初心者が知っておきたい放熱器の利用方法 (2)
■放熱器の素材はアルミニウムでできている
電子工作では、収納するケースにアルミニウムか樹脂(プラスチック)を使います。市販の電子機器のケースは鉄が多いです。
入手できる放熱器はアルミ合金で作られています。代表的な素材の熱伝導率(単位:W/m/K)を次に示します。熱を伝えるには銅が一番適しているのですが、重量があり加工が大変です。建築物の窓枠がアルミニウムで作られているように、放熱器も製造コストが低いアルミニウムでできています。ヒートシンクと呼ばれます。
材料 | 熱伝導率 | 比重 |
---|---|---|
空気 | 0.024 | - |
鉄 | 50 | 8 |
純アルミニウム | 236 | 2.7 |
アルミ合金A5052 | 130 | - |
アルミ合金ADC12 | 100 | - |
銅 | 403 | 9 |
ヒートシンクは、次の2種類の製造方法で作られています。
- アルミ押出し材(アルミニウム熱間押出成形)
- アルミ・ダイキャスト材(鋳物)
窓枠のアルミ・サッシは、大量生産に向いているアルミ押出し材で作られます。フラット・バーやL型アングルのかたちで市販されているので、必要量を切り取ってヒートシンクとして利用できます。
●アルミニウムと銅の熱伝導度を実測する
100×100mmの大きさのアルミニウムと銅の板を用意しました。厚みは、アルミニウムが30mmで銅が10mmです。本当は同じ大きさを用意したかったのですが、ほぼ同じ価格で入手できたという理由で、この大きさになりました。つまり、銅のほうが高価です。
板の真ん中に2.6mmのドリルで穴をあけ、3mmのタップを立てました。タップでねじの溝を作ります。
発熱体として50Ωの抵抗を用意しました。裏面をサンド・ペーパでこすって平らにし、シリコン・グリスを塗ります。シリコン・グリスは、表面の凸凹に入り込んで、空気の層をなくす役目をします。上の表で示すとおり、空気が熱を伝えにくいからです。
◆アルミニウム板の測定
データロガーTR-71nwの温度センサを、抵抗の横と、アルミニウムの板の端にテープで取り付けました。室温は18.4℃です。実験用電源の電圧は22.0Vにセットして実験を始めました。
加える電力Pは、約10Wです。
E×E / R =22*22/50 = 9.68W |
◆銅板の測定
同じく10Wの電力を加えました。
◆銅板の測定結果
アルミニウムに比べて、熱伝導率が高い銅なのに温度が高めです。
●表面積が大きいほうが放熱の効果が高い
銅板のほうが熱伝導率は高いのに、アルミニウム板のほうが、効率よく熱を逃がしているように見えます。異なるのは、熱伝導率と表面積です。
材料 | 表面積 |
---|---|
アルミニウム | 32000mm^2 |
銅 | 24000mm^2 |
●もっと放熱効果があるのは、表面のフィン構造
市販のアルミニウム製ヒートシンクを使って温度の上昇を測りました。表面積を計算すると37800mm^2です。抵抗とフィンの端の温度差が少ないところから、発熱する端からどんどん放熱されているように見えます。
アルミニウムの板とヒートシンクの体積を比較します。
形状 | 体積 |
---|---|
板 | 300000mm^3 |
フィン | 147200mm^3 |
つまりフィンの構造をしていると、表面積はほぼ同じでただの板状より半分の大きさで、同等以上の放熱効果があることがわかります。
抵抗のすぐ近くと放熱器の先端の温度差が少ないことから、発熱した熱を効率よく空気中に放熱していると思われます。