力電圧は4.95V付近を維持していました。

低い電圧<1>7.5Vで出力電流を変化

電流 [A] 0 0.3 0.5 1 1.5 2.0 2.5 2.78
出力電圧 [V] 4.96  4.96 4.95  4.95  4.94 4.93 4.5 0.6

低い電圧<2>7.0Vで出力電流を変化

電流 [A] 0 0.3 0.5 1 1.5 2.0 2.5 2.78
出力電圧 [V] 4.96  4.96 4.95  4.95  4.93 4.71 4.39 0.6

低い電圧<3>6.5Vで出力電流を変化

電流 [A] 0 0.3 0.5 1 1.5 2.0 2.5 2.78
出力電圧 [V] 4.96  4.95 4.92  4.69  4.47 4.24 3.38 0.6

低い電圧<4>6.0Vで出力電流を変化

電流 [A] 0 0.3 0.5 1 1.5 2.0 2.5 2.78
出力電圧 [V] 4.85 4.52 4.43 4.19  3.97 3.73 2.8 0.6

 これらの実験から、3A付近まで出力電流を取り出したいとき、入出力の電圧差は3V以上必要だということを確認できました。

1次側の電源は二通りある

 アナログ電源という表現を使っていましたが、世の中ではリニア・レギュレータと呼ばれます。対するはスイッチング電源です。

 古くから、リニア・レギュレータの1次側は、AC100Vをトランスで低い電圧に落とし、整流しました。ここではTOYODEN製HT123を利用します。0-6-8-10-12V(36VA)の巻き線があって、当初0-8Vの巻き線をブリッジ・ダイオードで全波整流します。
 ショットキー・ブリッジ・ダイオードで整流すると9.9Vの直流電圧が得られました。トランスの能力によって、出力電流が増えると、この電圧は下がっていきます。2.5A時に7.8Vになりました。最初の実験から、3Aの電流を取り出して安定な電圧を得るには、わずか足らない可能性があります。一瞬なら、電解コンデンサから電流が配給されてだいじょうぶかもしれないですが。
 パワー・トランジスタの発熱は増えますが、0-10Vの巻き線を使うと解決するかもしれません。

(※)短時間の実験のためにヒューズやスイッチは省略しました。

 最近ほぼすべての電源がスイッチング電源になると、その欠点であるノイズを減少させるために、

  スイッチング電源の後ろにLDOをつなげ、そのノイズ抑制効果を利用

という方法が増えています。アナログ電源でも5~15mVのノイズは出ます。スイッチング電源はそれよりはるかの高いレベルのノイズが出ます。
 LDOは入力電圧と出力電圧差が200mVぐらいと小さいリニア・レギュレータを指します。初期のころは、ノイズ抑制性能はよくありませんでした。現在、改善されています。ディスクリートで組まれた事例はほとんどありません。ICになっているデバイスがほとんどです。

 この連載で作っているのはLDOではないです。しかし同じ構成をとれます。ただし、高い周波数までノイズを抑圧できるかは、測ってみないとわかりません。

◆9もしくは12Vのスイッチング電源を1次側に使う

 こうすれば、50Hzのトランスより、軽くできます。小さくできる可能性もあります。次の写真は、アマゾンで購入した12V 4.2A(50W)です。通常±5%は電圧を可変できます。ここでは11.24Vに下げました。

スイッチング電源のノイズの観測

 スペアナTR4171を使います。入力に何もつないでいないときは、ベースラインは-160dBぐらいです。見てる周波数帯域は、100Hz~100kHzです。画面の一番上が-50dBで、1マス10dBです。
 この実験では、マーカ(MARKER)は50kHzに固定しています。

 次のように接続します。

  スイッチング電源 - 製作中のアナログ電源 - 電子負荷

 スペアナに50Ωの同軸ケーブルをつなぎます。+入力には10uFのフィルム・コンデンサで直流をカットして、スイッチング電源の出力につないでいます。出力は開放ではなく、今実験しているアナログ電源の入力に配線している状態です。
 つないだだけで15dB以上ノイズが増加しました。

 スイッチング電源をAC100Vにつなぎます。出力に11.2Vが出ています。
 いくつかの周波数にピークをもつノイズが観測できます。
 スイッチング電源では、出力を解放にしたときの出力端子、次の回路をつないだときのケーブルの先端など、測る位置によってピークの出方は異なることがあります。

 アナログ電源の出力を見ます。
 いろいろなピークはなくなりましたが、総じてノイズ・レベルが上がりました。

 電子負荷に1Aの電流を流しました。

 電子負荷に2Aの電流を流しました。

 どうも、電子負荷からのノイズを観測しているようです。

●トランス+整流電源のノイズを観測

 トランス+整流の電源の出力です。AC100Vはまだつないでいません。

 AC100Vをつなぎました。
 スイッチング電源のようなピークをもったノイズはありません。
 スイッチング電源の低いところのノイズ・レベルよりも20dBほどノイズは少ないです。

 アナログ電源の出力を見ます。
 ノイズ・レベルが上がりました。スイッチング電源のときと同じノイズ・レベルです。

 電子負荷に1Aの電流を流しました。

 電子負荷に2Aの電流を流しました。

 電子負荷ではなく7.8Ωの抵抗を負荷にしました。電子負荷のノイズは消えましたが、ノイズ・レベルは高めです。何もつながないときに比べ約50dBノイズ・フロアが上がっています。

 参考のために、基準電源IC TL431だけのノイズです。マーカの位置は異なります。

 フィルタ入りの基準電圧IC LTC6655です。

 ツェナー・ダイオードの多くは、-20から-25dBノイズ・フロアが上がります。4.7Vのツェナー・ダイオードは、次の示すように大変ノイズが小さいです。

スイッチング電源の後ろにアナログ電源をつなげばノイズ抑制

 2種類の1次側の電源を用意しましたが、製作したアナログ電源の出力のノイズ・レベルは同じになりました。スイッチング電源は、メインの発振周波数以外にも、ピークをもちます。利用する負荷によっては、悪影響を及ぼす懸念があります。