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初心者が知っておきたいDMM ディジタル・マルチメータと測定 (1)

電子工作で最初に購入する測定器はテスタ

 電子工作に限らず、電圧を測るということはよく行われます。例えば、自動車関連では、バッテリの12V付近の電圧や流れる電流を測ります。

 電気は目で見ることができませんから、バッテリが12Vの電圧が出ているのかどうか、確かめたいです。そのためには、

  • アナログ・テスタ
  • テスタ
  • DMM
  • ディジタル・マルチメータ
  • ディジタル・マルチテスタ
  • ディジタル・テスタ

などと呼ばれる測定器を利用します。一般的にはテスタもしくはマルチメータと呼ぶことが多いようです。ほとんどの機種で、

  • 電圧
  • 電流
  • 抵抗

の3種類が測れます。機種によっては、それ以外にコンデンサの容量、温度なども測れます。

 1台持っていたいですね。いろいろなテスタが販売されているので、どれを買えばいいのかがわかりません。その1台を選ぶために価格を基準にします。

千円前後

 測定器は間違った使い方をすれば壊すことがあります。なので、最初から高価な測定器は購入しずらいです。でも、測定器は思ったほど壊れません。矛盾していますが、測定するための回路に保護回路が入っていたりして、壊れにくくなっています。

 アナログ・テスタは昔からあって丈夫です。学生の方は親の世代が所有していることもあるので、聞いてみてください。
分解能は十分高い
 千円前後のテスタは、3 1/2桁の表示ができるので、電子工作で使うには十分な分解能があります。3 1/2桁の表示は、3.5桁と書かれることもあります。1.999Vというように、一番上の桁が1もしくは0とプラスかマイナスの符号を表示します。

 USBの電源5Vをディジタル・タイプで測ると、5.01Vや4.98Vのように表示が出ます。小数点第2位ぐらいの数値を読み取れます。アナログ・テスタは、小数点第1位ぐらいまで読み取れます。電子工作では実用上十分です。
測定レンジの切り替えが煩わしい
 この価格帯のテスタと数千円以上の価格帯と大きく異なるのが、測定レンジがマニュアルかオートかの違いです。マニュアルは手動という意味で、人が測定レンジを変えないと正しく測定できません。数千円以上の価格帯の製品には、オート・レンジ・タイプが多くあります。

 オート・レンジの使い勝手はよく、特に、対象物がどのくらいの値かわからないときに測るには、とても役立ちます。ディジタル・テスタは、プラスとマイナスは自動検出ですが、アナログ・テスタは、極性が逆だと針が目盛りが書かれている逆方向に振れてしまい測れません。

数千円

 マニュアルもありますが、オート・レンジの製品が増えてきます。電圧/電流/抵抗以外に測定できる項目も増えていきます。

 測定項目や分解能が同じでも、価格が上がると、表示スピードも上がっていきます。測定項目によっては、1秒以上かかることもあります。

1万円以上

 国産メーカの製品は1万円を超えるものが多いです。同等のスペックをもつ中国製では半額程度で購入できます。

 表示が1.999Vではなく、最上位の数字が、4や6の製品もあります。6であれば、5Vを測るとき、5.012Vのように分解能が1桁上がります。

 分解能が高い、表示スピードが速いなどの特徴があっても、2~3万円の価格帯を超えるのは少ないです。いずれも、電池駆動が多く、単三電池もしくは006Pを使います。電池の消耗を避けたいので、表示は液晶がほとんどです。また、オート・パワーオフが働く機種が多いようです。

 測定器の周りに柔らかい素材でできたガードがあって、机の高さから落としても壊れにくいという製品も多くありますが、全体の形状が大きくなるので、使いずらいです。

据え置き型

 AC100Vにつないで使うタイプを据え置き型、ベンチ・タイプと呼びます。電池の消耗を気にしなくてよいので、表示器は明るいものが使われます。最近は、バックライト付きカラー液晶表示器が多いようです。

 分解能によって価格は大きく異なります。4 1/2桁では数万円。5 1/2桁は5万円以上、6 1/2桁は十万円前後、7 1/2桁は50万円ぐらいです。7 1/2桁のマルチメータKeithley DMM7510は、タッチ・パネルで操作性も向上させています。

 電池を使うポータブル型と大きく異なるのは、測定速度です。1秒間に数百回から数千回の測定を行います。ポータブル型でPCとつなぐことのできる機種は少ないですが、据え置き型の多くは、USBもしくはLANでつながります。

具体的に抵抗、直流電圧、直流電流を測定する

 テスタを3種類用意しました。

(1) 購入時約500円。小型なので持ち運びが便利
(2) 2千円から1万円以下のテスタ。
(3) 据え置き型

 実験用に、次のパーツと装置を用意しました。

  • 10kΩの抵抗
  • 電圧発生装置
  • 短いクリップ・コード

抵抗値の測定

(1)のテスタは抵抗のレンジをマニュアルで選びます。

 200kΩのレンジだと、9.9kと読めます。test1.png

 2000k=2MΩのレンジでは測定できていません。

test2.png

 20kΩのレンジが一番適切で、9.96kと小数第2位まで表示されました。
test3.png
 (2)のテスタはオート・レンジです。9.96kΩと読めます。

test4.png

(3)のテスタもオート・レンジです。10.003kΩです。4wireというモードでは10.002kΩで、ほかの据え置き型2台でも同じ数値でした。

test5.png

電圧の測定

 電圧発生器で5.000Vを作りました。この装置は校正されていませんので、購入後1か月の据え置き型で測った値を正しいとします。4.99979Vです。

testV6.png
(1)のテスタです。
 200Vレンジでは5.0Vと表示されました。

testV7.png

 200mVレンジでは表示されません。testV8.png

 20Vレンジが適切で、4.97Vと表示されました。testV9.png

(2)のテスタです。オート・レンジです。

 4.98Vと表示されました。

testV10.png

電流の測定

 10kΩの両端に5Vをかけて、そのときの電流を測ります。計算上は0.5mA流れます。

(1)のテスタです。
 200μAレンジでは表示されません。

testI13.png

 2000μ=2mAレンジでは0.494mAと表示されました。testI14.png

 20mAレンジでは0.50mAと表示されました。testI2.png

(2)のテスタです。電流のレンジはオートにはなっていません。

 400-4000μAレンジでは495μAと表示されました。


testI15.png

 40-400mAレンジでは0.50mAと表示されました。testI16.png

(3)のテスタです。
 0.495mAと表示されました。

testI11.png

千円以下でも十分使える

 レンジ切り替えがマニュアルなのは使いずらいですが、測定値は価格の高いモデルと比べても遜色ありません。ポータブル型は、購入して数年経過しているので、購入直後の確度は保証されません。多くの測定器で確度が保証されているのは1年です。その後は必要ならば校正をします。しかし、桁数が少ない測定器では、よほどのダメージを与えない限り、複数年にわたって正しい値を表示できていると思います。

測定器

(1) MASTECH M830B。購入時は500円台だったと思います。今は600円から千円です。電池は006Pで、消耗は速いほうだと思います。

(2) 電流の測定を除いてSANWA CD731a。電流はMASTECH MS8221Cです。どちらも電池は長持ちしていて、交換したことがありません。CD731aは購入当時8千円を少し切っていました。MS8221Cは3千円台でした。今、値下がりしています。CD731aは電流レンジを壊しました。MS8221Cは抵抗レンジを壊しました。

 MS8221Cはおすすめですが、レンジ切り替えをしたらACモードになっているので、DCに変更するのが煩わしいです。また、いざ測ろうとしたときオート・シャットダウンになることが多いという...些細な問題点です。

(3) 2015年12月に購入した 岩通計測 VOAC7602。6 1/2桁の表示ができます。購入価格は11万円台でした。PCからUSB経由でリモートで画面キャプチャができます。

電圧発生器 ADVANTEST 直流標準電圧電流発生器 TR6142です。10Vレンジでは最小設定分解能は1mVです。ヤフーオークションで入手し、購入後1年未満の6 1/2 DMMで校正しました。1時間当たり約50μVのドリフトがあります。電源を入れて1時間後ぐらいに表示の数値と同じ電圧になるように調整しました。今回の測定は、電源入れた直後なので、わずか低めの電圧が出ています。

4wire ポータブル型のテスタでは抵抗値を測るのには、黒と赤の端子からリード線をつなぎます。リードの根元のジャック部分の接触抵抗、リード線の持つ抵抗値を含んだ値が測定されます。2本のリード線をショートさせ、キャンセル・ボタンを押して誤差になる抵抗分を取り除くタイプのテスタもあります。

 据え置き型では、それらの誤差になる抵抗分をキャンセルできる4wireという測定方法がサポートされています。

バックグラウンド

分解能;確証はないのですが、1桁は表示器7セグメントLEDの1文字を指しているようです。5 1/2Digitsとカタログに書かれたマルチメータで、5Vを測定したときの表示です。棒状のLEDを組み合わせて数字を表現したのが7セグメント表示器です。最小表示値「6」は600uVですから、分解能は100uVとなります。このマルチメータは20mVレンジがあるので、分解能は100nVです。

7seg1.png

確度;このマルチメータModel195Aの校正されて1年間の確度は、20Vレンジでは0.030%rdg+6digitとデータシートに書かれています。rdgはreadingで表示の数値です。

  • 4.9886*0.03%は0.00149658V
  • 0.0001*6は0.0006V

 誤差の合計は0.00149658+0.0006=0.00209658Vですので、測定の真の値は4.9865~4.99070Vの範囲です。

 据え置き型の確度は高いですが、ポータブル型は低く、0.1%~1%rdgが多いようです。例えば、0.8%rdg+3digitsだとして読み取り値が4.98Vだとします。

  • 4.98*0.8%は0.03984V
  • 0.01*3は0.03

 誤差の合計は0.06984V。したがって、4.91~5.05Vの範囲が真の値です。

(20160907)ビデオのリンク先が消滅していたので、削除しました。

連載メニュー 初心者が知っておきたいDMM ディジタル・マルチメータと測定

(1) 電子工作で最初に購入する測定器はテスタ

(2) LED点灯回路の電圧と電流を測る

(3) LEDの光り方を変える方法を探る その1 抵抗値を変える

(4) LEDの光り方を変える方法を探る その2 電源電圧を変える