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これ一つで測定すべてをカバーするADALM2000 (1) セットアップ

 オシロスコープは、目には見えない電気のふるまいを表示装置の画面に映し出します。DMM(テスタ)は電気を数値にして人に知らせる優れものですが、ほぼDC(直流)領域にかぎられます。電子工作で扱う電気は、次の領域が多くなっています。

  • DCから数十MHz
  • 数mVから数十V
  • マイコンで必須のバス信号。I2C、SPIやUART

 これらが自由に観測できると、電子回路の動作とソフトウェアの良否の確認がすばやくできて、慣れてくると問題があれば原因を短時間で探し出せます。また、シミュレータのLTspiceでAC解析を行ったとき、実際の回路を組んで、本装置で測定ができれば、シミュレーションで行っているパラメータの .step範囲を絞りこめ、より精度の高い回路定数が求められます。

 2018年6月12日現在、ADALM2000のハードウェアの情報は準備中です。製品にマニュアルは付属しません。セットアップにかかわるマニュアルもありません。1枚の紙きれが入っていて、http://wiki.analog.com/m2kを見るように、そしてハード・ケースは準備中なので、バグ情報と一緒にメールをくれるようにと書かれています。製品は、透明なフィルムでくるまれているだけです。

 しかし、製品を裏返して見た部品の数、GitHubの置かれたソースを見るにつれ、膨大な時間と技術が投入された製品だとわかります。アナログ・デバイセズは、半導体製造会社の中でも収益率の高い会社です。教育用分野に投資をしてくれる数少ない会社の一つです。

ADALM2000でできること

 Scopyというソフトウェアを使うと、次のことができます。ソースはこちらにあります。

 ALICE というソフトウェアを使うと、次のことができます(予定も含む)。

  • 2チャネルのオシロスコープ
  • 2チャネルのスペクトラム・アナライザ
  • ボーデ線図の描画
  • 2チャネルの発振器
  • X-Yプロッタ
  • インピーダンス・アナライザ(LCRメータ)
  • 抵抗計
  • 電圧計

ソフトウェア

 接続前に、Windows 10ではUSBのドライバのインストールが必要です。

 ファームウエアはできれば最新にしておきます。筆者のハードには0.19が入っていましたが、ダウンロードの0.20より新しいというメッセージが出たので、そのままにしました。

 アプリケーションは二つあり用途に合わせて利用します。

  Scopy ALICE

 ALICEはADALM1000の時代に制作され、ADALM2000用が用意されました。2018年6月現在、起動はしますが、USBドライバが壊れていると表示が出ます。電子回路の学習用に向いているかもしれません。ScopyはADAML2000のために作られ、実務に向いているかもしれません。2018年6月現在、リリースしたばかりで、これからバグフィックス、機能アップが期待されます。

ADALM2000を使うメリット

 本装置のオシロスコープ機能は、据え置き型オシロスコープより便利です。PCに表示される画面の大きさが自由に変えられます。12ビットA-Dコンバータでアナログ信号を取り入れるので、入門用オシロスコープが8ビットなのに比べて波形がきれいで、取得するデータの分解能が高いです。

 操作は、据え置き型のオシロスコープに準じています。縦軸の電圧シフト、横軸の時間軸シフトはマウスで操作でき、直感的です。最近のUSBオシロスコープにあるような縦軸と横軸に情報を表示しません(ALICEは時間軸に数値が表示される)。

 ボーデ線図が描けるので、アンプやフィルタの特性が簡単に測れます。今のバージョンでは、レベルの縦軸は固定です。

Analog Discovery 2と何が異なる?

 二つはほぼ同じ測定機能をもっています。ピン配置も同じです(2018年6月現在詳細な回路は公開されていないので推定)。 Analog Discovery 2のA-Dコンバータの分解能が14ビットとすこしよいので、ADALM2000は Analog Discovery 2の低価格バージョンと思えます。もし、Scopyが機能アップしていけば、Analog Discovery 2のソフトウェアであるWaveformsと同等になるかもしれません。現時点では、機能と使がっての両方ともScopyよりWaveformsがずっと上です。

(参考)149ドルのADALM2000をamazon.comで入手した価格(送料含む)は19,000円。秋月電子通商で販売されているAnalog Discovery 2の価格は36,720円(2018年6月現在)。

(参考)PCのOSは、Windows、MacOS、Linuxがサポートされています。具体的にLinuxはどのソフトとハードで動くかを筆者は検証していません。

(参考)PCとUSBケーブル(付属する)で接続しただけで、もう一つ用意されている電源配給用マイクロUSBコネクタに何もつながなくても動きます。

これ一つで測定すべてをカバーするADALM2000

(1) セットアップ

(2) オシロスコープでOPアンプのフルスイングを見る

(3) ネットワーク・アナライザでアンプの帯域を見る-1 CRフィルタ

(4) ネットワーク・アナライザでアンプの帯域を見る-2 反転アンプ

(5) ネットワーク・アナライザでアンプの帯域を見る-3 差動アンプ

(6) ネットワーク・アナライザでアンプの帯域を見る-4 トランス