CR回路の位相のずれを利用して発振回路を作る(1) -3dBの減衰
■CR回路の周波数特性、位相の推移を調べる
次に示すC-R回路は交流信号を加えると、所定の周波数からオクターブ当たり6dBの比率で減衰するハイカット・フィルタとなります。また位相が90度ずれます。
減衰始めて-3dBの減衰率になる周波数とC-R回路のC、Rの値との間には、次の関係があります。
fc = 1 / 2πCR fc : カットオフ周波数 τ= CR τ : 時定数 |
二つ接続すると180度位相がずれます。三つ接続すると180度以上の270度まで位相がずれます。
トランジスタの反転増幅回路にこの3段接続した回路を接続し、出力を180度移相した信号を加え、正帰還とした発振回路について検討します。
●ハイカット・フィルタの周波数特性
この回路の周波数特性をAC解析で確認します。この回路ではC、Rの値を次のように設定しました。
C : 0.47μF R : 10kΩ 時定数 τ = (0.47 × 10-E6)× 10 × 10+E3 = 0.0047 s カットオフ周波数 fc = 1/(2πCR)= 33.88 Hz |
グラフから、カットオフ周波数とオクターブ当たりの減衰率が-6dBとなることを確認します。
●カットオフ周波数
カットオフ周波数は、入力信号から-3dB減衰したときの周波数です。入力信号の電圧レベルは0dBですので、カットオフ周波数の電圧レベルは、
0dB - 3dB = -3dB |
となります。グラフのV(out)のグラフの-3dBの近辺を拡大し、次に示すように、カーソルを-3dBのラインとV(out)の交点に持っていくと、ステータス・バーにV(out)、周波数が表示されます。それぞれ3桁まで表示すると、次のようになります。
●オクターブ当たりの減衰率
オクターブ当たりの減衰率は、V(out)ラインと1kHzラインの交点から2kHzラインの交点までをドラッグして、ステータス・バーに表示される両交点の座標の差から求めます。
1kHzから1オクターブ上昇すると2kHzで差は1kHzとなります。減衰率は6.01dBと表示されています。最後の桁はマウスの力の入れ方で変化してしまいます。
グラフからカットオフ周波数を求めることもできますが、.measコマンドで測定できます。
● .measコマンドでカットオフ周波数を求める
カットオフ周波数は、入力信号が-3dB減衰したときの周波数です。これは入力信号を 1/sqrt(2)を乗算した値と等しくなります。
.meas ac f1 when mag(V(out))=V(in)/sqrt(2) fc : カット周波数 mag(V(out)) : 出力信号V(out)の電圧部分をmag()関数で取り出す。複素数のV 位相の部分が0°となる |
AC解析で出力信号、V(out)の電圧レベルが入力信号のV(in)/sqrt(2)と一致したときの周波数の値をfcにセットします。V(in)の位相は0°です。そのためmag(V(in))と同じ値になります。
① .meas ac f1 when (mag(V(out)))=V(in)/sqrt(2)
|
シミュレーションを実行して、メニュー・バーの
View > Spice Error log |
を選択すると、次のログリストが表示されます。この中に, .measコマンドの実行結果が記録されています。
カットオフ周波数 f1 は3.8651 |
●オクターブ当たりの減衰率
オクターブ当たりの減衰率は vfa - vfa2 で計算されます。
減衰率 = -29.4083dB ―(-35.4252dB) = 6.0169dB |
となり、ハイカット・フィルタのオクターブ当たりの減衰率 6dBと同様になりました。
次は、フィルタを接続し3段のフィルタにして周波数特性を確認します。
(2017/8/20 V1.0)
<神崎康宏>
バックグラウンド
オクターブ当たり;周波数が倍になるごとに。sqrt(2);ルート2。
mag()関数;振幅を求める。位相はph()関数。