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LTspiceでノイズの検討を行う(5)OPアンプのノイズを調べる(3)

 前回、次の回路でLT1037の入力換算雑音電圧密度を測定し、1kHz時の値を2.30207nV/√Hzと得られました。

 この入力換算雑音電圧密度が、次に示すゲイン1の反転増幅回路ではどのような形で出力に現れるか確認します。

 実行結果は次のようになります。抵抗R1、R2、R3とoutのノイズを表示します。
 この回路はLT1037のマイナス端子が入力となり、入力抵抗R1と負帰還抵抗R2が同じ100Ωとなっています。この回路は反転増幅回路で、その増幅度(ゲイン)はR2/R1=1となります。


 グラフから読み取るより正確に1kHzの値を読み取るために、次に示す .measコマンドを用い、

  .meas NOISE nr1

で変数nr1に対し、ノイズ解析の、

  FIND V(r1) AT 1kHz

で示すように、1kHz時にV(r1)で示すR1のノイズの出力への寄与分を算出して格納します。同様にR2、R3の寄与分を次のコマンドで計算します。

  .meas NOISE nr1 FIND V(r1) AT 1kHz
  .meas NOISE nr2 FIND V(r2) AT 1kHz
  .meas NOISE nr3 FIND V(r3) AT 1kHz

 .noiseコマンドで出力にV(out)を指定しているので、V(out)はV(onoise)の指定で測定できます。

  .meas NOISE von FIND V(onoise) AT 1kHz

 100Ωの抵抗に生じる熱雑音を計算し、回路の抵抗ノイズ値と比較してみました。回路の温度を指定しない場合は27℃と設定されています。絶対零度は-273.15℃なので、正確を期すために温度は小数点以下も含めてケルビンで300.15と設定してあります。

  .meas NOISE cr1nq PARAM sqrt(4*k*300.15*100)

 測定結果は、SPICE error Logに次のように表示されます。

 R1、R2はともに1.28748E-09と同じ値になっています。この値はcr1nqで計算した100Ω 27℃時の抵抗の熱雑音と同じ値になっています。
 R3の値はR1、R2の値の2倍の2.57496E-09となっています。この2倍は、この回路の入力をLT1037のプラス入力端子とした場合はこの回路は非反転増幅回路となります。その場合、回路の増幅度は(R1+R2)/ R1=(100+100)/ 100 = 2 となります。非反転増幅回路のプラスの入力端子に接続されているR3の雑音は、非反転増幅回路のゲイン2で増幅された値で出力に寄与しています。

OPアンプの入力換算雑音電圧密度の寄与

 R1の雑音が出力に対してどのくらい寄与するかを雑音解析した結果は、R1に発生する雑音の量にこの回路の増幅度1を乗じた結果と同じ値となっています。非反転増幅器の入力端子にあるR3の雑音の出力雑音に対する寄与分をノイズ解析した結果は、R3の雑音に非反転増幅器のゲイン2を乗じた値になっています。
 LT1037の1kHzの入力換算電圧密度の 2.30207nV/√Hz が、出力にどのように寄与しているか確認します。
 そのために、入力換算雑音電圧密度に反転増幅回路のゲイン1を乗じた平方和から求めた出力の雑音電圧密度を、次の式で変数cnoutiに求めます。

  .meas NOISE cnouti PARAM sqrt(nr1**2+nr2**2+nr3**2+2.307E-9**2)

 入力換算雑音電圧密度に非反転増幅回路のゲイン2を乗じた平方和から求めた出力の雑音電圧密度を、次の式で変数cnoutnに求めます。

  .meas NOISE cnoutn PARAM sqrt(nr1**2+nr2**2+nr3**2+2.30207E-9**2*2*2)

 以上コマンドを追加し、シミュレーションを行います。

実行結果のSPICE Error Log

 実行結果のLog は次のようになりました。


 V(onoise)は 5.58196nV/√Hz でした。反転増幅のゲインで計算したcnouti出力は 3.90341nV/√Hz となり、非反転増幅のゲインで計算したcnoutnは 5.58066nV/√Hz となったので、入力換算雑音は、非反転増幅回路のゲインがノイズ・ゲインといえます。

(2021/1/4 V1.0)

<神崎 康宏>

連載 LTspiceでノイズの検討を行う

(1) LTspice の .noize コマンドを試す

(2) Examplesで雑音指数を調べる

(3) OPアンプのノイズを調べる

(4) OPアンプのノイズを調べる(2)

(5) OPアンプのノイズを調べる(3)