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初心者が知っておきたい放熱器の利用方法 (2)

放熱器の素材はアルミニウムでできている

 電子工作では、収納するケースにアルミニウムか樹脂(プラスチック)を使います。市販の電子機器のケースは鉄が多いです。

 入手できる放熱器はアルミ合金で作られています。代表的な素材の熱伝導率(単位:W/m/K)を次に示します。熱を伝えるには銅が一番適しているのですが、重量があり加工が大変です。建築物の窓枠がアルミニウムで作られているように、放熱器も製造コストが低いアルミニウムでできています。ヒートシンクと呼ばれます。

材料 熱伝導率 比重
空気 0.024 -
50 8
純アルミニウム 236 2.7
アルミ合金A5052 130 -
アルミ合金ADC12 100 -
403 9

 ヒートシンクは、次の2種類の製造方法で作られています。

  • アルミ押出し材(アルミニウム熱間押出成形)
  • アルミ・ダイキャスト材(鋳物)

 窓枠のアルミ・サッシは、大量生産に向いているアルミ押出し材で作られます。フラット・バーやL型アングルのかたちで市販されているので、必要量を切り取ってヒートシンクとして利用できます。

アルミニウムと銅の熱伝導度を実測する

 100×100mmの大きさのアルミニウムと銅の板を用意しました。厚みは、アルミニウムが30mmで銅が10mmです。本当は同じ大きさを用意したかったのですが、ほぼ同じ価格で入手できたという理由で、この大きさになりました。つまり、銅のほうが高価です。

 板の真ん中に2.6mmのドリルで穴をあけ、3mmのタップを立てました。タップでねじの溝を作ります。

heats2.png

 発熱体として50Ωの抵抗を用意しました。裏面をサンド・ペーパでこすって平らにし、シリコン・グリスを塗ります。シリコン・グリスは、表面の凸凹に入り込んで、空気の層をなくす役目をします。上の表で示すとおり、空気が熱を伝えにくいからです。
アルミニウム板の測定
 データロガーTR-71nwの温度センサを、抵抗の横と、アルミニウムの板の端にテープで取り付けました。室温は18.4℃です。実験用電源の電圧は22.0Vにセットして実験を始めました。

 加える電力Pは、約10Wです。

E×E / R =22*22/50 = 9.68W

heat3.png
アルミニウム板の測定結果

al-2.png

銅板の測定
 
同じく10Wの電力を加えました。

銅板の測定結果

cu3.png

 アルミニウムに比べて、熱伝導率が高い銅なのに温度が高めです。

表面積が大きいほうが放熱の効果が高い

 銅板のほうが熱伝導率は高いのに、アルミニウム板のほうが、効率よく熱を逃がしているように見えます。異なるのは、熱伝導率と表面積です。

材料 表面積
アルミニウム 32000mm^2
24000mm^2

もっと放熱効果があるのは、表面のフィン構造

 市販のアルミニウム製ヒートシンクを使って温度の上昇を測りました。表面積を計算すると37800mm^2です。抵抗とフィンの端の温度差が少ないところから、発熱する端からどんどん放熱されているように見えます。

fin1a.png
heats1.png

 アルミニウムの板とヒートシンクの体積を比較します。

形状 体積
300000mm^3
フィン 147200mm^3

 つまりフィンの構造をしていると、表面積はほぼ同じでただの板状より半分の大きさで、同等以上の放熱効果があることがわかります。

 抵抗のすぐ近くと放熱器の先端の温度差が少ないことから、発熱した熱を効率よく空気中に放熱していると思われます。

連載メニュー 初心者が知っておきたい放熱器の利用方法

(1) 半導体は発熱するので適正に放熱して使う

(2) 放熱器の素材はアルミニウムでできている