LTspiceで積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化を調べる (1)
■積層セラミック・コンデンサのSPICEデータを入手
積層セラミック・コンデンサは、DC(直流)バイアスが加わると静電容量が変化します。また温度による変化もあります。積層セラミック・コンデンサは、容量のわりにはたいへん小型で、あらゆる場所で使われています。
村田製作所は、DCバイアスによる容量変化などについてもシミュレーションすることのできる動的モデルを提供しています。この動的モデルはLTspice用のものも用意されていて、次のアドレスのWebページからダウンロードできます。
http://www.murata.com/ja-jp/tool/library/ltspice?intcid5=com_xxx_xxx_cmn_nv_xxx
非常に多くの製品の数があるので、併せてカタログをダウンロードしておかないと、どのデバイスを選択すればよいか困ってしまいます。このページには次に示すように、コンデンサのほかにインダクタンスの動的モデルのダウンロードもできます。その他に動的モデルのPDFの説明資料があります。このLTspice用のライブラリに格納されている製品の選択に便利な一覧表も、ダウンロードできます。
PDFのカタログは、次の製品情報のページからセラミック・コンデンサ(キャパシタ)を選択して表示されたセラミック・キャパシタのページにあります。
http://www.murata.com/ja-jp/products/capacitor/mlcc
このページのPDFカタログの中の積層セラミック・コンデンサ(CAT NO。c02-19)をダウンロードしました。167ページと少し多いのですが、レーザ・プリンタで印刷して手元に置いて参照しています。
●品番の読み方
カタログの2ページから5ページにかけて品番の読み方の説明があり、目を通しておくと品番で仕様を推定できるので便利です。
最初に使用した GRM155R71A474KE01 は、次の仕様です。
記号 | 記号の意味 | 備考 |
---|---|---|
GRM | 識別コード | 最初の3桁のGRMは一般用の用途であることを示す |
15 | チップ寸法 | 1.0×0.5mm を示す |
5 | 高さ寸法 | 0.5mmを示す |
R7 | 温度特性 | R1は基準温度20℃で-55℃~125℃ ±15% |
1A | 定格電圧 |
1AはDC10V。 0J:DC6.3V、1C:DC16V、1E:DC25V、1H:50Vなど |
474 | 容量 |
470000pFで0.47μFを示す |
K | 静電容量の許容誤差 |
±10%を示す。 |
E01 | 識別コード | LLR(ESR制御品)以外は個別コード |
静電容量 0.47μF、定格 DC10V、静電容量許容差 ±10%の製品であることがわかりました。
●動的モデルの利用方法
ダウンロードした動的モデルのファイルは、Inductor_ltspice_mi10のインダクタのフォルダと積層セラミック・コンデンサのフォルダがMLCC_ltspice_10の二つのフォルダが含まれたzipファイルとなっています。
zipファイルを展開し、今回テストに利用した積層セラミック・コンデンサを確認しました。動的モデルはLTspice用の回路図で表示するシンボルのためのasyファイルと、シミュレーションを行うためのモデルが格納されたmodファイルがペアで用意されています。
これらのファイルは、LTspiceのシステムの格納されているフォルダにセット(コピー)します。
●asyファイルの格納先
シンボル・ファイルは種類別にフォルダを分けておくと、次に示すようにデバイス(コンポーネント)を選択するとき、Comparatorsなどと種類別に選ぶことができます。今回追加したムラタの積層セラミック・コンデンサ(MLCC)は、ダウンロードした積層セラミック・コンデンサのデータが格納されていた「MLCC_ltspice_10」の名のフォルダごと、
C:\Program Files(x86)\LTC\LTspiceIV\lib\sym |
のフォルダの下に追加(コピー)しました。
asyファイルはsymフォルダの下に格納します。その際、後で選択しやすいフォルダにセットすると後で利用するとき便利です。[ ]で囲われている名称がフォルダになっています。
●modファイルの格納先
ダウンロードしたSPICEモデルのデータを格納したmodファイルは、次のフォルダに格納します。
C:\Program Files(x86)\LTC\LTspiceIV\lib\sub |
追加したモデルを特定のフォルダにセットして利用する方法もあります。リニアテクノロジー社の用意したモデルと別管理する方法があります。いくつか処理が必要ですので、次回説明します。
●定格DC10V 0.47μFのDCバイアスによる容量変化
次の回路で、信号源に0、1、2、3、4、6Vの直流バイアスを加えて周波数特性を調べました。直流バイアスの電圧の変化に対応してコンデンサの容量が変化すると、周波数特性も変化するはずです。
シミュレーションは .step param XV list 0 1 2 3 4 6 のコマンドで、バイアス電圧を変化させながら6回繰り返します。
その結果、次に示すように周波数特性が変化しています。
周波数特性曲線で-3dBの減衰率を示す部分を拡大すると、次に示すように変化しています。
-3dBの周波数が6kHzくらいから10kHzくらいまで大きく変化しています。
コンデンサに加わる電圧の様子を確認するために、過渡解析で出力信号の様子を調べてみました。まず出力信号は、バイアスの電圧が大きくなると波形が小さくなっています。
コンデンサ電圧に加わる様子を確認します。グラフ画面をマウスの右ボタンでクリックして表示されるリストからAdd Plot Paneを選択すると、新しいグラフ画面が追加表示されます。この新しく表示されたグラフ面をマウスの右ボタンでクリックしてリストのAdd Traceを選択します。次のトレースの設定ウィンドウが表示されます。このウィンドウで、
ⅴ(n001)-V(out) |
を設定(テキストを記述)します。
コンデンサの両端に加わる電圧が、緑色の0Vから順番に増加しているのが確認できます。
次回、定格電圧が50Vの場合にはどのようになるか確認し、今までグラフから減衰率が‐3dBのときの周波数を読み取っていましたが .measコマンドを利用してシミュレーション結果を読み取る方法を検討します。
(2016/7/13 V1.0)
<神崎康宏>