テスタ再入門 (1) 交流電圧
■オート・レンジは便利です
低価格テスタ(DMM;Digital MultiMeter)は電圧や電流を測るとき、測定する電圧レベルに併せてレンジ(範囲)を適切に選ばないと、値が表示されません。
電圧に切り替えると、適切な桁数に自動で変更してくれるのがオート・レンジのテスタです。
今まで、多機能なMASTECHのMS8221Cを使ってきましたが、電圧レンジがデフォルトでAC(交流)になっていて、電子工作で一番使うDC(直流)に変更するにはFUNCキーを1回押さなければなりません。
ここでは、最近は発売されたDEREEのDE-232Cを使って、電子工作でテスタを使います。
●DE-232Cの仕様
基本的な項目が測れます。単3電池で動作します。最初に、裏蓋を開けて電池を入れます。
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「電圧、抵抗」と「電流」は、テスタのリード線をつなぐ場所が異なります。多くのテスタでは、大電流は別の端子が用意されています。電子工作では電圧と抵抗を測ることがほとんどですから、とくに不便ではありませんし、電流レンジにしたまま電圧を測るというミスを起こさずに済みます。
表示は1999です。最近は3999や5999など、最初の桁が1以上の製品も増えています。例えば、3.3Vを測るとき、
- 1999表示 3.300V
- 3999表示 3.3000V
表示桁数が異なります。電子工作では小数点第一位まで読み取れれば十分なので、1999で十分といえます。
●True RMSという特徴
「True」は交流電圧を測るとき、とにかく正確だということを表しています。はるか昔、電池が発明されました。直流です。なので、すべての基準は直流です。電球も100Wといえば、直流点灯したときのワット数を指します。
交流が発明された以降、直流と交流で100Wと書いてあって電球の明るさが異なるのはまずいです。そこで、交流の凸凹を平らにならしたときをRMS(Root Mean Square value)と呼び、同じ明るさになるようにしました。
多くのテスタは、交流波形がひずみのない正弦波のときには正しいRMSを表示します。ひずんでいると正しくないことが多いです。実際に見てみましょう。
50Hzの正弦波を発振器で作り、出力レベルは1.0Vp-pにしました。オシロスコープでrmsを計測します。346.94mVrmsでした。
テスタで測ります。
機種 | 電圧 [mVrms] |
オシロスコープ | 346.9 |
DE-232C | 345 |
VOAC7602 | 344 |
周波数を変えました。 DE-232Cは1kHzまでなら正確だといえます。
機種 | 電圧 [mVrms] | |||||
50Hz | 500Hz | 1kHz | 5kHz | 10kHz | 100kHz | |
オシロスコープ | 346.9 | 346.6 | 345.2 | 345.6 | 346.2 | 345.5 |
DE-232C | 345 | 345 | 341 | 267 | 175 | 2 |
VOAC7602 | 344 | 344 | 344 | 344 | 345 | 359 |
正弦波ではなく方形波(矩形波)だとどうでしょうか。rmsは波形を平らにした電圧ですから、1Vp-pは500mVですが、481.96mVrmsですから、少しずれています。
50Hzの測定値です。いずれの値もほぼ同じです。
機種 | 電圧 [mVrms] |
オシロスコープ | 481.96 |
DE-232C | 482 |
VOAC7602 | 480 |
方形波のON/OFFの比率を変えます。ONになる時間を短くしたので、rmsの値は低くなっています。テスタの2機種はほぼ同じ値なので、同じアルゴリズムなのかもしれません。
機種 | 電圧 [mVrms] |
オシロスコープ | 239.2 |
DE-232C | 216 |
VOAC7602 | 215 |
電子工作で交流電圧を測る機会は少ないので、それほど重要な特徴といえません。
※上記の測定は、オシロスコープを基準として比較しています。オシロスコープは8ビットの分解能なので、テスタDE-232Cとほぼと同等です。サンプリング回数はテスタより多いところが異なります。DMMのVOAC7602は分解能は一番高く、内部でノイズなどの除去をしているので信頼できる値だといえます。特にひずみを含んだ交流信号で周波数が高くなると、同じ価格帯の装置でもあきらかに異なる測定結果が出る場合があります。