LTspiceのMC関数で部品のばらつきの影響を調べる(2)OPアンプの増幅度のばらつきを調べる
前回、mc(x,y)関数を利用して素子のばらつきの様子をシミュレーションして、その結果を .measコマンドで測定し、その結果をEXCELで読込みばらつきを度数分布の表とグラフ化しました。
今回は、OPアンプの増幅回路で使っている素子のばらつきを検討します。
●OPアンプによる反転増幅器
今回テストするOPアンプは、手元にあり秋月電子通商でも入手できるLT1115を用いました。場合によっては、実際の回路とシミュレーション結果を比較できます。
5Vの±電源を用意し、信号源は±0.1V、1kHzの正弦波としました。R1のマイナス入力抵抗は10kΩ、R2の負帰還抵抗は100kΩとして10倍のゲインを期待しています。
プラスの入力抵抗R3は、R1と同じ10kΩとし負荷抵抗R4は3.3kΩに設定しました。
C1は高域の発振を止めるためのものです。このコンデンサがないと、シミュレーションでも高域で発振してしまいます。
●OPアンプのゲイン
このOPアンプのゲインは、
R2/R1=100k/10k=10
となり、0.1Vの入力は1.0Vになります。
R1の抵抗値を{mc(10k,tol)}と設定して、tol=0.05ですから5%のばらつきとなります。
シミュレーションの繰り返し回数は100回としました。この繰り返し処理は次の .stepコマンドで行います。
.step param n 1 100 1
変数 nを、初期値 1 から100まで増分1で100回繰り返します。
シミュレーション結果を次に示します。
R1の変動により出力が変動し、V(out)の出力波形の幅が広くなっています。
各シミュレーションごとのピーク値を次のコマンドで測定しました。
.meas mvout max V(out)
各回の結果はSPICE error logに、次のように表示されています。1.049から0.96くらいの値が見受けられます。
このエラー・ログのテキスト・ファイルをEXCELで読み取りばらつきの様子をグラフ化しました。グラフ化の処理は前回の「LTspiceのMC関数で部品のばらつきの影響を調べる(1)mc(x,y)関数、gauss(x)関数のばらつきの状態を調べる」で説明してあります。
R1をmc()関数で、10kΩを中心に±5%の範囲でほぼ均等に分散させています。
次はR2についてもmc()関数で5%の変動を設定します。
そのシミュレーション結果を次に示します。より大きく変動しています。
ばらつきの様子をグラフ化した結果を次に示します。
R1のみを変動させたときよりばらつきの範囲が広がり、周辺より中心部の度数が大きくなっています。またゲインは R2/R1 で計算されるから、ゲインばらつきの範囲は次のようになることが想定されます。
95k/10.5k<ゲイン<105k/9.5k
9.05 <ゲイン<11.1
OPアンプのゲインは、入力抵抗と負帰還抵抗の値で決まります。次は、R3の抵抗と負荷抵抗のR4の値を変動させてみます。R3は10%、R4は20%変動しています。
シミュレーション結果は、次のようになります。
V(out)の出力カーブは、ばらつきもなく細い曲線になっています。出力のピークの測定結果も、次に示すようにR3、R4の変動を受けていません。
利用するデバイスの必要とする精度は同じではありません。次回は、ゲインを決めるR1、R2の抵抗のばらつきが正規分布の場合、出力がどのようなばらつきの分布になるか確認します。mc()関数は部品の変動の影響の範囲を調べることができます。また、基準外となる頻度を調べてみます。
(2020/7/30 V1.0)
<神崎康宏>