これ一つで測定すべてをカバーするADALM2000 (2) オシロスコープでOPアンプのフルスイングを見る
ディジタル回路は5Vもしくはそれ以下の電圧で働きます。最近のCPUは1.0V付近で動いているようです。アナログ回路で使われるOPアンプの多くは、電源電圧が±12Vや±15Vでその能力が生きる製品が多かったです。二つの電源を利用するのはコストアップになります。OPアンプ自体の二つの電源は、プラス12Vとマイナス12Vが必要なわけではありません。おおくのOPアンプが0Vとプラス12Vの電源で動作します。しかし、0V付近の電圧が正常に増幅できるかは保証されていません。
単電源とカタログに書かれているOPアンプは、0V付近の増幅が正常なことが保証されているのかもしれません。
●古典的な単電源動作OPアンプLM358
ADALM2000の測定用ソフトウェアScopyを、次の設定で測定します。ADALM2000のもっている機能だけで構成できます。
- 電源(Power Supply)は+5V単一
- 発振器(Signal Generator)は三角波5V0-p
- LM358の増幅率は1倍(ボルテージ・フォロワ)
接続です。1+/-がオシロスコープのチャネル1、2+/-がオシロスコープのチャネル2、V+がプラスの電圧源、W1が発振器のチャネル1、Eはグラウンドです。
今回使っていないのが、マイナス電源のV-、発振器のチャネル2のW2、トリガの入出力TO/TI、1~15はディジタル関係の端子です。
5Vの電源を用意します。
発振器を用意します。2.5Vプラス側へシフトして、0から5Vをスイングする波形を作ります。
オシロスコープで入出力の波形を見ます。出力は電源電圧5Vまで上がらず、3.754Vで頭打ちになります。0V付近も約200mVから波形が始まります。A-Dコンバータの入力バッファなどに使う場合、このような電圧範囲で使うことをわかっていれば、低価格で入手性がよいので便利なOPアンプです。
画面の一番下にあるCursorsをクリックすると、2本のカーソルが現れるので、マウスで動かし、紫色のチャネル2の一番底と最上位の部分に動かします。Measueをクリックすると、カーソルの位置の電圧や時間情報が表示されます。ΔVはカーソル間の電位差です。
ここでは、電源電圧いっぱいまで出力がふることをフルスイングと表現していますが、通常レール・ツー・レールと呼びます。最近は、レール・ツー・レールでもOPアンプ自体の性能も普通によい製品が増えてきました。通常は出力のみを指しますが、製品によっては入出力共にレール・ツー・レール対応もあります。
●高出力電流フルスイングNJU77902
同じ条件で観測しました。0Vから4.9Vまでスイングしています。
●オーディオ用フルスイングLME49721
同じ条件で観測しました。0Vから4.9Vまでスイングしています。
●単電源フルスイングOPA2353
同じ条件で観測しました。0Vから4.9Vまでスイングしています。
●オーディオ用フルスイングLME49726
同じ条件で観測しました。0Vから4.3Vまでスイングしています。少し頭打ちです。
●単電源フルスイングAD8532
同じ条件で観測しました。0Vから4.8Vまでスイングしています。
●オーディオ用OPA1688
同じ条件で観測しました。0Vから4.9Vまでスイングしています。
OPアンプの性能を端的に表すGBWやスルーレートはこれらの実験結果からはわかりません。発振器の周波数を上げると、スルーレートの能力を波形で見れます。このままの接続でネットワーク・アナライザの機能でGBWの性能を観測できます。
(※)DIPより小さなパッケージの製品が多いので、DIP化されたボードを購入、もしくはDIP変換基板にはんだ付けして測定しました。テストは1個だけなので、すべての製品がこの結果になるかは不明です。