LTspiceでボリュームを作る(5)OPアンプの入力インピーダンス
■つながる回路の影響
次のボリュームのLTspiceXVIIのモデルでは、ボリュームの抵抗値を変えるときは三か所の値を変更する必要があります。シミュレーションのストップ時間を変更したときも、二か所の値を変更しなければなりません。
●ボリュームのパラメータの設定を容易にする
ボリュームの抵抗値zをパラメータとして設定します。併せて、過渡特性のシミュレーションのストップ時間をtと設定します。この設定は次のように .param コマンドで行います。
.param z=10k t=100m rv=z/t |
ここで設定されたパラメータを利用して、過渡特性のシミュレーション・コマンド .tran は次のように設定できます。
.tran {t} uic |
R6、R8の抵抗値は次のように設定できます。
R = z * (1/t) * time R = rv * time |
R5、R7の抵抗値は次のように設定できます。
R = z - z* (1/t) * time R = (1-time/t) * z |
以上の設定でシミュレーションを行った結果を示します。
ピンクのエリアが出力信号、赤がOPアンプの入力信号、青色はボリュームの出力に何も接続されていない場合のボリュームの出力です。
信号の状態を確認するために、グラフ表示をウィンドウ全体にしました。
ボリュームの次段の入力インピーダンスの影響をよりはっきりさせるために、ボリュームの値を10kΩから100kΩに変更しました。.paramコマンドの z=10k を z=100k に変更するだけで済みます。
何も接続しないボリュームの出力信号(青色)は次段の入力インピーダンスの影響を受けないので、直線的に変化しています。一方10kΩの入力抵抗のOPアンプに接続されたボリュームの出力信号(赤色)は次段の入力抵抗の影響を大きく受けて湾曲した曲線になっています。
OPアンプの出力も直線的な変化から大きくずれています。次は、OPアンプが前段のボリュームの値が変化する影響を受けていないか確認します。
●ボリュームの位置による影響の有無を調べる
このOPアンプの増幅度は、R2/R1 = 33k/10k = 3.3 となります。
入力信号を3.3倍したボリュームの値を出力信号と比較して、ボリュームの位置の影響の有無を確認します。
グラフに計算結果を表示するため、次に示すようにグラフ画面を選択し、メニュー・バーのPlot Settingsを選択し、
Plot Settings>Add Trace |
トレースの追加ウィンドウで、V(input)*3.3 の計算式を追加します。
追加したグラフの80ms付近の部分をドラッグし、拡大して表示しました。各測定ポイントの波形と今回追加した入力信号を3.3倍した緑色の出力信号の計算値の波形が追加されています。OPアンプの増幅回路は反転増幅器となっているので、入力と出力関係は±逆の関係になっています。また、波形の振幅は左側から右側に少しずつ減少しています。この減少の様子もピンクの波形と緑の波形は同様に変化しています。
入力信号に3.3倍した値をマイナスに変更するために、グラフの緑色のV(input)*3.3をマウスの右ボタンでクリックし、計算式の編集の画面を表示します。
次に示すように、計算式の入力欄の先頭をマウスでクリックして計算式を編集できるようにして先頭に - を入力します(半角)。
ピンクの出力ラインに入力を3.3倍し反転した緑のラインは重なり、ピンクのラインは隠れてしまいました。
ピンクの波形と緑の波形がシミュレーション結果の全体に渡って同様な挙動を示しているか確認するために、この二つの波形の波高値の絶対値の差をグラフに追加します。
次に示すように、トレースの追加の画面を表示し、
3.3 * V(input) + V(out) |
の計算式を追加します。
追加された黄緑のラインは、ほぼ0Vのラインとなっています。
全域を表示すると、次に示すように全域にわたって黄緑のラインが0Vのラインになっていることが確認できます。
全域のグラフにするには、虫眼鏡に赤い×のアイコンのZoom full extentsが便利です。グラフは見出しの計算式をマウスでクリックするとカーソルが表示され、カーソルでシミュレーション結果の座標を読み取れるようになります。
次に、V(sigout)をクリックすると、ピンクの出力波形の上に青のV(sigout)波形が重なって表示されます。次にV(input)の見出しをクリックすると赤の入力信号の波形が表示されます。その後、3.3*V(input)+V(output)の見出しをクリックすると、黄緑のラインが全域にわたって0Vを表示します。
カーソルのラインが邪魔になるので、カーソルの座標を表示するウィンドウを削除しグラフ画面のカーソルを消去してあります。
以上の結果から、OPアンプは前段の出力インピーダンスの変化の影響を受けません。ボリュームがOPアンプの10kΩの抵抗値の影響を受けて入力信号がリニアでなくなったために、出力電圧の変化がリニアでなくなりました。OPアンプの入力インピーダンスは、可能な限り大きくすると前段の出力に影響を与えなくなります。
(2017/2/20 V1.0)
<神崎康宏>