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LTspiceで積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化を調べる (2)

定格電圧が大きな積層セラミック・コンデンサで直流バイアスを変化させると

 定格電圧が大きな積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化がどのようになるか確認します。
 前回は、定格電圧10V、容量0.47μFの積層セラミック・コンデンサGRM155R71A474E01のシミュレーション・テストを行いました。シミュレーション・テストでは、ハイパス・フィルタの入力部に直流バイアスを加えて、周波数特性を調べカットオフ周波数の変化を調べました。
 次に示すように、同シリーズの積層セラミック・コンデンサで定格電圧が35Vと高く、同じ容量の0.47μFのコンデンサGRM155R6YA474KE01と0.47μFの理想コンデンサを追加しました。

 この回路で、バイアス電圧を0、1、2、4、8、20、30Vと .stepコマンドで変化させます。
 そのための .stepコマンドは次のようになります。
 

  .step param XV list 0 1 2 4 8 20 30

 

 このコマンドでは、paramの次に定義した変数 XV にlistで示された値を設定してシミュレーションを行い、シミュレーションが終わるとlistの値を順番に設定しリストが終わるまで繰り返します。
 バイアス電圧の設定は、電圧源V1のシンボルをマウスの右ボタンでクリックして表示される次の設定画面で行います。
 DC Value欄の入力欄に {XV} と入力します。併せてMake this information visible on schematicの欄にチェックを入れておきます。このチェックがないとこの設定状態が回路図の画面に表示されません。

 .stepコマンドを設定しシミュレーションの条件をメニュー・バーの、

  Simulate>Edit Simulation CMD

 

を選択すると、次のシミュレーション設定ウィンドウが表示されます。AC Analysisのタグを選択し、次のようにシミュレーションの条件を設定しました。

 シミュレーションを実行し、outのラベルをマウスでクリックして出力を表示すると、次に示すように、各シミュレーションの結果が色分けされ表示されます。

 1回目 緑 2回目 青 3回目 赤 4回目 青緑 5回目 紫 6回目 灰色 7回目 暗い緑

 次に、out2のラベルをクリックしてout2の出力をグラフに表示すると、次に示すように色分けされてグラフの線が青色になります。outの出力が緑色で、out2の出力が青となり緑色のラインの上にout2の青色のラインが上書きされたため、すべてのラインが青色になりました。

 このことは、定格電圧の異なった2種類のコンデンサの間ではDCバイアスの大きさによる変化は同じ結果を示しました。
 ただし、定格電圧10VのGRM155R71A474E01には20V、30Vのバイアス電圧を加えることはできません。

理想コンデンサは容量変化なし
 ツール・バーのコンデンサのC1は理想コンデンサのモデルなので、DCバイアスが変化しても容量は変わりません。そのため、out3はDCバイアスを変化させるシミュレーションの結果も同一のラインとなり、赤の1本だけとなっています。



 
過渡特性も調べてみる
 P-P(ピークツーピーク)が1Vで周波数が3kHzの正弦波を加えて、outとout2の出力に差がないか確認しました。outとout2が同一の出力となるため、緑色の出力にout2の青色のラインが上書きされています。
 赤色のラインは、outからout2を引き算した結果のラインです。0mVのラインとなっていてoutとout2が同一であることが確認できます。
 メニュー・バーのPlot Setting>Add trace を選択すると、次のウィンドウを表示します。マウスでV(out)を選択し、次に - を入力しV(out2)をマウスで選択します。

 V(out)-V(out2) 


の入力を行い、OKボタンをクリックすると、次に示すように赤のラインが表示されます。


 
.measコマンドで
 AC解析のグラフから出力の減衰率、周波数などを読み取ることもできますが、シミュレーション結果を読み取るSPICEのコマンドmeasureが利用できます。知りたい条件、例えば、find(見つける)AVG(平均値)、MAX(最大値)、MIN(最小値)、RAM(実効値)、PP(ピーク値)などが利用できます。
 今回は、出力の電圧が ‐3dBとなる周波数を読み取るため、次のコマンドを設定しました。
 

 .meas ac res1 when mag(V(out)=1/sqrt(2))


 このコマンドは、V(out)が1/sqrt(2)になったときの周波数をres1にセットします。入力が1Vなので、出力が1/sqrt(2)のときは ‐3dBとなり、このときの周波数は「カットオフ周波数」となります。
 結果はメニュー・バーの View>SPICE Error Log を選択すると、次のウィンドウが表示され、測定値が確認できます。

 次回、ほかの容量のものや、ほかのシリーズのコンデンサについても調べてみます。

(2016/7/26 V1.0)

<神崎康宏>


(1) LTspiceでOPアンプの特性を調べてみる(4)コンデンサの役割 その1

(2) LTspiceでOPアンプの特性を調べてみる(5)コンデンサの役割 その2

LTspiceで積層セラミック・コンデンサの直流バイアスによる容量変化を調べる

(1) 積層セラミック・コンデンサのSPICEデータを入手

(2) 定格電圧が大きな積層セラミック・コンデンサで直流バイアスを変化させると

  LTspiceXVIIがリリースされました

(3) LTspiceXVIIで他社のモデルを使うためにデータを保存するフォルダの位置

(4) 低ESR製品のシリーズを加え各種のコンデンサを比較する