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LTspiceでノイズの検討を行う(2)Examplesで雑音指数を調べる

 今回は、次に示すLTspiceのシステムに添付されているExampleにある、雑音指数に関するシミュレーション例のNoiseFigure.ascを動かしてみます。
 サンプルの回路は、2N2222トランジスタによるエミッタ接地の増幅回路です。信号源に1Ωの内部抵抗が存在し、その抵抗に起因する熱雑音が外部からの雑音と想定されます。

 サンプルをそのままシミュレーションすると、次のように、信号源のノイズに対するアンプで発生するノイズの比(雑音係数(F))の対数を10倍した雑音指数(NF)が表示されます。この表示のための処理は、回路図にコメントして表示されている次の式で算出されます。

  NF= 10*log10(V(inoise)*V(inoise) / ( 4*k*300.15*1K))
  F=V(inoise)*V(inoise) / ( 4*k*300.15*1K)

inoise(入力換算電圧密度) :  Noise解析の結果、信号源など入力ポイントからのノイズに加えて対象とする回路で生じるノイズが回路を経由して出力に現れるすべてのノイズの総量をonoiseとして算出される。このノイズがすべて回路の入力ポイントから入力されたものとみなすために、onoiseを回路のゲインGで除算したもの。 inoise=onoise/Gとなる。

Fの分母は入力ノイズ電力 : この値はジョンソン・ノイズと呼ばれる抵抗成分に起因するノイズを算出するため、次の式を適用している。

  熱ノイズの電力 = 4 × k× T × R × Δf
    k : ボルツマン定数   1.38E-23
    T  : 抵抗の温度(絶対温度) K
    R  : 抵抗値  Ω
    Δf : 帯域幅  Hz

 信号源のジョンソン・ノイズのノイズ電力の条件は、温度は27℃(300.15K)、抵抗値は1kΩ、帯域幅1Hzで算出しています。

熱雑音の電力

 ノイズ(雑音)は±に振れるのでそのまま平均すると0に近い値になり、実態を正しく反映されません。そのため交流の評価と同じように二乗平均した値をノイズの大きさを表す値としています。また、電圧を二乗した値は電力と比例しノイズ電力の指標としても利用できます。

 入力換算雑音電力密度は、入力換算雑音電圧密度を二乗したものになります。

雑音係数の算出

 雑音係数は、回路の入力のSN比と出力のSN比を比較したもので、次式で表します。

       Psi : 入力の信号電力
                    Pni : 入力のノイズ電力
       Pso : 出力の信号電力
       Pno ; 出力のノイズ電力

 次のように変形できます。Psi/PsoはゲインGの逆数になります。

    

 ノイズの総出力Pnoにゲインの逆数をかけると、入力換算電圧密度となります。増幅器ではノイズが発生しないものと仮定し、ノイズがすべて入力ポイントから入り、ゲインにより増幅されたものとみなして入力換算電圧密度を得ます。ノイズ解析で利用されるV(inoise)は、この方法で算出されています。

  

ExamplesのNoiseFigure.ascを実行すると

 NoiseFigure.ascを実行すると、次に示すように雑音指数のグラフが表示されます。この雑音指数は、グラフの上部に表示された雑音指数を求める式で計算された結果です。
 1kHzでは6弱の値が、8kHzくらいから2.7前後の値で安定した値になっています。

 低域での上昇の原因を確認するために、この回路の周波数特性を確認してみます。同じ回路で同じ周波数範囲でAC解析した結果を次に示します。雑音指数が定常状態になるまでの範囲で、低域の増幅度が低下しているのが確認できました。

 低域の増幅度に影響が考えられるC1の値を .stepコマンドで0.1μから1.6μまで変化させました。
 C1の容量値を{XC1}に変更し、次に示す .step コマンドで変数XC1を定義し、この変数を0.1μF、0.2μF、0.8μF、1.6μFと変化させます。

  .step oct param XC1 0.1u 1.6u 1

 次に示すのは、その結果です。C1の値が0.8μF、1.6μFのステップでは全域でほぼ同様な値になっています。

AC解析

 同じ条件でAC解析を行った結果を次に示します。コンデンサの容量の増加に応じて、低域の増幅度は増加しています。

回路中のノイズ源も調べる

 次に示すシミュレーション結果で、アンプの出力のノイズ V(onoise)とこのノイズに対するこの回路のノイズの発生源の寄与分も表示しています。

 赤のV(out)がこの回路のノイズ出力となります。
 10kHzのときに542nV/√Hzとなり、入力信号V1に起因する緑のV(V1)は10kHzのときに400nV/√Hzとなり、R1の抵抗に起因するグレイのV(R1)は10kHzのときに46.2nV/√Hzとなり、R2の抵抗に起因するピンクのV(R2)は10kHzのときに126nV/√Hzとなります。
 同様に、R3は.7nV/√Hz、R5は2.0nV/√Hzとなります。

 次回は、データシートにノイズ・データが掲載されているOPアンプのLTspiceのモデルを用い、増幅回路でノイズが同様な動きをするのか確認してみます。

(2020/11/19 V1.0)


<神崎康宏>

連載 LTspiceでノイズの検討を行う

(1) LTspice の .noize コマンドを試す

(2) Examplesで雑音指数を調べる