速習レッスン Makersには欠かせないマルチ測定ツールAnalog Discovery2 (3)  オシロスコープと発振器 その3

二つの信号を比較する

 前回まで、Analog Discoveryのオシロスコープの基本セッティングを説明しました。今回から、具体的な測定事例を用いて、オシロスコープの使い方に慣れていきます。

 多くのオシロスコープは、入力信号用のプローブが2本です。少し高価な製品では4本、パワー・エレクトロニクス用には8本のプローブが用意された製品もあります。

 通常のプローブは電圧を測定します。ふつうはプローブのGND端子は回路のグラウンドにつないで波形を見ます。グラウンドが基準ではなく回路の途中の電圧を見たいときには、差動プローブを用います。電流波形を観測したいときは電流プローブを用います。どちらも用途によっては便利ですが高価です。

増幅回路の入出力波形を見る

 具体的に、OPアンプを用いた増幅回路の波形を見ます。OPアンプを用いた非反転回路です。

 最初に、動作確認を兼ねて、発振器出力W1を入力Channel1のプローブにつなぎます。発振器はWebGeneで10kHz 1Vp-pのサイン波を出力します。W1は50Ωの抵抗を直列に入れていません。前回の説明のように、プローブは10Xに変更しました。

 次の写真は測定の様子です。発振器の出力W1とChannel1のプローブを増幅回路の入力につなぎます。Channel2のプローブを増幅器の出力につなぎます。OPアンプには±15Vを加えます。

 OPアンプは、オーディオ用NJM4580DDです。1Vの入力を100倍増幅していますが出力は100Vにはなりません。電源電圧15Vでクリップします。

 次の画面は、Channel2を10Xに設定した直後なので、縦軸はChannel2のスケールです。波形を表示しているエリアの上部のC1をクリックすると、縦軸のスケールはChannel1に切り替わります。

 発振器の出力電圧を1/10の100mVに下げます。100倍増幅できていることが確認できます。波形が見やすくなるように、プローブの電圧Rangeを変更します。Rangeの下のOffsetは、画面を上下にシフトする値です。数値を入れても変更できますが、画面左の縦軸にある三角印付近でマウスを動かしても変更できます。

方形波で見られる増幅器の能力

 発振器をサイン波(Sine)から方形波(Square)に変更します。発振器の出力を見ているChannel1の波形が少し変ですが、出力の波形を見ると、少し傾きがある波形です。特に、立ち上がりの部分で、低いところから10%、高いところの90%の間の電圧の変化をスルーレートと呼びます。単位は、V/usです。

 波形画面の上部にある測定カーソルを使います。波形が安定になるように、トリガはChannel2に変更します。

 波形の低い部分から約10%の部分を一度クリックし、次には90%付近をクリックします。実際は正確に10%と90%ではないですが、全体が20Vp-pの波形です。その80%は16Vp-pです。黄色のアンダラインの部分に表示が出ています。Δが15.57Vなので、ほぼ16Vです。スルーレートΔ/ΔXは3.935V/usと表示されています。

 データシートには5V/us(typ)と書かれています。typはtypical=代表値という意味で、最小と最大値は規定されていません。また、入力信号レベルや測定時の増幅率が条件に書かれていません。推定ですが、約4V/usは正しい測定値と思われます。

OPアンプを高速版に変更すると

 OPA827に変更しました。データシートに書かれているスルーレートは最小で20V/usです。条件は利得が1のときです。実測値は19.6V/usなので、ほぼスペック通りの性能が得られています。

 測定しやすいように横軸である周波数軸はTimeで1us/divまで上げていくと、画面右に立ち上がり波形が外れて見えなくなりました。画面下にある周期の数値部分をマウスで左右に動かすと、見たい波形部分が表示されます。据え置き型オシロスコープでいうところの遅延の機能です。

レール-ツー-レールというスペック

 古典的なOPアンプは、電源電圧より低めの出力しか得られません。

 波形表示エリアの右上にあるYをマウスでクリックすると電圧レベルを測定できるカーソルが出ます。もう1回クリックすると2本目のカーソルが出ます。

  •  OPA827の入力レベルを少し上げて、出力が飽和する様子を見ます。プラス側の波形がひずみ始めた時のピーク電圧は、14.235V -14.945Vでした。
  •  NJM4580DDに変更して測定しました。マイナス側の波形がひずみ始めた時のピーク電圧は、14.152V -14.857Vでした。
  •  OPA1622に変更して測定しました。マイナス側の波形がひずみ始めた時のピーク電圧は、15.568V -16.273Vでした。
  •  LM358に変更して測定しました。プラス側の波形がひずみ始めた時のピーク電圧は、10.318V -10.903Vでした。

 LM358は大変古いOPアンプです。±15Vの電源電圧でも、出力は10Vほどしか得られません。そのほかのOPアンプではほぼ電源電圧いっぱいの出力電圧が得られました。電源電圧をめいっぱい利用できるOPアンプをレール-ツー-レールと呼びます。出力だけの製品と入力と出力がともにレール-ツー-レールの製品もあります。

 OPA1622は最新のオーディオ用OPアンプです。絶対値として電源電圧以上の出力電圧が得られていますが、これは、キャリブレーションできていないための誤差と思われます。

Makersには欠かせないマルチ測定ツールAnalog Discovery 2

(1) オシロスコープと発振器 その1 プローブの校正

(2) オシロスコープと発振器 その2 トリガ

(3) オシロスコープと発振器 その3 測定例

(4) オシロスコープと発振器 その4 MSO

(5) オシロスコープと発振器 その5 表示/演算機能

(6) オシロスコープと発振器 その6 ネットワーク・アナライザ

(7) オシロスコープと発振器 その7 インピーダンス・アナライザ