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LTspiceで積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化を調べる (4) 各種のコンデンサを比較

低ESR製品のシリーズを加え各種のコンデンサを比較する

 今回は前回測定した次の表の1、2に加えて3、4を追加して直流バイアスの電圧値と容量変化の様子をLTspiceXVIIでシミュレーションしました。

  型番

表示容量

[μF]

定格電圧

[V]

寸法

[mm]

高さ

[mm]

使用温度

範囲 [℃]

静電容量

許容差 [%]

1 GRM155R71A474KE01 0.47 DC10 1.0×0.5 0.5 -55~125 10
2 GRM155R6YA474KE01 0.47 DC35 1.0×0.5 0.5 -55~85 10
3 GRM219B31E474KA88 0.47 DC25 2.0×1.25 0.85 -55~85 10
4 LLL317R71C474MA01 0.47 DC16 3.2×1.6 0.7 -55~125 20

 前回はGRM155シリーズのGRM155R71A474KE01、GRM155R6YA474KE01の二種類の比較を行いました。同じ大きさの形状のシリーズで同じ容量で定格電圧が異なったこの二つの積層セラミック・コンデンサの場合は、次に示すようにシミュレーションの結果はバイアス電圧に対してカットオフ周波数の変化は計算の誤差範囲で同じ変化を示しています。

 前回示した結果ですが、シミュレーションの結果はV(out)の緑のラインの上にV(out2)の青のラインが上書きされています。

ムラタのSPICEモデルデータ格納場所の指定
 前回、GRM155R71A474KE01、GRM155R6YA474KE01のSPICEモデル・ファイルは回路図のファイルが格納されているフォルダにコピーしました。
 今回は、ムラタのLTspice用のSPICEのモデル・ファイルを、

  Program Files\LTC|LTspiceXVII\lib\sub\mylib\murata


の下にコピーし、次に示すようにControl PanelのSym. & Lib. Search Pathのタグで、モデル・ファイルの格納場所のPathを設定しました。具体的な設定値を次に示します。

C:\Program Files\LTC\LTspiceXVII\lib\sub\mylib\murata\MLCC_ltspice_10\GRM_ltspice_10\GRM21_ltspice_10
C:\Program Files\LTC\LTspiceXVII\lib\sub\mylib\murata\MLCC_ltspice_10\LLL_ltspice_10
C:\Program Files\LTC\LTspiceXVII\lib\sub\mylib\murata\MLCC_ltspice_10\GRM_ltspice_10\GRM15_ltspice_10


GRM219B31E474KA88のシミュレーション
 GRM219の形状は2.0×1.25mmで高さが0.85mmとGRM155シリーズより大きくなっています。
 シミュレーション結果は次に示すように、カットオフ周波数はGRM155シリーズと異なった値になっています。


 GRM219B31E474KA88のDCバイアスによる変化は、GRM155より少ないものになっています。


LLL317R71C474MA01のシミュレーション
 低ESR製品のシリーズの同じ容量の0.47μFを、GRM155シリーズの0.47μFと比較しました。

 シミュレーション結果を次に示します。

 シミュレーション結果を表にまとめ、カットオフ周波数とCR回路の時定数関係からバイアス電圧と容量の変化を確認するために、容量を次の式から求めました。

    fc =1/(2πτ)=1/(2πCR)
     C  = 1/(2πR×fc)  R=100Ω 


バイアス 

DC電圧[V]

GRM155R71A474KE01 GRM155R6YA474KE01 GRM219B31E474KA88 LLL317R71C474MA01
 fc  μF  %   fc  μF  %   fc  μF  %   fc  μF  %
0  6199.52   0.257   100  6199.52  0.257 100  3659.80  0.435  100    3514.95  0.453  100 
1  5832.62   0.273   106   5831.72  0.273   106  3646.81  0.436  100  3504.80  0.454  100 
2  6141.00   0.259  101   6138.12  0.259  101  3658.07  0.435  100   3514.04   0.453  100
4  7688.05  0.207  81  7689.16  0.207  81  3704.47  0.430  99  3538.21  0.450   99
8  12433.30  0.128  50  12435.80  0.128  50  3888.35   0.409  94  3612.51  0.441  97
20  27284.50  0.058   23  27257.40  0.058  23  5505.27  0.289  66  4054.45  0.393  87 
30  36732.90   0.043  17   36739.10  0.043   17   8287.10  0.192  44  4006.22   0.397  88

DCバイアスと容量変化
 縦軸はコンデンサの容量で単位はμF、横軸はバイアス電圧です。系列1はGRM155R71A474KE01、系列2はGRM155R6YA474KE01の値です。同じGRM155シリーズで容量の変化は同じなので系列1の青のラインに系列2の赤のラインが上書きされています。緑の系列3のラインはGRM219B31E474KA88のシミュレーション結果です。紫色の系列4はLLL317R71C474MA01のシミュレーション結果です。

0V容量値を基準にした変化率
 バイアス電圧を0Vとしたときの容量値を基準にして変化率をグラフにしました。

 製品シリーズごとにバイアス電圧に対する容量変化も異なります。そのためにムラタではMLCCのコンデンサのバイアス電圧と容量変化をLTspiceでシミュレーションできるモデルを提供しています。このモデルを利用してバイアス電圧による容量の変化を確認することができました。

(2016/8/21 V1.0)

<神崎康宏>

バックグラウンド

ESR;40年ほど前、コンピュータが低い電圧で大電流を必要としたため、スイッチング電源のニーズが増え、急速に普及するにつれて、電解コンデンサの性能が著しく向上しました。デバイスの発生するノイズを抑えるためにコンデンサは、高周波性能の良い小型の形状をした積層セラミック・コンデンサにとって代わりました。どちらもESR(Equivalent Series Resistance;等価直列抵抗)が従来より著しく低く、回路の正常動作に寄与しています。
 パワー回路用のフィルム・コンデンサ、容量の大きな電気二重層コンデンサもESRは数~数十mΩまで下がっています。


(1) LTspiceでOPアンプの特性を調べてみる(4)コンデンサの役割 その1

(2) LTspiceでOPアンプの特性を調べてみる(5)コンデンサの役割 その2

LTspiceで積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化を調べる

(1) 積層セラミック・コンデンサのSPICEデータを入手

(2) 定格電圧が大きな積層セラミック・コンデンサで直流バイアスを変化させると

  LTspiceXVIIがリリースされました

(3) LTspiceXVIIで他社のモデルを使うためにデータを保存するフォルダの位置

(4) 低ESR製品のシリーズを加え各種のコンデンサを比較する