速習レッスン Makersには欠かせないマルチ測定ツールAnalog Discovery2 (6) ネットワーク・アナライザ
■入力と出力の関係を自動的に測ってくれる
市販の据え置き型の測定器の中でもネットワーク・アナライザは高価で重量のある製品です。通常高い周波数領域の測定で利用されます。市販のベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)の扱える最低周波数は10kHz付近からなので、電子工作で測定するオーディオ帯域には不向きです。
周波数領域の挙動を見るための測定器にはスペクトル・アナライザがありますが、これは、入力信号が不明な場合に利用されます。ネットワーク・アナライザは発振器(信号源)をもっており、被測定デバイス(DUT)に入力して反射した信号と出力信号を測ります。
高周波の世界では、反射信号をS11、伝送された出力信号をS21と呼びます。Sパラメータは散乱パラメータのことで、高い周波数の電流、電圧測定は一般に難しいために用いられます。Analog DiscoveryではS11は得られません。しかし、ネットワーク・アナライザの重要な測定値である振幅と位相の情報が得られるので、低い周波数の測定にはとても役立ちます。
●接続方法
Analog DiscoveryのChannel1と発振器の出力W1をDUTの入力に、Channel2をDUTの出力につなぎます。
●Analog Discoveryの設定
発振器はネットワーク・アナライザのソフトウェア側で設定します。Networkを起動します。オシロスコープのときと同様に、プローブは10Xに変更しました。
測定回路はCRフィルタにします。実際に測定する前に、LTspiceでシミュレーションします。
●LTspice XVIIで回路入力とシミュレーションを行う
次の回路図でローパス・フィルタのシミュレーションしました。カットオフ周波数は約70Hzです。
実際に計測すると、カットオフ周波数は同じですが、高域が下がりきりません。
●増幅回路の周波数特性を測る
OPアンプNJM4580DDを用いた非反転増幅回路の周波数特性です。発振器の出力はデフォルトの1Vから100mVに下げました。利得は100倍=40dBです。電源は±15Vです。
※ボーデ線図以外にもナイキストも表示できます。
●トランスの周波数特性を測る
RSコンポーネンツで購入した電源用トロイダル・トランス(115V-9V)の入出力を逆にして測りました。9Vの入力側は、オーディオで使うときの標準的インピーダンス600Ω付近にしました。