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電源のノイズを観測する (1) エネループはグッドな電源

家の中はノイズだらけ

 オシロスコープやスペクトラム・アナライザの入門書を見ると、きれいな波形が写っています。書かれた時期が古く、LED電球などが存在しない時代の書物です。

 スマホの充電器はスイッチング電源で構成されているので、AC100Vにはノイズが漏れ出しています。空中にも飛び出しているかもしれません。電子工作では5Vなどの直流電源をよく使います。モバイル・バッテリの中身は約3.7Vのリチウム・イオン電池ですが、DC-DCコンバータ(昇圧型スイッチング電源)で5Vを得ています。

 電源の性能を見るのにノイズが測れると、問題があっても対策ができます。

スペクトラム・アナライザを使う

 スペクトラム・アナライザは、オシロスコープと並んで電子回路の設計部門では必須の測定器ですが、高価です。中古品のなかでも測定できる周波数が低いとリーズナブルです。

 実に便利な測定器ですが、困ったことに、やさしく使い方が解説された書籍がありません。マニュアルも数百ページあって機能の説明はあるのですが、測りたいものに対してどうすればよいかを書いたものがありません。なので、ここで電源のノイズを観測している手法が正しいのかは不明です。

 アドバンテストのTR4171を使います。大変古く、アドバンテストはこのようなデスクトップ型の測定器を現在販売していません。マニュアルは入手できます。測定周波数範囲は100Hz~120MHzと電源回りの観測には最適です。

ノイズ・フロア

 50Ωの入力に何もつながない状態で、100Hz~100kHzの帯域を見ます。入力がないので、この装置の表示できる最小入力レベルを知ることができます。


条件

50Ω入力、HIGH SENSITIVITYをONして内蔵プリアンプを使う。入力アッテネータを0dBに。

画面最上部のレファレンス・レベルREFを-50dBmに、一つのマス目は10dB/div。

RBW(分解能帯域幅)300Hz、VBW (ビデオ・バンド幅)を10Hz。

マーカのMKRをON、Noise/HzをON。1Hzの雑音電力バンド幅で正規化された値が表示される。

 画面のマーカから、-164.7dBm/Hzという値がノイズ・フロアになります。ここより小さい信号はノイズに埋もれて観測できません。

 

測定回路

 電子工作で使う回路の電源電圧は低くく、TR4171のDC入力耐圧は±100Vなので、直接つないで観測できますが、入力部は壊れやすいので、DCをコンデンサでカットします。

 5V電源で100mA流したときを想定し、50Ωの負荷抵抗をつなぎました。

ケーブルをつないだときの状態

 どうしたのと思うぐらいのノイズが観測されました。ノイズ・フロアは何もつながない状態と同じ-160dBm/Hz付近です。

 最初のピークにマーカを持っていきます。31.86kHzです。ノイズを出しているのはいったいだれなんでしょうか?

実験によく使う電源 NF回路ブロックModel PAB 32-2

 ノイズ・フロアが10dBm以上悪化しました。しかし、いくつかのノイズがなくなっています。出力インピーダンスが低いため、飛び込んだノイズが抑えられているのかもしれません。

実験によく使う電源 Agilent E3631A

 100Hz~30kHz付近までに相当ノイズが出ています。全体のノイズ・フロワも約20dBm悪化しています。

充電電池 エネループ

 4個直列につないで約5Vにしました。電池自体の特有のノイズはないし、ノイズ・フロアも悪化していません。理想の実験用電源ですね。

3端子レギュレータICはノイズが多いというが

 エネループに、3.3V出力の3端子レギュレータAMS1117をつないだ出力です。特有のノイズは観測されませんが、ノイズ・フロアは約14dB悪化しています。

 ※参考文献;http://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2005/01/p211-212.pdf

コラム 出力インピーダンス

 自作の出力インピーダンス測定器で、電源を測りました。1kHz付近から300kHz付近までがほぼ正しいと思われる値を示しています。電源出力から測定ポイントまでのケーブルの長さで、値は大きく変わります。なるべく最短距離で測りました。

 USBオシロスコープPicoScopeのFRAソフトウェア(FRA4PicoScope0.6.1)が表示している縦軸はGainですが、0.1~100Ωの抵抗を測定した値をもとに換算表を作りました。

◆エネループ4本直列

 10kHz付近の値をインピーダンスに換算すると約250mΩです。

◆実験用電源Model PAB 32-2 5V出力時

 10kHz付近の値をインピーダンスに換算すると約100mΩです。

◆3端子レギュレータAMS1117 3.3V

  10kHz付近の値をインピーダンスに換算すると約300mΩです。

電源のノイズを観測する

(1) エネループはグッドな電源

(2) リプル・フィルタを入れると

(3) リプル・フィルタの性能はトランジスタが影響するのか