アナログICは彼から始まる ロバート・J・ワイドラー Robert J. Widlar、1937-1991
OPアンプ※は、オペレーショナル・アンプリファイアの省略形です。真空管の時代から存在しましたが、モノリシックIC(ハイブリッドではない)としては、フェアチャイルドセミコンダクターのボブ(愛称)ワイドラーが1963年に発表したuA702が最初です。マーケティングとして成功したのはuA709で、1965年発表です。セカンド・ソースもたくさん作られました。
利用者にとって位相補償の設計が複雑に感じられたのを、ナショナルセミコンダクターに移籍してLM101(LM301)で改善し、補償コンデンサを外付けなしで利用できるuA741(1968年、デイブ・フラガー )の製品化に続きます。
LM101では初段の差動回路の負荷にアクティブ・ロードをつなぎ、高ゲインを得ています。アクティブ・ロードは、今ではワイドラー電流源と呼ばれており、二つのトランジスタに抵抗を1本追加したカレント・ミラー回路です。
このカレント・ミラー回路にトランジスタを1個追加したのがバンドギャップ・リファレンス回路で、トランジスタが-1.8mV/℃という負の温度係数を抵抗の正の温度係数で打ち消し、温度が変化しても一定の電圧を発生する定電圧源としてスタンダードになりました。最初の量産製品はLM109です。
ワイドラーは、1981年に創業したリニアテクノロジー設立者の一人です。
現在電子工作で使われる2個入りOPアンプ8ピンDIPの原型はレイセオンの4558です(モトローラのMC1458という説もあり)。741を改良しオフセット端子を思い切って省略したので2回路を8ピンに収納できました。
※ 岡村 廸夫氏がオペアンプではなくOPアンプという省略形を使ったので、CQ出版社は、その後も使い続けている。
参考文献 オペアンプ大全 第一巻 OPアンプの歴史と回路技術の基礎知識 第1部 OPアンプの歴史