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使ってみた (1) ツェナー・ダイオード

 ダイオードに電圧をかけて電流を測定すると、次の図の二つの領域にグラフが作られます。

7.5Vツェナー・ダイオード

 実際に測定します。カソードに + の電圧をかけます。 第三象限です。Batteryは実験用電源です。

 測定結果です。

 次に、カソードに - の電圧をかけて測定します。第一象限です。上記の第三象限の符号をマイナスにして同じグラフ内にプロットしました。

定電圧

 直列に1kΩを入れます。Batteryの電圧を上げていき、ツェナーの出力電圧を読み取ります。同時に、電流も記録します。

Battery
入力電圧[V]
出力電圧[V] 電流[mA]
6.0 6.0 0
7.0 7.0 0
7.2 7.2 0
7.4 7.3 0
7.6 7.31 0
7.8 7.32 0
8.0 7.32 0
8.2 7.32 0
8.4 7.32 0
8.6 7.32 0
8.8 7.32 1
9.0 7.32 1
9.8 7.33 2
10.6 7.33 3
11.6 7.34 4
12.6 7.34 5
13.6 7.35 6
14.6 7.35 7
15.6 7.35 8
16.6 7.36 9
17.6 7.36 10
18.5 7.36 11
19.5 7.37 12

 入力電圧(Battery)の変化に伴って出力電圧は変動します。ツェナー・ダイオードに流す電流は、1mA以上が推奨されているようです。温度の変化に対して出力電圧の変動が少ない、ノイズがある程度少なくなるなどの利用からのようです。
 しかし、抵抗を用いている限り、電流が変化するのは避けられません。といっても、一般的に入力電圧の変動は±10%程度を考えます。上記の実験結果からは、その程度の変動では、電流変化は極めて少ないと言えます。

温度変化

 恒温槽ではありませんが、冷却材とヒートガンを使って温度を変化させました。入力電圧は12.0Vにしました。

 基準電圧源ICのTL431(2.5V)の温度変化は、全温度範囲で6mV(typ)です。上記のグラフでは、狭い温度範囲での変動は110mVあるので、比較にならないほど、温度特性はよくないと言えます。ツェナー・ダイオードは5V付近の製品が温度変化が一番少ないといわれています。これは、原理上、5V以上では正の温度特性、5V以下では負の温度特性をもちます。

負荷電流

 ツェナー・ダイオードの出力電流はほとんどとれません。負荷に電流を流して、電圧変化を見ました。ツェナー・ダイオードには上記と同じく5mA弱を流しています。
 電流は、流したぶん電圧が下がるので、実際の利用ではほぼ流してはいけないことがわかりました。OPアンプの入力端子につなぐか、ボルテージ・フォロワ回路を通して次段へつなぎます。

 これらの実験から、電源などの基準用電圧源に使うには、TL431などの専用のICを利用するのが望ましいと思われます。温度変化などシビアでない用途や、電圧をシフトするだけのような用途には向いてます。

ノイズ

 上記の条件でスペクトラム・アナライザでノイズの分布を観測します。最初は、入力をショートした状態です。ベースラインは約-163dBmです。スペクトラム・アナライザの入力には22uFのフィルム・コンデンサを入れ、AC入力にしています。

 ツェナー・ダイオードの両端を観測しました。0.1~100kHzではノイズが一定レベルで出ています。差は22dBmぐらいです。実験用電源もノイズを出します。こちらの記事を参照ください。

 観測する帯域を10MHzまでに広げました。7MHz付近のノイズが増加しています。ツェナー・ダイオードのノイズか、外来ノイズかは不明です。

 この装置の最大周波数120MHzまで観測範囲を広げました。ノイズは約60MHz付近で減少しています。これは、ツェナー・ダイオードの発生するノイズの分布もしくは、測定環境によって高域が減衰したのかは不明です。
 むかし、ホワイト・ノイズ発生器のノイズ源として紹介されたことがあります。

 電流が少ないと、ノイズが増えるという確認の実験します。入力電圧を下げて、ツェナー・ダイオードに流れる電流を約4.7mAから320uAに設定しました。特に周波数の低いところでノイズが増加しました。

 電流を元に戻して、ノイズ対策のために電解コンデンサ100uFをダイオードの両端に追加しました。ツェナー・ダイオードのインピーダンスが低いのでほとんど効果はないようです。

参考資料;ダイオード、ツェナーダイオード、ルネサス、https://www.renesas.com/jp/ja/doc/products/diode/002/rjj27g0009_zener.pdf

(測定装置)実験用電源はAgilentのE3631A、DMMは岩通のVOAC7602、電子負荷は菊水電子のPLZ72W、スぺクラム・アナライザはAdavantestのTR4171を使いました。

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