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タイマ555で学ぶオシロスコープの使い方 (3) PicoScope編 ③ モノステーブル・マルチバイブレータの動作

 前回、アナログICのNE555を使ってモノステーブル・マルチバイブレータ=タイマを作り、オシロスコープで出力とCR回路の時定数部分を観測しました。
 オシロスコープは、次のように設定して観測をしました。

  • 縦軸=電圧は、自動ではなく電源電圧付近の±10Vもしくは±20Vを選択
  • 横軸=時間は、デフォルト2msぐらいから前後に変化させて500もしくは100msを選択
  • トリガは、とてもゆっくりとしている事象なのでかけていない

オシロスコープは繰り返される波形を見ることが多い

 トリガという言葉が2か所で出てきています。一つはオシロスコープのトリガ機能、もう一つは、NE555のタイマ・スタートをするトリガ(2番ピン、負論理)です。

 2番ピンは100kΩでVccにプルアップしているので、スイッチが押されていないとHigh状態です。スイッチを押すと、0V=Lowになります。すると、下側のコンパレータの基準端子(マイナス)が0Vになり、プラス端子にはVcc*0.34Vの電圧がかかっているので、必ず出力はONになり、RSフリップフロップはSetされます。
 フリップフロップのQはHighになるので、出力3番もHighになり、タイマがスタートします。

 今観測しているタイマの動作は、マス目が100msや500msです。とてもゆっくりです。したがって、繰り返される波形ではなく、1回だけ起こる事象を観測しています。アナログ・オシロスコープでは、画面からすぐにその波形は消えてしまいますが、このオシロスコープでは、動作を停止すれば、その状態がディスプレイの残ったままです。

タイマの時間を長くする

 この回路のタイマ時間τは、

  τ = 1.1 * C * R

    C =3.3[uF] = 0.0000033[F]
    R = 10[kΩ] = 10000[Ω]

  τ = 1.1 * 0.0000033 * 10000 
    = 0.0363[sec] = 36.3[ms]

 トリガのスイッチを押しますが、36.3msより長いパルスが出ているようです。トリガのLow期間が長いとタイマはOFFになりません。

 R1=10kΩを100kΩにすれば、タイマ時間は363msになり、スイッチを押している時間は無視できると考えました。

 2回トリガ・スイッチを押した結果、タイマの出力(青色)は同じ幅で、目測ですが360msぐらいだと思われます。

 つぎに、時定数の6番ピンを観測してみます。


 6番ピンはVccの約66.7%付近まで電圧が上がったところでタイマ出力がOFFになっています。3回の動作で、タイマの時間は不変です。モノステーブル・マルチバイブレータは、正しく動作していることが確認できました。

●タイマの時間が短いときにも動作させるために

 CR回路のR1を10kΩに戻します。トリガをかけるために、タクト・スイッチを軽く押しただけでも30msぐらいの時間ONになってしまいました。その結果、タイマの時間が不自然に伸びてしまったのです。

 トリガの時間は、0.2us以上必要です(参考文献1、p.9図1-6(c))。C0=0.01uF、R0=100kΩを使ったとき、時定数は0.4*C0*R0=0.4msです。タイマ時間は36.3msですから、十分短いです。

 NE555のデータシートには書かれていませんが、LMC555のデータシートには、

「Reset overrides Trigger, which can override threshold. Therefore the trigger pulse must be shorter than thedesired tH. The minimum pulse width for the Trigger is 20 ns, and it is 400 ns for the Reset.」

と具体的な時間が書かれています。

 スイッチの部分に微分回路を追加し、実際に動かしました。観測しているのは、2番と3番ピンです。

 CR回路のR1=1kΩに変更し、タイマ時間を約3.6msと短くしました。問題なくトリガがかけられています。

 トリガ・スイッチに微分回路を追加した回路図です。

 この短いトリガは高速動作なので、波形を見るために、オシロスコープのトリガ機能を有効にしました。

参考文献(1) 久保大次郎/宮崎仁編著、タイマIC 555応用回路集、トランジスタ技術2011年1月号別冊付録、CQ出版社。

ポイント

 40msぐらいのタイマを作ろうとしたのに、トリガ信号を作るタクト・スイッチを押している時間のほうが長いので、出力の時間が毎回異なるというのは、オシロスコープがないと気が付かなかったかもしれません。何か変だなと感じたら、ここではR1の値を変更してみて、動作を確認し、最終的には微分回路を追加しました。これで、数msからのタイマを実現できるようになりました。

 NE555は、2us~1200secのタイマを設定できます。本文では3~300ms付近を設定しました。短い時間でもトリガ信号を有効にするには、コンデンサの容量を小さくするなどして微分回路の時定数を小さくして対応します。

連載 タイマ555で学ぶオシロスコープの使い方

(1) PicoScope編 ① 準備

(2) PicoScope編 ② モノステーブル・マルチバイブレータ

(3) PicoScope編 ③ モノステーブル・マルチバイブレータの動作

(4) PicoScope編 ④ トリガ機能