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LTspiceでノイズの検討を行う(4)OPアンプのノイズを調べる(2)

 前回は、超低ノイズ低ひずみのOPアンプLT1115のノイズを調べました。データシートでは1kHzの入力換算電圧ノイズ密度は1.2nV/√Hz (max)、0.9nV/√Hz (typ)と表示されています。LTspiceのシミュレーションでも0.851nV/√Hzの低ノイズの結果を得ました。

 今回は、低ノイズOPアンプのLT1037を題材として取り上げます。データシートでは、入力換算電圧密度は3.8nV/√Hz (max)、1.5nV/√Hz (typ)となっています。前回と同様な回路でシミュレーションします。

シミュレーション回路

 LT1037のOPアンプに、マイナス入力抵抗R1を100Ω、負帰還抵抗R2を1000Ωとしてプラス入力抵抗R3を100Ωに設定し、ノイズ解析を行いました。
 回路の出力のノイズV(onoise)、各抵抗のノイズを表示すると、次のようになります。

 
 今回は .measコマンドで1kHzの各ノイズ電圧密度を測定することにします。.measコマンドは、ツール・バーのSPICE directiveをクリックすると「Edit Text on the Schematic」のコマンド入力画面が表示されます。入力画面を、マウスの右ボタンでクリックして表示されるリストのHelp me Edit> .meas Statement を選択します。


 

● .meas Statement Editorでコマンドを設定

 次の .meas Statement Editorでコマンドの設定を行います。


 
 デフォルトではApplicable Analysisの解析方法の設定はanyですべての解析が対象となります。今回は選択できるリストを表示し、NOISEを選択します。ここで指定した解析方法のときのみ、この .measによる計測が行われます。


 
 Result Nameには測定結果を格納する変数 outnを設定し、Genreの欄でリストを表示しFINDを選択します。Findを選択すると、入力画面は次に示すように測定の計算式をセットするMeasured Quantityの欄と、横軸の測定ポイントを指定するATの欄のみの表示になります。1kHz時のonoiseのノイズ電圧密度を測定するように設定しています。


 
 コマンドは次のように作成されます。
 
   .meas NOISE nout FIND V(onoise) AT 1kHz

 回路の抵抗R1、R2、R3に発生する1kHzの雑音ノイズを測定するために、次のコマンドも追加します。

   .meas NOISE r1n FIND V(r1) AT 1kHz
   .meas NOISE r2n FIND V(r2) AT 1kHz
   .meas NOISE r3n FIND V(r3) AT 1kHz

 コマンドを追加し、実行した結果を次に示します。


 
 .measコマンドで測定した結果は、SPICE Error Logに次のように表示されます。


 
 単位をnV/√Hzにそろえると、次のようになります。

  R1n     12.87nV/√Hz
  R2n      4.07nV/√Hz
  R3n     14.16nV/√Hz
  onoise    32.02nV/√Hz

LT1037内で発生するノイズを確認する

 LT1037の内部で発生する入力換算雑音電圧密度は、2.5nV/√Hzと示されています。外部の抵抗をすべて除いた次の回路で、1kHzの雑音電圧密度を測定します。


  
 増幅度は1ですからonoiseとinoiseは同じになるので、onoiseの値となるV(out)を測定します。 .measでも1kHzのV(out)の値も測定しました。その結果は、

   カーソルの値   2.302nV/√Hz
   .meas       2.302nV/√Hz

となりました。
 データシートの値より若干少ないのですが、ここで得られた値をLT1037の入力換算雑音電圧密度とし、R1、R2、R3についてLTspiceで測定したノイズの寄与分と合わせた場合の出力を計算してみます。

(※2020/12/30)式を修正しました。

3.19843E-08 =31.9843nV/√Hz

 EXCELで行ったこの計算処理を .meas コマンドで行います。
 
   .meas NOISE outn PARAM sqrt(r1n*r1n+r2n*r2n+r3n*r3n+(2.3E-9)*11*(2.3E-9)*11)
 
 NOISEを指定して、ノイズ解析時にのみこの計算を行います。outnを、計算結果を格納する変数とします。LTspiceシミュレーションで得られた各抵抗のノイズ電圧密度、LT1037の入力換算電圧密度の二乗和の平方根を求めています。
 V(onoise)のLTspiceのシミュレーション結果は、32.01nV/√Hzでした。
 LT1037の入力換算雑音電圧密度を31.9843nV/√Hzとした場合は、上記のEXCELで計算した値とLTspiceの .measコマンドで計算した値はともに 31.98nV/√Hz となり、V(onoise)とほぼ同じ値となりました。


 
 今回、反転増幅回路でグラフに表示されるV(inoise)とV(onoise)の利得を示すgainは10となっています。しかし、入力換算雑音電圧密度の出量との関係は非反転増幅回路のゲインの11倍として計算しました。次回はこの関係をもう少し確認してみます。

(2020/12/24 V1.0)

 <神崎康宏>

連載 LTspiceでノイズの検討を行う

(1) LTspice の .noize コマンドを試す

(2) Examplesで雑音指数を調べる

(3) OPアンプのノイズを調べる

(4) OPアンプのノイズを調べる(2)

(5) OPアンプのノイズを調べる(3)