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LTspiceでボリュームを作る(4)つながる回路の影響

実際の回路でのボリュームの挙動

 実際の回路でボリュームを利用する回路では、「ボリュームの出力」が次に続く回路の「入力インピーダンスの影響」を受けることが想定されます。今回は、LTspice XVIIで「OPアンプ回路の入力信号レベル調整」を10kΩのボリュームで行った場合のシミュレーションを行います。

テスト回路
 次に示す回路をテスト用に検討しました。R8、R7で構成するVRopenは、無負荷で出力の中間タップに何も接続していない10kΩ B特性のボリュームです。R6、R5で構成するVRcloseの10kΩB特性のボリュームは、OPアンプの反転増幅器の入力に接続しています。

反転増幅器
 反転増幅器は、シミュレーション・データがメーカのホームページから入手でき、単電源でも利用できるデュアル・パッケージのOPアンプLM358です。電源電圧の範囲は、

  • 単電源 Single Supply: 3 ~ 32 V
  • 両電源 Dual Supplies: ±1.5 ~ ±16 V

と広い範囲に対応しています。
 今回OPアンプは、マイナス端子側を入力端子として出力が反転する反転増幅器として利用しています。このOPアンプの増幅率は、負帰還回路の抵抗R1、R2の値で決まります。

  反転増幅器の増幅率 = R2 / R1


 ここでは R1=10kΩ、R2=33kΩと設定しています。そのため、増幅率は3.3倍となることが想定されます。シミュレーショ結果と比較確認します。
 
過渡解析の時間
 過渡解析の時間を1秒とします。ボリュームの変化が1秒間で完了するように設定しました。0.5秒のときにボリュームが中間点になるようにしています。

ボリュームからの出力
 次に、シミュレーションの結果のうち、ボリュームをオープンにしたときの出力電圧V(sigout)青色と、ボリュームの出力をOPアンプの入力に接続したV(input)緑色の結果を表示しました。

 ボリュームの出力に何も接続していない場合、V(sigout)の電圧はボリュームの回転と直線的に変化し0.5秒(500ms)のときにボリュームの中間点となります。そして、そのときのボリュームのタップの電圧は入力電圧1Vの半分の500mVとなっています。その詳細を確認するために、次に示すようにグラフをドラッグして拡大します。

 より拡大すると、次のようになります。
 緑色のシミュレーション結果は拡大すると500msで500mVとなり、入力信号レベル1V(1000mV)のちょうど1/2となっています。
 青のラインは、10kΩのOPアンプの反転入力の入力抵抗に接続したV(input)の入力電圧です。OPアンプの反転側の入力端子はプラス側の入力端子と同じ電圧になります。プラス側の入力端子は10kΩの抵抗を介してGNDに接続されています。OPアンプは両方のプラス、マイナスの入力端子の電圧が同じになるように常にフィードバック回路を通して調整されます。そのため、ボリュームに接続された入力抵抗はボリュームの出力とGNDを10kΩの抵抗で接続したのと同じになります。この抵抗の影響で400mVとなります。

 確認のため、VRopenのボリュームのSigoutとGNDに10kΩの抵抗を接続してシミュレーションしてみました。

 シミュレーションを行いSigOUTとINPUTの電圧をグラフ表示しました。

 確認のため500ms近辺を拡大し次の結果を得ました。V(sigout)とV(input)は同一の軌跡を描いています。

 次回は、アンプ側が接続するボリュームの影響を受けるかどうか確認します。

(2017/1/29 V1.0)

<神崎康宏>

LTspiceでボリュームを作る

(1) 抵抗値比で分圧

(2) 連続可変

(3) 特性Aカーブ

(4) つながる回路の影響

(5) OPアンプの入力インピーダンス