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LTspice シミュレーション クイック・スタート(2)

AC解析でアンプの安定性を確認


 今回は、前回確認したLT1115のOPアンプの非反転増幅回路の過渡解析に続いてAC解析を行い周波数特性と位相特性を調べてみます。


 
AC解析のコマンドを設定する
 上記の過渡解析を行ったLT1115の非反転増幅回路についてAC解析を行います。手順は次のようになります。AC解析を行う場合も、前回の過渡解析で使用した回路図と同じものを利用します。
 メニューバーの、

   Simulate > Edit Simulate Cmd 


を選択すると、Edit Simulate Commandの設定画面が表示されます。「AC Analysis」のタグを選択すると、次に示すAC解析の設定画面になります。

① スイープの種類
② ステップ間のシミュレーション・ポイントの数 
③ スイープの開始周波数
④ スイープ終了周波数

を設定します。

Type of sweep
 スイープは、次の4項目から選択します。

  オクターブ(Octave):ステップごとに倍になる
  デケード(Decade):ステップごとに10倍になる
  リニア(Linear):等間隔に変化する
  リスト(List):表で示された値を使用する

 今回はOctaveを使用します。オクターブ当たりの測定ポイントは20に設定します。開始周波数は10Hzとし、終了周波数は2MHzに設定します。

 

 シミュレーション条件を設定し、回路図上にコマンドのテキストを固定すると、次に示すように過渡特性のコマンドはコメント化され ;.tran 10m となります。

 

 OPアンプの出力のシミュレーションの実行結果を次に示します。増幅率は1MHzくらいまでフラットで6dBの値です。

 グラフ表示を拡大しました。高域の周波数が1.2MHzくらいに増幅率のピークがあります。位相についても1.2MHzくらいからマイナス側に変化しています。位相がマイナス180度を超える範囲では、増幅率はマイナスになっています。増幅器として安定な動作が想定され、過渡解析でも問題は認められませんでした。

OPアンプの抵抗を変更する
 LT1115の非反転増幅器の入力抵抗R1と負帰還抵抗R2を、1kから10kΩに変更してみました。

 

 R1、R2の値を変更してAC解析を行い、次に示す結果が得られました。

 グラフ画面を全画面表示して確認します。

位相が180度変化した時点で増幅率がプラスになっている
 周波数が1MHzなる少し前から位相がプラス側に進み、4MHzの時点で位相は180度進んでいます。この時点で増幅度は12dBとプラスで、出力の位相が180度進んでいるので、この周波数では負帰還回路が正帰還回路になり、増幅器は発振します


過渡解析で発振を確認する
 この回路で過渡解析を行った結果を次に示します。1kHzの入力信号を増幅した結果に高い周波数の信号が重なっているようです。

 重なっている信号が確認できるまで時間軸の拡大を繰り返します。時間軸の拡大は、グラフの拡大したい部分をマウスでドラッグして行います。

 

 発振波形の測定は、波長の範囲をマウスでドラッグしてステータスバーに表示される波長、周波数を確認します。980ns、約1MHzの周波数です。
 この発振を止めるために、負帰還抵抗に小容量のコンデンサをパラレルに接続して様子をみます。.stepコマンドでコンデンサの容量を変化させ位相特性の変化も確認します。

(2017/7/26 V1.0)

<神崎康宏>

バックグラウンド

 1メガ;1061Megもしくは1000kと表記します。mだと10-3になります。

LTspice シミュレーション クイック・スタート

(1) 基本手順と過渡解析

(2) AC解析

(3) 発振と位相補正