初心者が知っておきたいDMM ディジタル・マルチメータと測定 (3)
■LEDの光り方を変える方法を探る その1 抵抗値を変える
●抵抗の値を半分にして電流を倍増する
LEDのデータシートを見ると、流れる電流に比例して光り方が変わります。電流を変えるには何を変更すればいいのでしょうか。
今の回路で確認します。電源の電圧は4.8V、抵抗は1kΩ、電流は2.87mA流れています。倍ほどの5mA流すことを考えます。
LEDのVfは1.93V、電源は4.8V、抵抗で落としたい降下電圧は2.87Vです。
R = E / I(I;電流、E;電圧、R;抵抗) 2.87 / 5m = 0.574kΩ = 574Ω ≒ 560Ω |
オームの法則から、計算値は574Ωですが、E-12系列にあるのは560Ωです。抵抗を取り換えて実際に測ります。抵抗のリード線はからげずにはんだでちょこっとつけていたので、すぐに交換できます。
2.84Vです。電源は4.79Vです。電池が少し消耗しています。流れる電流は、
I = E / R (I;電流、E;電圧、R;抵抗) 2.84 / 560 = 0.0050 = 5.0 mA |
計算通り5mA流れています。しかし、あまり明るくなった感じがしません。マイコンのI/Oポートから直接取り出せる電流は5mAぐらいです。光っているかどうかの判別には十分な明るさです。このLEDは100個300円で購入した安価な製品です。5mA以下でも明るい高輝度タイプも市販されています。
●小信号LEDの標準的な20mAを流す
電流を20mAにします。PICやAVRマイコンではI/Oポートから流せる値です。
2.84 / 20m = 0.142kΩ = 142Ω ≒ 150Ω |
計算値は142Ωですが、E-12系列にあるのは150Ωです。抵抗を取り換えて実際に測ります。
2.75 / 150 = 0.0183 = 18.3 mA |
このときの電源電圧は4.76Vです。電流が流れると、電池の内部抵抗のために電圧が落ちているようです。
計算値の142Ωに対して150Ωなので、電流値は少なくなりました。抵抗1本だと20mAにはできないので、2本で142Ωを実現します。
◆直列にして合成抵抗を求める
E-12系列では近似できないので E-24系列も使います。抵抗は直列につなぐと合成抵抗は足し算で計算できます。
68+75=143Ω |
2.75 / 143 = 0.0192 = 19.2 mA |
設定値の20mAに近づきました。
◆並列にして合成抵抗を求める
並列の計算は面倒です。
Rparallel = 1/((1/R1)+(1/R2)) = R1R2/(R1+R2) 270*300/(270+300) = 142Ω |
2.75 / 142 = 0.0193 = 19.3 mA |
このときの電池の両端は4.76V、LEDの両端の電圧は2.02Vでした。電流値が変わると、当初の電圧よりだいぶ下がっています。
●直列と並列の計算をまとめる
(a) Rparallel = 1 / (( 1 / R1 ) + (1 / R2 )) = R1R2 / (R1 + R2) (b) Rparallel = 1/((1/R1)+(1/R2)+(1/R3)) = R1R2R3/(R1R2+R2R3+R3R1) (c) Rserial = R1 + R2 (d) Rserial = R1 + R2 + R3 |
◆並列にしたいときとはどういうとき
たとえば、40Wの抵抗がほしいとき、1本では20Wの抵抗しか入手できなかったとき、抵抗値は倍にして並列にします。次の写真は、パワー・アンプの測定に使う8Ωの抵抗がほしいとき、15Ωを並列にしました。
◆直列にしたいとき
CRによるフィルタ回路で、コンデンサは、精度の良いものでも1%です。今はテスタでコンデンサの容量が測れます。その値をもとに、抵抗値を計算すると、そうとう細かい値になります。
たとえば、5780Ωだとします。5.6kΩと180Ωを直列にすれば、目的を達することができます。
バックグラウンド
E-12系列とE-24系列;例外もありますが、現在入手しやすい抵抗は、この2系統の抵抗値です。E-12系列は1.0 1.2 1.5 1.8 2.2 2.7 3.3 3.9 4.7 5.6 6.8 8.2の種類があって、これに10倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍した数値の抵抗が手に入ります。
抵抗は誤差が、±10%あれば、1.5は1.35~1.65の範囲の値をとります。1.5の下の1.2は1.08~1.32。1.8は1.62~1.98の範囲の値をとります。グラフにプロットすると、ほぼ連続の値をカバーしていることがわかります。
ほんの50年ほど前までは、抵抗の値はばらついていました。今はというと、次に示すように300Ω金色つまり±5%の炭素皮膜抵抗は、±1%の範囲に収まっています(20個を測定)。